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幻想のセラリウス  作者: ふたばみつき
-闘争それはある日突然に-
16/95

☆15 初任務

 ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間。

 と言うより、俺は全然胸を撫で下ろす事が出来なかった。


 因みに、これは俺に胸が無いから、胸を撫で下ろせなかったとか、そう言う下らねー話では断じてない。


 胸が無くても、胸を撫で下ろすことは出来るからな。

 つまる所。まあ、俺はまだ安心できてなかったと言うことだ。


 その時、不意にパウル師範と目が合う。俺の不安を察してか師範が優しく語り掛けて来てくれた。


「大丈夫。君達が戦う事には先ずならないと思う」


 やっぱり、安心出来ない。「先ず」と言うことは僅かでも戦闘になるかもしれない、と言う意味だ。

 それならば、それで一層気を引き閉めなければならない。

 

「じゃあ、俺達は何をすればいいんですか?」


 パウル師範の気遣いの言葉に「大丈夫ですよ」と意味合いも込めて返答する。

 師範もそれを感じ取ってくれたのか、優しく微笑み前を向き直した。


「うむ。君達候補生には、交戦している地域付近の民間人に対して避難誘導をして貰いたい。私が前線の近くの避難指揮は執る。君達二人はその後方で指揮を執って欲しい」


 思わず驚きの声が飛び出しそうになる。


 いきなり指揮を執る? 

 そんなこと出来る訳がない、師範は頭がおかしくなってしまったんじゃないか?


「師範! 指揮を執るなんて無理ですよ。僕達には出来ません!」


 ドッグが声を挙げる。俺もそれに同意するように小さく頷いて見せる。

 しかし、そんな俺達の様子を見ても師範は態度を変える様子は見せなかった。


「大丈夫。今の戦況報告を他の候補生達にし。その後、候補生達と共に民間人にホワイト・ロックまで走る様にと言えばいいだけだ。君達なら出来る。それに他の団員達は皆出払ってるか本部の守りに回ってしまっている。だから君達、候補生達がやるしかないんだ。それに……」


 その時、師範の背中から僅かに湯気に似た青紫色の光が滲み出した。

 そして、その背中の向こうから力強い声が私達に届いた。


「“黒の師団”は私が絶対、君達には近付けさせない」


 あの光は魔力だ……


 しかも、目を見える程の高密度の魔力。呪文を唱えている訳でも無いのに、凄まじく高密度の魔力が肉体から溢れ出ている。

 今の師範の肉体の中には凄まじい程高密度の魔力が充満しているのだろう。


 なんと心強いことか……


 大丈夫、この人がそう言うのなら、そう思える程に心強い。

 実際にドッグの表情も僅かな不安は残っている様子だが、かなりリラックスしているように見える。


 かくゆう、俺もかなり安堵している。


 巨大な“魔力”を有する魔術師が味方陣営にいる。それ程、安心出来る事はない。


 例えるなら、そうだな……

 非常に身軽な戦艦が一隻味方側にいる様な物だろうか。


 それは大層心強かろう。


 しかも、それが守るって言ってくれているのだから、安心せざる負えない。

 それに師範にここまで言わせてしまったのだ、ここで俺達が使命を投げ出す訳にはいかない。

 なんて言ったって、一番の危険地帯には師範本人が行くと行ってるんだ。俺も師範の弟子として、その心意気を無下にする事は出来ない。


 どうやら腹をくくるしかない様だ。

 

 ドッグを見ると彼も腹をくくったのか、真っ直ぐと進行方向を見詰めている。

 それ見て、俺も腹を決める。


 そんな俺達の様子を肌で感じ取ったのか、師範が俺達に声を掛けて来てくれた。


「頼めるかい」


 俺とドッグは黙って頷いてみせた。

 それを見た師範も黙って頷いた。

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