☆75 ギルド
人の山が築かれ、呻き声が挙がる。
その様はまさに地獄。多分、こう言った地獄が一つくらいはあるだろうな。
まったく、一体誰がこんなことをしたのだろうか。
まあ、俺なんだが……
「おい、アルル。なにをやってんだ!」
「アルル、君は何をやってるんだ!!」
「………………」
ピコーン、閃いた!!
「た!」
「た!?」
「た??」
俺の言葉に続いて二人が口を揃えて呟く。そんな、彼等はかまわずに俺は驚いたと言った様子で技とらしく口を押さえてみせた。
「た、大変!! 皆さんどうしたんですか!? 一体誰がこんなことを酷い許せませんわ!!」
「ゆ、許せませんわ?」
「わ?」
二人が目を疑った様子でコチラを見ているが、完全に無視する。
「大変だわ!! ドック、早く皆に治癒の魔術を!」
「あ、ああ……」
ドックが俺の言葉に従って治癒魔術を片っ端から掛けていく。
ロックは開いた口が塞がらないと言った様子で俺を見ている。
「ロックさん、何をやってるんですか!! 貴方は皆さんの手当てをしてください!!」
「へ? あ、ああ……」
その言葉と同時に我に帰ったのかロックが動き出した。
俺も何事もなかったかのように手当てに入る。
「大丈夫ですか、直ぐに手当てしますからね! もう少しの辛抱ですよ!」
「ひ、ひぃぃい!! な、なんだお前えぇぇ!!」
あー、楽しいなー。
皆が恐怖の眼差しでコッチを待てるよ。
一通り手当と治癒が終わると、俺達は向き直って見せた。
「まったく、こんな酷いことをしたのは一体誰なんでしょうか!!」
「「「「いや!! オメェだろ!!」」」」
全員が一斉に答えだが、俺は聞こえないフリをする。
「は! そう言えば、私達の偽物が今しがたここに来たんですよね!」
「へ? 貴方は一体何を言ってるんですか?」
俺の言葉に受付嬢が震えながら答える。
もう完全に引いている。
でと、そんなの無視して俺は続ける。
「でも、私達が来たならもう安心。私達が本物です」
「はあ!? ええ!?」
もう完全に意味がわからないって顔をしている。
他の人達を見ても皆一応に同じ表情をしている。なんなら、ロックもドックも同じ表情をしている。
因みに、俺は超楽しい。
嫌いな奴等を困らせるのは楽しいな!!
「ああ、そう言えば、私は白の師団の隊長アルルと言うんですが、少しの間、ここのを宿にしてもよろしいですか?」
「へ、へぇ!?」
受付嬢が恐怖で震えている。
そりゃそうだ、こんな頭のおかしい奴居たら恐怖でションベンちびっちまうよ。
「大丈夫!! 私がここに泊めてくれてる間は偽物が襲ってくる事はありません!! でも、ここに泊めてくれなどうなるかわかりませんよ!!」
「そ、それは…… きょ、脅迫?」
俺は技とらしく頭を振る。
「脅迫とはなんですか? 偽物から守ってあげようと言ってるだけじゃないですか!! それとも、なんですか? 先程までここに居た私は本物だったとでも言いたいんですか? 違いますよね? アレは偽物ですよ!! 私が本物です!!」
「ひ、ひぃぃいいぃぃいぃいっ!」
ギルド内に受付嬢の悲鳴が響き渡る。そして、それを見ていた人々の顔は皆一応に強張っている。
なんなら、ロックもドックも強張っている。
「お、お前、絶対、頭おかしいぞ……」
「ま、まったくだな……」
二人が俺の事を見つめる。
その瞳は完全にドン引きしている時の目だった。




