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幻想のセラリウス  作者: ふたばみつき
-新たなる任務-
92/95

☆90 アルル

 強い風が頬にぶつかり、雨粒が小石のように顔面を襲う。

 そして、フワフワと揺れる視界の中、ドッグを探す。


「ドッグ!! ドッグ!! 何処だ、ドッグ!!」


 どうも、まだ術式を運用しながら飛ぶのは慣れてないからか、集中出来ない。


 中々にドッグを見付けられない……


「ここだ、アルル!! 俺はここにいるぞ!!」


 見ると、氷上にドッグが突き刺さっていた。

 しかも、膝から……


 何やってんだコイツは、と思ったが。今は一刻の猶予を争う。

 直ぐにドッグを引き抜くと、一緒に近くの民家の屋根まで後退する。


「アルル、どうするつもりだ。民間人の避難にはもう少し時間が掛かりそうだぞ……」


 街に目をやると、まだちらほら民間人が残っているのが見える。みんな、お年寄りやその家族と言った感じだ。


「ドッグ、雷の魔術、何章までいける?」

「うん? 雷の章ならば、五十四だが……」


 保険を掛けるなら、六十番台は欲しいがこの際仕方がない。

 やるしかない……


 俺の様子を見て、ドックが口を開く。


「アルル、君、もしや……」

「俺は八十八章をやる。合わせてくれ。幸い、天気も味方してる。やれるぜ」


 彼の知的な表情が打って変わり、目を丸くし驚愕の表情へと変化する。

 そして、彼の表情と瞳に力強さが宿る。

 

「一体、何時、八十番台の魔術を習得したんだい? 兄弟子としては鼻が高いが、教えてくれても良かったんじゃないか?」

「いやな、俺は雷の章しか習得してねーからよ。あんまり自慢にはならねーと思ってさ。それに、自前の魔力で出来るのは俺も六十番台はまでだ……」


 見ると、ドッグは嬉しそうに笑っている。

 

「そうか、自然界の魔力を使うのか。君はそれが出来るだったよな。そうか、確かにこの天気ならいける。だか、雷の魔術は当たっても威力が分散しやすい。仕留め切れるか?」

「それは大丈夫だ。ロックがやってくれる」


 俺の言葉にドッグが頷く。

 

「よし、ならば事態は刻一刻を争う。さっさとはじめてしまおう!!」


 ドッグは立ち上がると、魔力を練り上げ始める。

 蒼白い魔力が彼の身体から溢れ出し、稲光を発する。


《灰よ、灰よ、灰よ。あまねく染める空の灰よ。光よ、光よ、光よ。あまねく照らす空の光よ。暗きを指し、目映きを指せ。この手に宿る、雷の剣を研ぎ澄ませ》


 彼の周囲を六つの光が漂い、それぞれが稲光を纏い、互いが連なり、一つの巨大な光の塊へと変わっていく。


 俺も彼の隣に立ち、魔力を練り上げる。


《暗きを指し、目映きを指せ。この手に宿る、雷の剣を研ぎ澄ませ》


 蒼白く光が強く強くなっていき、稲光の弾ける音が次から次へと起こり、強さを増していく。


《六に見える黒い雲。八に見える白い雲。十二に聳える将の矛。四十七に参る虚の霜》


 辺りの空気が急激に下がって行くのがわかる。曇天の空の向こうで稲光が光る。


《七におつる七瀬の雷鳴。八十八の夜を越え、黒白の雲が空を染めあげる》


 次から次へと光る稲光が、曇天を異様な色の雲へと変質さ、魔力を帯びた蒼白い雲へと変質させる。


 その時、氷の城壁に触手が掛けられ、城壁からぬるりと蛸の頭がコチラを覗く。

 そして、その不気味な瞳がコチラを睨む。


 さて、どうなる。こちらの魔力が溜まるのが先か、アチラが俺達を襲うのが先か…… 


 蠢く触手が埠頭に止まる帆船を掴み、高く高く掲げる。

 ロックはまだか……


 その時、高く掲げられた帆船から人影が落ちる。

 逃げ遅れた、民間人だろうか。


 しかし、その正体を見て、俺は驚愕した。

 あれは……


「ロック!!」


 その手に大剣を握り、高く掲げられた帆船から一直線に蛸の眉間へと落下している。

 その時、大剣が振り上げられ、落下の勢いのままにその大剣が蛸の眉間に突き立てられた。

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