素敵な衣装
「……で、これが、サ行変格活用だな。サ変をとる言葉、覚えているかー? じゃあ、11月28日だから、28番の……新井」
苗字を呼ばれた新井由美は、「はい」と返事をし、授業プリントを持って席を立つ。
うーん、と思いだしていると、遠くの席で結菜が、こちらを見て「がんばれ!」っていう感じでガッツポーズをしている。
「……す、おはすです」
「はい、正解。ありがとう」
結菜の方を見ると、一緒に喜んでくれている。
ふふっと笑って座った。
今古典で勉強しているのは、日本最古のお伽草子と言われている「竹取物語」、いわゆるかぐや姫。
日本最古ということもあって、なかなか内容把握が難しい。
「はい、已然形+ば、の組み合わせ、この意味は、『ので・と・ところ』だな〜、ここテストに出るぞ〜」
なんかだんだんと、退屈になってきた。
……コスプレが好きで、今度コミケに行ってどんな衣装を着ようかなんて考えていて。
和風あやかしストーリーのアニメキャラなんでどうかな、なんて、かぐや姫を想像しながら。
浴衣とか振袖とかって、とっても綺麗で。
アニメキャラが着る和服って、なんであんなに美しいんだろう。
……1度、チャレンジしたことはあった。
でも、上手くいかなかった。アニメに会う衣装を探して買ったり、似合う衣装を作ったり。どれもこれも、再現することは出来なくて。
昼下がり、窓側の席。
カーテンが風でなびいて、少し頬に当たる。
温かくて、自然と眠ってしまった。
気がつくと、そこは……空に浮かぶ方舟の上!
私は、とても美しい、十二単を着ていた。
その船から地上を見下ろす。
……そこには、和樹君がいる!
私を見つめている。
待って、私は和樹くんから離れたいわけじゃないの。
違うの。
私は、こんなに綺麗な衣装で。
彼に。
彼に、もう一度、会いたい……。
「……由美! 由美!」
気づくと、結菜が起こしてくれていた。
「もう、休み時間までずっと寝てたんだよ、由美」
「ああ、ごめん、ありがと……」
「次移動教室だから、いこ」
結菜は、ふふっと笑った。
「うん、いこっか」
音楽の教科書とリコーダーを手にして、由美は結菜について行った。
「あのね、夢の中でね、私、とっても素敵な服を着ていてね……」
「なにそれ、かぐや姫になってたの?」
「そうみたい」
木漏れ日が差す廊下、2人でふふっと笑い合った。




