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リアはリンと枕を共にして、朝、目覚めた。聖杯城では、リンは目が覚めるのが早い。二千年前に冒険していた時より早いようだった。リアはまだ慣れぬ寝台の感覚に、リンより早めに目が覚めた。リアは試しに水差しと杯を現してみた。聖杯は想像した物を現すことができるとリアルに教えられたが、リアの手元に水差しと杯が浮かんだ。まるで何でも入る鞄から物を取り出す時のようだ、とリアは感じた。リアは水差しから杯へ水を満たし、喉を潤した。
隣ではリンが眠っている。リアは眠る者を観察した。白い髪は旅をしていた時の背まで届く長さではなく、肩を越える程度だった。髪の香りは変わっていなかった。この香りを共有する人がいる。しかしリンの心の中にリアの部屋があることが淡く光り、リアはリンの寝顔に満足した。
リアは、長い年月ずっと望んでいたことが叶ったが、まだピンと来ていなかった。
リンが目覚めた。リンはリアの手元に浮かんでいた杯を掴むと、水差しから水を注ぎ、杯を飲み干した。
「待っていて下さい、リア。今、朝食の支度をします」
リンは起き上がろうとした。リアは止めた。
「待って下さい、リン。今日は僕も一緒に料理を手伝います。一緒にいさせて下さい」
リンは微笑んだ。
「分かりました、お師匠。台所に鮭があるので、開いて食べましょう」
朝の支度を済ますと、リアとリンは厨房に立った。リアは昨日、リアルから台所の使い方を聞いた。食品貯蔵庫の住み分けから、どの食器が大事かなど、色々こだわりを聞いた。リアは注意に抵触しないように器用に台所を使った。リンは一匹の鮭を切り身にし、小麦粉を付けフライパンで焼き、最後にバターを絡ませた。
食事が整い、食堂で皿を並べ二人は食事とした。リアは食しながらぼんやりと食器を見た。白い皿は品が良い。客だった頃は落ち着いてもてなされていた。ただ今は何となく、自分で選んだ食器を使ってみたくなった。リンはリアが何か考えているようなのを見て尋ねた。
「どうしましたか?」
リアは独り言のようにこそっと、しかし強く言った。
「リン、聖杯城に新しく台所を作りたいです」
リンはリアの疎外感と妻として主張する気持ちを察し、にこりと肯った。
「では、食堂の隣に作りましょう。私がリアと一緒に食したい食材は、新しい厨房に置いておきましょう。食後にリアが厨房を作ったら、一緒にお茶を淹れて飲みましょう」
「ありがとう、リン」
食事の後、リアは厨房を創った。聖杯の魔力を使った創造は、リアは楽しかった。自分の料理歴に合わせて道具を揃えた。そばを打ち、天ぷらを揚げ、鰻の下ごしらえのできるように道具を創った。食器の皿や鉢の一つ一つを、リンに好みを聞きながら自分で編み出していった。飲み物を置くスペースに、白茶とココア、蜜酒と赤ワインをしまった。創造を一緒に付き合うリンは、心を弾ませるリアを見て、にこにこと微笑んだ。
一通り厨房が様になると、リンはリアの台所でお茶を淹れ、二人は食堂で一休みした。
「お疲れ様です、お師匠。他に作った方が良い部屋はありますか?」
「たぶん、浴室も作った方がいいと思います。あと、すみませんが、僕の部屋の隣に書斎と仕事部屋を兼ねた部屋が欲しいです」
リンは微笑んだ。リアはピンと来ていなかった家の感覚が、少し実感できた、と思った。




