☆76 ギルド
まあ、結論としてギルドで宿を借りることは出来た。完全に力業でパワハラで脅迫だけどよ。
まあいいだろ……
お陰さまで、久し振りにベッドの上で寝ることが出来たんだしよ。
「あー、よく寝た……」
重たいまぶたを擦りながら窓を開ける。
ふわりと鼻をつく潮のかおりに、目の前に広がる広大な海。麓には港街を特有の活気のある人だかり。
「おー、ファンタジーっぽいじゃねーか」
少しばかり気分がいい。
昨日、目一杯八つ当たりをブチかましたからだろうか。
俺は素早く着替え、昨日大立回りを演じた下へと向かう。
「やあ、アルル。偉いじゃないか、自分で目が覚めたのか。そろそろ起こそうと思っていた所だ」
ドッグが二階から降りてきた俺を見付けると声を掛けて来た。
俺の姿を見た瞬間、ギルド内が凍り付いた様に静かになった。
まあ、昨日、散々目茶苦茶にしたからな。
「すまない、彼女の分の食事を用意してくれないか。多めに頼むよ。彼女は良く食べるから!」
ドッグが受付嬢に向かって叫ぶ。それを聞くと、彼女は頷きそそくさと奥へと消えていった。
周りの視線が俺に集まる。
基本、俺の様子を窺っている。後は恐怖とか畏怖とか、そんな感じの感情が読み取れる。
まあ、コノヤローと言った感情も感じる。
「二人は早起きで偉いなー」
「お前は相変わらず重役出勤だな。まあ、一応重役だしな……」
「まあ、いいだろう。彼女は何時もこうだ、まあ、座れ」
ドッグが自分の席の隣を指す。大人しく、その隣に座る。
すると、ドッグが俺に耳打ちしながら口を開いた。
(いちおう、昨日の件はそれなりに謝罪はしたが。皆、君を恐れているみたいだ)
(別にいいんじゃねーの。何か協力して貰う事もねーし)
俺の答えにドッグが渋い顔をする。見ると、ロックも苦笑いを浮かべている。
まあ、そんなことは良しとして。今後どうするかに話は移る。船が航行されるのを待つか、陸路を行くか。それともほかになにかいい方法があるか……
そんなやり取りをしていると食事が運ばれてきた。
豆のスープにパン。そして、ホクホクと湯気を挙げた魚だ。これは素晴らしい。いきなり海の幸にありつけるとはありがたい限りだ。
「じゃあ、俺はいたはだくぜー!!」
おん、上手い上手い。もうこれでいいや。これ食って、ホワイト・ロックに帰ろう。
ああ、駄目か。少なくともレイムロックまでは行かなきゃならんのか。
うーむ、どうしたものか……
ぶっちゃけ、あのペンダントだけ渡せば停戦協定はどうにかなるんじゃねーかな?
だとしても、ペンダントはどうやってレイムロックに届ける? なんか、鳥とかに運んで貰うか?
うーむ、わからん。それに上手くいかなかった時の大事だしな。
そんなことを考えていると、ギルドに一人の青年がやって来て空気が変わった。
整った顔立ちに水色の短髪。均整の取れた体つきに腰からぶら下げた直剣。その装備事態に目立った特徴は無いがしっかりと使い込まれた形跡から見るにそこそこの使い手では有るのだろう。
そして、その背中には何やら毛皮の様なものを背負っている。
「ヒイロだ、ヒイロが帰ってきた」
「三日ぶりか、待ってたぜ」
ギルドの面々が一気に活気づく。
ヒイロと呼ばれた青年はそれに答える様に笑顔を見せた。
「いや、悪かったな皆。今回は少し手間取っちまったよ。でもほれ、しっかり片付けて来たよ」
そう言うと、ヒイロと呼ばれた青年は背負っていた毛皮を広げて見せた。




