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【痛みの帝王】 〜65歳で全ての激痛を経験した男、異世界で“痛みを操る”チートを得て成り上がる〜  作者: ボルトコボルト


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第37話 騎士団招集、迷宮都市の影騒乱

 影の怪物が弾けるように消えたあと、部屋には重い静寂が落ちた。


 アランは震える指先を握りしめ、深く息を吸い込む。


 片足の義足を軽く叩き、ゆっくりと立ち上がった。


 窮奇は部屋の隅で影の匂いを確かめるように鼻先を動かしている。


 その目は迷宮の奥の方角を向いていた。


 ドロルが視線を向ける。

「奥から来ているのか?」


 窮奇は短く頷いた。

「……ああ、奥から来ている」


 そこへ使用人が駆け込んできた。

「領主代理様! 広場で影が暴れております! 怪我人も!」


 アランは迷いなく頷いた。

「……騎士団を招集します」


 ドロルはアランの動きを静かに見守る。


 窮奇はアランの背後へ歩み寄り、影の揺らぎを追うように視線を向けた。


 ――


 騎士団が屋敷前に整列した。


 アランは片足を引きずりながらも、堂々と前に立つ。

「広場へ向かいます。影が暴れています」


 騎士団長が慌てて前に出た。

「領主代理様、前線は危険です! お体では……」


 アランは首を振った。

「街の人々を放ってはおけません」


 ドロルはアランの横に並び、静かに言う。

「護衛としてお供します」


 窮奇はその後ろに影の濁りを追うように歩く。


 ――


 広場は混乱していた。


 影が触手のように伸び、人々の足元を引きずり倒している。


 騎士団が盾を構えて影を斬るが、影は形を変えて逃げる。


 アランは影の濁りを見つめ、息を呑んだ。

「これは……迷宮の影が街へ押し出されている?」


 ドロルは影の動きを観察しながら答える。

「影が……動いていますね」


 窮奇は地面の影に鼻先を近づけていた。


 ドロルが窮奇に問いかける。

「濁りは強いか?」


 窮奇は短く答えた。

「強い」


 そこへギルドのギルマス、ローラが駆けつけた。


 外套を翻し、騎士団の動きを確認しながらアランへ歩み寄る。

「領主代理様、ギルドも応援に来ました。影の異常は迷宮由来の可能性が高いわ」


 アランは頷いた。

「迷宮の奥で何が起きているのか……」


 ローラは険しい表情で続ける。

「冒険者を迷宮へ向かわせたいのですが、影に触れた者が次々倒れているの。

 奥へ行けるのは高ランクの者だけです」


 ローラはドロルへ視線を向けた。


 その目は、ドロル本人ではなく窮奇の戦力を測っている。

「あなたの聖獣の力を借りたい。

 ギルドから正式な依頼として報酬を支払います」


 アランもドロルへ向き直る。

「ドロルさん。

 あなたの力は……私が一番よく知っています。

 どうか迷宮の奥へ向かってください。

 私からも報酬をお支払いします」


 ドロルは短く息を吐いた。

「……依頼ということであれば、承ります」


 窮奇はアランの背後で影の濁りを見つめていたが、何も言わない。


 ――


 ローラが呼んだ高ランク冒険者が広場に到着した。


 先頭の男が、背に長剣を背負ったままドロルへ歩み寄る。


 鋭い目つきだが、礼儀はある。

「Aランク剣士のレオンだ。

 聖獣と一緒に動くのは初めてだが……よろしく頼む」


 その横で、青いローブを揺らした女性が軽く会釈した。

 指先には魔力の光が揺れている。

「Bランク魔術師のミレイです。

 後方支援は任せてくださいね」


 最後に、分厚い盾を背負った大柄な男が一歩前へ出た。

 その動きは重いが、安定している。

「ガルドだ。盾役をしている。

 迷宮の奥は危険だ、気を引き締めていこう」


 ドロルは三人へ軽く頭を下げる。

「ドロルです。よろしくお願いします」


 窮奇を見たレオンが、息を呑んだ。

「これが……聖獣……」


 ローラがその肩に手を置き、前へ出る。


 広場の影を見渡しながら、短く指示を飛ばした。

「迷宮の奥へ向かいます。窮奇を中心に動いてください」


 ドロルはローラの言葉を受け、軽く会釈する。

「ええ。よろしくお願いします」


 ――


 そのとき、広場の影が濃くなり、人の形を模した影の怪物が現れた。


 騎士団が応戦するが、影は影へ潜り込んで攻撃してくる。


 ドロルは窮奇へ視線を向ける。

「窮奇、吹き飛ばせ」


 窮奇は静かに前へ出る。

 胸の奥で光が膨らみ、次の瞬間、咆哮が広場を震わせた。


 影の怪物は一瞬で霧散し、広場の影ごと吹き飛ばされた。


 レオンがその光景を見て、思わず声を漏らした。

「……すげぇ……」


 ミレイが窮奇の背を見つめながら、低く呟く。

「窮奇がいれば……奥まで行けるかもしれない」


 アランは騎士団に囲まれながら、ドロルへ視線を向ける。

 その目は街の未来を託す者のものだった。


「行ってきます」


 ――


 迷宮の入口へ向かう一行。


 レオンが剣を抜き、仲間へ向けて短く声を上げる。

「行くぞ……!」


 ドロルは窮奇の横に立ち、静かに前を見据えた。

「進みましょう」

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