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幻想のセラリウス  作者: ふたばみつき
-闘争それはある日突然に-
22/95

☆21 初戦

 俺は“黒の師団”が嫌いだ。正直に言ってしまえば“白の師団”も嫌いだ。

 勝手に戦って、勝手に人を傷つけて、勝手に奪って、勝手に戦争を起こして。

 その癖して、自分こそ正義の使者だと言わんばかりの正義面で戦火を振り撒く。


 だから、本当は“白の師団”も“黒の師団”も、俺は大嫌いだ。


 だけどな、孤児院の皆や、師範にドッグにメイちゃん。それに候補生の仲間達は好きだ。デイヴィット、アイツも悪い奴じゃない……

 例え、彼等が“白の師団”側の人間だとしても、俺はアイツ等が好きだ。


 守りたいって、素直に思える。


 だから、俺は“白の師団”の為に戦うんじゃない。大切な人達を守る為に戦うんだ。


 そう……

 それなら俺は戦える……


 俺は覚悟を決める。

 そして、視線の先にいる“黒の師団”の軍勢を見詰める。その距離は今も少しずつ縮まっている。


 軍勢を見据え、俺は呪文をゆっくりと間違えない様に唱えていく。


《怒れる雄牛よ、その角に宿る雷よ、車輪を鳴らす夜の嵐よ、彼方より轟音を鳴り響かせ、罪人をその雷の元に裁け》


 間違えない様、ゆっくりと言霊の一つ一つに魔力を込める……


《雷の書 三十一章 ガルバディアスの戦車刑》


 言葉を唱えた瞬間。俺の身体から稲光が発せられ、その光が一匹の雄牛と戦車を型どり、“黒の師団”の軍勢に向かって凄まじい勢いで突進して行った。


 まだだ、これに更に追撃を加える……


《雷の書 三十一章 ガルバディアスの戦車刑》


 再び同じ魔術を発動させる。

 

 詠唱を省略したから、先程より威力は落ちまうが、これでも威力は十二分な筈だ。


 稲光が牛戦車を型どり、“黒の師団”の軍勢へと突っ込んで行く。

 やがて、放った魔術の第一波が“黒の師団”の軍勢へと襲い掛かる。

 

 その瞬間、大木が張り裂ける様な音と共に、凄まじい轟音が辺りに響き渡る。

 恐らく、あの集団に命中したのだろう。そして、すかさず第二波が奴等を襲う。

 再び、轟音が辺りに響き渡る。その惨劇の場を遠目に見ると“黒の師団”の軍勢は地に伏している様に見える。


 よし、やったか!? 

 いや待て、この目で直に確認するべきだろう……

 

 俺は敵の状態を確認するべく、“黒の師団”の居た場所へと歩みを進めた。

 

 少しずつ、少しずつそれに近付いていく。

 黒く偏食した路面に、彼等の姿が横たわる。


「くはぁ、これはひでー……」

 

 凄まじい惨劇が広がっていた。


 黒い鎧が煙を挙げている。

 鎧達が焼死したかの様に身体を強張らせ、生き絶えている。

 こべりつく様な嫌な臭いも鼻をつく。


 これは、爪や髪を燃やした時の臭いだ。しかも、それを何百倍にも濃縮した様な臭いが辺りに立ち込めている。


 自分がやった惨事にも関わらず、思わず吐き気が込み上げてくる。

 それと同時に過去の忌まわしい記憶が甦る。


 これで二度目だ。それも今度は故意にやった。俺は……


 いや、今はそんな事を考えている場合じゃねー。まだ、生き残りがいるかもしれない。油断すれば、こうなるのは俺の方なんだ。

 脳裏に浮かんだ記憶を、振り払う様に頭を振った。


 大丈夫、俺はもう迷わない。

 迷わないって、決めただろう。


 その瞬間、凄まじい程の寒気と悪寒が背筋を通り抜けた。


 これは、殺気か?

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