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【痛みの帝王】 〜65歳で全ての激痛を経験した男、異世界で“痛みを操る”チートを得て成り上がる〜  作者: ボルトコボルト


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第5話:ギルド前で牙を剥く者たち、痛みに跪く

 冒険者ギルドの扉を押し開けた瞬間から、ドロルの背中には、ずっと視線が貼りついていた。


 四人の男たち。

 剣士、槍士、弓士、斥候。

 服装と武器で一目で分かる。


 彼らは、ギルドの壁際に立ちながら、

 ドロルが受付に向かい、登録を済ませ、

 そして扉を出ていくまで――

 まるで獲物を観察する獣のように、じっと見つめていた。


 ◇


 ギルドを出た瞬間、

 ドロルの前に四人が立ち塞がった。


「おい、そこのヒョロガリ」


 剣士がニヤニヤしながら近づく。


「そんな身体で冒険者なんかできねえぞ?」


 槍士が肩をすくめる。


「飯も食えてねえんだろ。顔色悪ぃしよ」


 弓士が鼻で笑う。


「俺たちが冒険者の仕事を教えてやるよ。なぁ?」


 斥候がドロルの肩に手を置いた。


「まずは――金を出しな。金貨5枚!出せるだろ」


 四人は、完全にドロルを“雑魚”だと思っていた。


 昨日までのドロルなら、金貨5枚なんて大金は持ってないが、震えながら有り金全てを差し出していただろう。


 だが――今は違う。


 ドロルは、肩に置かれた手を見下ろし、

 ゆっくりと口を開いた。


「痛風」


「ツーフー? 何を言って――うっ……!」


 剣士の顔が歪む。

 次の瞬間、膝をつき、地面に手をついた。


「いっ……いでぇ……! 足の指が……燃える……!」


 ドロルは、淡々と説明を始めた。


「痛風ってのはな。

 尿酸が結晶になって、関節に刺さるんだ。

 特に足の親指。

 触れるだけで悲鳴が出るほど痛い」


 ドロルが剣士の足指を踏む。


「うがっ!」


 剣士は、地面に転がりながら叫んだ。


「な、なんだこれ……! 歩けねぇ……!」


 槍士が慌ててドロルに詰め寄る。


「てめぇ! アガルドに何しやがった!」


 目は泳ぎ、声は震えている。

 脅すつもりが、恐怖で声が裏返っていた。


 ドロルは、口元だけで笑った。


「確かに……飯は食えてなかったよ」


 弓士が怒鳴る。


「いいからアガルドを戻せ!」


 ドロルは、ゆっくりと彼らを見渡した。


「食いたくても食えなかったんだよ」


 斥候がナイフを抜いた。


「てめえ! ふざけ――」


「ぎっくり腰」


「あうっ!」


 斥候はその場で固まり、腰を押さえて前屈みになった。

 槍士と弓士も、突然腰に激痛が走り、立ち竦む。


「ぎっくり腰ってのはな。

 腰の筋肉が急に固まって、動けなくなる。

 立つことも、歩くこともできない。

 呼吸するだけで痛い」


 弓士は冷や汗を流しながら叫んだ。


「な、なんだこいつは……! 呪いか……?」


 槍士も震えながら言う。


「の、呪いだろ……これ……!」


 ドロルは、ゆっくりと彼らに近づいた。


「飯が食えない気持ちになったほうがいいな」


 そして――


「歯槽膿漏」


「うがっ!」


 三人は同時に口を押さえた。

 歯茎が腫れ、ズキズキとした痛みが走る。

 噛むどころか、口を開けるだけで激痛が走る。


 ドロルは、淡々と説明した。


「歯槽膿漏はな。

 歯茎が炎症を起こして、歯がぐらぐらになる。

 噛むと痛い。

 食べ物を口に入れるだけで苦痛だ」


 弓士は涙目で叫んだ。


「まっ……待ってくれ……! なんとか……なんとかしてくれ……!」


 槍士も震えながら懇願する。


「謝る……謝るから……この痛みを……!」


 剣士は地面に這いつくばりながら、

 声にならない声で訴えた。


「たす……け……て……くれ……」


 ドロルは、背を向けて歩き出した。


「一生噛めないぞ」


 男たちの顔が絶望に染まる。


「治してほしければ――、一人金貨五枚だ」


 振り返らず、ギルドの門へ向かって歩く。


「まっ……待ってくれええええ……!」


「痛い……痛い……!」


「歩けねぇ……腰が……!」


「口が……開かねぇ……!」


 四人は、

 ぎっくり腰で立ち上がれず、

 歯槽膿漏で叫ぶこともできず、

 痛風で歩くこともできず――


 地面に転がりながら、

 惨めで無様に、

 ドロルの背中を見送るしかなかった。


 ドロルは、静かに笑った。


「……冒険者ってのは、痛みを知ってるほうが強いんだよ」


 その背中は、昨日までの弱者ではなかった。

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