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第一話 出会い

人生において大事なことは何か。努力?才能? 運?人によって答えは違うだろう。だが、俺の場合は違う。


「……金が欲しい」


 これに尽きる。いや、誤解しないでほしい。別に借金があるとか、明日の飯にも困っているとか、そういう悲惨な状況ではない。むしろ一般人と比べれば、俺の貯金額はかなり多い方だと思う。


ただ…


「装備の修理費、高すぎるんだよなぁ……」


 目の前に表示された銀行口座を見ながら、俺は深いため息を吐いた。武器のメンテナンス。防具の調整。探索用アイテムの補充。その他諸々。探索者という職業は確かに稼げる。それは間違いない。ダンジョンから手に入る素材は高値で取引されるし、危険な場所ほど報酬も跳ね上がる。だけれども強い探索者ほど、出費も増える。例えば、普通の探索者が鉄製の剣を使っているところを俺たち上位探索者特殊な剣を使う普通の防具で耐えられる攻撃を、防げない敵と戦うからだ。つまり、強くなるほど金が必要になる。なんとも世知辛い話である。


「昔はダンジョン潜るの楽しかったんだけどな」


 俺はソファに寝転がりながら、天井を見る。俺の名前は黒崎蓮。現在二十四歳。


 職業、探索者。……一応。世界最強と呼ばれている。探索者ランクSSS級。世界で数人しか到達していない最高ランク。単独で攻略不可能と言われたダンジョンを突破。国家でも対処できなかった魔物を討伐。海外では英雄扱いされ、日本ではテレビに名前が出たこともある。まあ、全部昔の話だ。正確には、俺が表に出ていた頃の話。今の俺は正体を隠している。理由?面倒だから。これに尽きる。有名になれば金は稼げる。スポンサーも付く。テレビにも出られる。でも自由がなくなる。そーんなのはいーやだ。おっと失礼つい本音が。しかし事実でだ。どこへ行っても注目される。何をしても記事になる。ダンジョンに潜るだけなのに、いちいち許可や連絡が必要になる。……考えただけで疲れてきた…。一応他の理由もあるがそれはいいだろう。だから俺は、世界最強という肩書きを捨てた。もちろん探索者活動自体は続けている。金になるし。何より、嫌いじゃない。ただ最近は少し飽きてきた。


「何か別のことしたいな……」


 そんなことを考えながら、スマホを眺める。そこに何となく表示された求人広告。


『白峰プロダクション マネージャー募集』


「……ん?」


 その名前を見た瞬間。俺の指が止まった。白峰プロダクション。探索者業界ではそこそこ有名な会社だ。大手企業ほど巨大ではない。しかし、所属探索者は多い。探索者の育成。配信活動。イベント運営。最近では探索者専門の芸能プロダクションとして勢力を伸ばしている会社だ。そして俺が反応した理由は別にある。


『探索者ユニット白雪 所属』


 その文字。


「……」


 数秒。いや、もっと長かったかもしれない。俺は画面を見つめていた。白雪。今、日本で人気のある女性探索者ユニット。三人組。実力は本物。見た目も人気。配信も面白い。そして俺の推し。


「……マネージャー募集?」


 求人内容を見る。仕事内容、スケジュール管理、配信サポート、イベント準備、探索活動補助。


「……」


 普通なら思うだろう。世界最強の探索者が、なんでマネージャーなんかやるんだ、と。俺も少し思う。でも


「推しを近くで支えられる」


「金も貰える」


「ダンジョン以外の生活も楽しめる」


 つまり、


「完璧じゃん」


 結論は出た。俺は考えるより先に応募ページを開いていた。こういう時俺の悪い癖が出てきた。思い立ったら即行動。後先はあまり考えない。昔からそうだった。ダンジョンを見つけた時も。新しい武器を試した時も。強敵に挑んだ時も。だいたい最初に出る言葉は。


『やってみるか』


 だった。そして大抵、なんとかなった。


「まあ、今回もなんとかなるだろ」


 俺は応募した。

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