表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幻想のセラリウス  作者: ふたばみつき
-闘争それはある日突然に-
21/95

☆20 決意

「ア、アルルさん!! ち、血が出てます!」 

 

 不意に候補生の中の一人が俺に駆け寄り、ローブへと視線を向けた。

 その視線の先を見ると、確かに肩の辺りが拳台程度の範囲ではあるが、血で赤黒くなっている。


「ああ、大丈夫。俺の血じゃねー」


 恐らく、これはメイちゃんの母親の血だ。

 頭の血は結構派手に流れるからな、これぐらいは普通だろう。恐らく問題無いはずだ。


 しかし、俺に付いた血を見た候補生は、血の気が引いた様に真っ青になっている。


 まあ、確かにそうなるのは仕方がない。


 見ると、その候補生は可愛らしい女の子だった。

 腰の辺りまで伸びた綺麗な長い髪。その髪は薄い緑色の混じった様な金色をしている。

 そして、俺と同様に“白の師団”の配給品である白いベレー帽にローブを纏っている。

 彼女も魔術師なのだろうか。


「ほら、俺達は月のものでいつも血を流すじゃねーか。これくらいで顔を真っ青にしないでくれよ!」


 そう言って彼女を励ます。


 まあ、中身が男の俺からすれば、今のはただのセクハラだが、見た目は女なので、これくらいは言っても大丈夫だろう。


 それに、これくらいで顔を真っ青にして貰っていては、話にならないのは本当だしな。


「は、はい! そ、そうですね。そうですよね!」


 相も変わらず、彼女の顔は真っ青だが。なんとか気張ろうと言う気概はうかがえる。

 よし、いい娘だ、頑張れ……


 俺も頑張るからよ……


「それじゃあ。あの女の子とお母さんを頼む。避難誘導もひと通り終わった様だからよ。俺も、ここをひと通り見て民間人が居ないのを確認したらホワイト・ロックに戻る。皆は先にホワイト・ロックへと戻ってくれ」


 そう言って彼女の背中を押す。


 彼女は一度こちらを見ると小さく頷いた。そして、候補生の集団へと戻って行く。

 暫くすると、彼女は民間人と一緒にホワイト・ロックへと向かった。


 よし、これで後はここら一帯を回って、逃げ遅れた人がいないか確認したら、俺も戻るか……


 不意に前線の方へ視線を移す。

 その時、俺は信じられない物を目にした。


 なんと、街道の遥か先に黒い集団が見えたのだ……


 黒いプレートアーマーを纏った集団。その数は二十人前後。

 その手に漆黒の剣や、槍や、斧と言った物々しい物が握られている。


 まさか前線を抜けて来たのか!?

 それとも前線が崩れたのか!? 


 師範は、師範は無事なのか?


 い、いや、今は自分の事を考えるべきだ。

 とにかく不味い、逃げなければ……


 逃げる? いや、駄目だッ!!

 違う、逃げられない!!

 ここで逃げちゃダメだ!!


 さっきの女の子や母親。それに候補生の皆が後ろにいる。ここで逃げたら、皆の頑張りが無駄になってしまう。


 な、なら、俺も彼等の所まで後退して、皆で一緒に奴等と戦うか?


 いや、それも駄目だ。怪我人に、老人や子供を抱えて戦える訳がない。

 俺達候補生の練度はそんなに高くない。

 そんな事をすれば、間違いなく一瞬でやられてしまう。

 なら……

 

 なら、俺がここで敵をくい止めるしかねー。


 不意に、先程の女の子の顔が脳裏に過る。名前はメイちゃんって言ってたよな。


 路地裏で、弱々しくても健気に、それでいて一生懸命に灯る小さな命の灯火。

 あの母親がその身を盾にしてまで守った、小さな小さな命の灯火。


 なんとなく、過去の俺を見ている気がした。


 いや、過去の俺と重ねるにしては、メイちゃんは少し可愛らし過ぎるな。

 だが、それでも昔の俺と似ていると感じた。


 あの時、俺の事を守ってくれる奴は一人もいなかった。


 だったらせめて……

 今度は俺が……


 俺が、あの娘を守ってあげれる人になってやる。


 そうだ、さっきも思ったじゃねーか。

 俺はその為に“白の師団”に入ったんだって。


 俺は腹をくくり、正面からやってくる軍勢に視線を向ける。


 もう迷いはない。


 身体の震えはまだ止まらないが、それでも決意は固まった。

 腹の底から力が湧いてくる、心が燃える。


「さあ、来やがれ。“黒の師団”……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ