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声を拾って  作者:
1/60

蜜色

 暗い場所だった気がします。

とても暗い場所。

私は、寂しくて哀しくて、とてもつらい気持ちでした。

ビーンビーンという甲高い音がずっと響いていました。

絃を曖昧なままの気持ちでつま弾いているようなそんな不規則な緩慢な音の中で

狭い洞窟の中響いているかのような水滴が落ちるような音が常に響いているかのような場所でした。

私は、そんな中で生まれました。



**


透明な音を探して探して

何年も何年も探して

目にしたのは、薄っぺらな木枠でした。


**


何の変哲もない、と、言うでしょう。

私以外のきっと多分きっと殆ど全ての方が。それを作り出したのだろう彼自身もが。

この絵というにはとてもとてもお粗末だともいえる粗雑な線の連なり。

その木枠に収まった荒い目のキャンバスには、そんなものが描かれていました。

でも、私には、聞こえたのです。

その粗雑な線の連なりから響く透明な音が。

私は、思わず、その絵の前で涙を流しながら、触れることもできないその美しさに俯きました。

やっと出会えたその透明な音の虜になりながら、じっとじっとその音に耳をすませていました。


**


すると、なんということでしょう。

その絵を生み出したと思われる、彼自身がおもむろに立ち上がると、キャンバスを引きちぎり、

声の出ない叫びを放ちながら、ただただキャンバスを傷つけ始めました。

私は、必死にやめてと叫びましたが、彼のもとに声は届いていないようでした。

私は、彼の木炭まみれの手をかき抱きながら、やめてやめてと叫び続けていました。


**


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