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幻想のセラリウス  作者: ふたばみつき
-闘争それはある日突然に-
18/95

☆17 戦場

 街道を挟む様に、三角屋根の家々が並び立っている。

 建物の様子はいつもと変わり無いが、その建物の住人達の様子は普段とは打って変わって、不安と恐怖の表情を浮かべている。

 そして、皆一応にホワイト・ロックの方向へと向かっている。

 恐らく、この様子なら動ける人なら無事にホワイト・ロックまで辿り着くだろう。


 なら……


「全員聞いてくれ! 俺達は子供や老人。或いは怪我人と言った、自分の力ではホワイト・ロックまで辿り着けそうにない人達の救助に回るぞ!」 


 俺の声を聞くと同時に候補生達が街へと走り出した。


 よし、いいぞ……


「気が動転してる人もいるだろうから、そう言う人達にも声を掛けてホワイト・ロックまで向かう様に諭しやってくれ!」


 皆、一応に子供や老人達の元へと駆け寄り、彼等の手を取り、共にホワイト・ロックへと向かう。


「一度に出来るだけ沢山の人達をホワイト・ロックに導け! そして、ホワイト・ロックまで誘導したら、直ぐにここに戻って来てこい、いいな!」


 俺は候補生達にそう声を掛け、更に奥へと歩き出した。

 何人かの候補生が俺に着いて来ようとしたが、それを手で制止する。


「ここから先は俺だけでいい。お前達はここで他の人達を助けてくれ」


 見ると、遠くの三角屋根から火の手が上がっている。

 俺はその方向に向かって歩き出す。


 そう、俺は前線の方に向かって歩き出した。


 その瞬間、腹の底が揺られる様な轟音と共に僅かに大地が揺れた。


 なるほど、やっぱりあそこが最前線なのだろう。師範もあそこで戦っているはずだ……


 もう一度、師範に言われた言葉を思い出す。そう俺の役目は、ここら一帯の民間人達の避難誘導だ。

 これ以上深く前線に入り込むのは俺の役目ではない。


 そう思い、辺りを一度見渡してみる。


 恐らく、民間人の避難はあらかた済んでいるのだろう。街並みは静かでとても閑散としている。

 むしろ、耳鳴りがするのではないかと思う程に静かだ。遠くの方では人の声や、前線の方では叫び声の様な物が微かに聞こえる。


 しかし、この辺り一帯は静寂その物だ。


 恐らく、ここら一帯は大丈夫だろう。逃げ遅れた人が居ないか、少しだけ確かめてから俺も後方に戻るか……


 そう思った矢先、俺の耳に微かな人の声が届いた。


 子供の泣く声がする。


 この静寂の空間を裂く様に子供の泣く声が俺の耳に届いた。

 恐らく、この近くで子供がまだ残ってるんだ。

 

 耳を済まして声の出所を探る。


「こっちか?」


 自分を諭すように呟くと、建物と建物の間の細い通路を見詰める。

 確かにその通路の先から声がする様な気がする。とにかく、確かめてみるしかない。


 俺はその細い通路へと向かった。

 

 その時、ふと頭を過る。あの悪夢の裏路地を……

 まったく、なんでこんな時には、あの悪夢が頭に……


 不意にその通路に視線を向けて気が付いた。


 ああ、そうか、ここはあそこに似ているんだ……

 あの悪夢の裏路地に……

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