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「リアは結婚式はドレスが良いですか? タキシードが良いですか?」
夕食後に居間の暖炉の前で寛いでいると、リンが突然リアに思いがけない話題を振った。リアは二千年の間、自分が結婚して結婚式を挙げることは諦めていた。得られぬ経験に、深い憧れはあった。しかし今は気にしなくなっていた。リアは唐突な質問に、怪訝な顔をして問いを返した。
「結婚式をするのですか?」
リンはにこにこと笑って、リアを後ろからぴたりと抱きしめた。
「嫌ですか?」
リアはリンの温かい体温を感じながら答えた。
「僕はその、無理はしなくていいですよ、リン」
リアはどう受け止めれば良いか分からず、困惑した。
「僕が式を挙げると、リアルは嫌な気持ちになりませんか……?」
「リアルとは、この聖杯城に住み始めた頃に二人で記念に式を執り行いました」
「そうですか……」
リアはリンが気を使いながら優しく事実を伝えられ、少し寂しさが心に沸いた。リンはリアを抱く腕に力を込めた。
「式を挙げませんか、リア?」
リアは複雑な結婚に、式を挙げていいのかひととき悩んだ。伴侶の提案は温かい。リアはリンの優しさを大事にした。独り言のように小さく答えた。
「そうですね。僕はドレスの方がいいです」
リンはリアの頬にキスをした。リアは尋ねた。
「でも、どうやって行うのですか? 二人だけでですか?」
リンは眼を細めて口元を緩めた。
「リアが呼びたい人を招きましょう。場所は城の外が良いでしょう。会場の広さは、一緒に空間を創って整えることにしましょう」
「でも、僕が呼びたい故郷の友人たちは、遠すぎて連絡を取り合うだけで時間がかかります。良いのですか、リン?」
リアの国で一日経つと、聖杯城では一年が経つ。リアが友人たちに連絡を入れるのが一時間でできたとする。それから最短で一日後に賓客を城へ呼ぶことができたとしても城では一年後になる。故郷の仲間たちは割とすぐ集まる農村だった。リンは肯った。
「ええ、気長に待ちましょう。私の時間の流れはゆるやかです。リアが良いなら、日取りは任せます」
「分かりました。ありがとう、リン」
「こちらこそ、リア。一緒に連れ添って下さって、ありがとう」
リアは、改めて晴れの日のことを心に思い浮かべた。普段着ないドレス姿で、好きな人の隣で客たちから認められ、祝福される。リンと離れてからは、たまにその夢は心の底から浮かんだ。願いが叶うことにピンと来ない中で、心の底では幸福感が熱くなっていた。




