2枚目
「は? 俺の家族が死ぬってどういうことだよ。それに、なんで俺の名前を」
「今そんな話する暇ありますか?」
気味が悪く聞きたいことは山ほどあるが、言っていることは正論だ。ワカメ頭の男を押し退けて、俺は家へと全速力で戻っていく。
道中から聞こえてくるサイレンがうるさい。嫌な予感がしてたまらない。
「……嘘だろ」
やっと家の前に着くと、家は燃え盛る炎で包まれていた。周りには消防士と警察が駆けつけ、必死に消火活動や近所の人たちに事情を聞いている。
愛情の欠片もないまともな育て方をしなかった両親だが、こういう時に限って涙があふれて止まらない。
「これはどう見ても間に合わないですね」
しばらくすると、さっきのワカメ頭が隣にやって来る。奴の言う通り火は未だに燃え上がり、救助は難しいようだった。
「なんで……」
「えぇ、全くもって酷い話です。辛いですよね……」
俺の心には虚しさが広がっていた。憎いと思っていた両親はあっけなく死に、家も簡単に燃えて壊れていく。
体が震える。雨のせいでもあるが、何より人肌が恋しくて仕方がない。長年分からなかったそれに、俺はようやく気づく。
俺はただ、両親に愛されたかったんだ。
そう思うと急に力が抜けてくる。眠気が襲い、意識は薄れていく。ワカメ男が何事か言うが、俺はそのまま泥のように眠ってしまった。