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【痛みの帝王】 〜65歳で全ての激痛を経験した男、異世界で“痛みを操る”チートを得て成り上がる〜  作者: ボルトコボルト


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第30話 迷宮都市の動乱──暗殺の報せと、崩れゆく誓い

 迷宮都市の城壁が見えてきた頃、街の空気はどこか騒がしく、門前には人だかりができていた。


 兵士たちが慌ただしく走り回り、怒号が飛び交っている。


「……様子がおかしい」

 シルクが眉を寄せる。


 サリーも不安げに周囲を見渡した。

「何かあったのかな……?」


 馬車が門前に近づくと、門番が血相を変えて駆け寄ってきた。


「アラン様! ご無事で……!」


 アランが窓を開ける。

「どうした?」


 門番は震える声で告げた。


「領主様が……暗殺されました!」


 一行は息を呑んだ。


「暗殺……?」

 シルクが震える声で呟く。


 サリーは口元を押さえた。

「そんな……」


 アランは顔色を変え、ドロルに短く声を掛けた。


「ドロル……すまない。僕は急ぎ戻らなければならない。

 また後で必ず会う。君たちのおかげで僕は生きている。

 本当にありがとう」


 その言葉を残し、アランは護衛隊と共に馬車を走らせ、領主の館へ向かっていった。


 残されたのは、商人と従者、ドロル、窮奇、シルク、サリーの五人と一匹。


 商人は深く頭を下げた。

「本当に……ありがとうございました。

 依頼は完了です。こちらにサインを」


 シルクは依頼書を受け取り、商人と従者は商会へ戻っていった。


「……行こう。ギルドに報告しないと」

 シルクが疲れた声で言う。


 ドロルたちは迷宮都市の冒険者ギルドへ向かった。


 ***


 迷宮都市のギルドは、いつも以上に騒がしく、冒険者たちがざわついていた。


 領主暗殺の噂がすでに広まっているのだ。


 受付に依頼書を渡すと、シルクが深く息を吸い、報告を始めた。


「護衛依頼は完了しました。

 ただ……道中で襲撃を受けました。

 アンドレが裏切り、隣領の兵士と共に商人を襲いました」


 受付嬢は目を見開いた。

「アンドレが……? そんな……」


 サリーが補足する。

「野営地は……魔獣に食い荒らされた遺体でいっぱいでした。

 五十人ほどの兵士が包囲して襲ってきたらしく……」


 ドロルは淡々と続けた。

「兵士の襲撃は窮奇が対応しました」


 窮奇は誇らしげに胸を張った。

「儂が主殿を守っただけだ」


 受付嬢は震える手でメモを取りながら、深刻な顔で頷いた。


「……ギルマスに報告します。

 少しお待ちください」


 ギルマス室に案内され、シルクが再び詳細を説明した。


 アンドレの裏切り、兵士の襲撃、野営地の状況──

 長い報告が終わる頃には、シルクはげっそりと肩を落としていた。


「……疲れた……」

 シルクが椅子にもたれかかる。


 サリーも同じく疲労困憊の表情だ。

「でも……まだやらなきゃいけないことがあるよね」


 シルクは静かに頷いた。


「……アンドレの裏切りを、タルトに伝えなきゃ。

 あの子は……知らないままじゃいけない」


 サリーは目を伏せた。

「『栄光の誓い』……もう続けられないよね」


「うん。解散する。

 もう……戻れない」


 二人の声は震えていたが、決意は固かった。


 ***


 ギルドを出た後、ドロルは窮奇と共に宿へ向かった。


「今日は宿に泊まって、明日装備を取りに行こう」

 ドロルが言う。


 窮奇は満足そうに頷いた。

「主殿の装備が整えば、儂も安心だ」


 シルクとサリーはタルトのもとへ向かい、

 ドロルと窮奇は静かな夜の迷宮都市を歩いていった。


 街は混乱の渦中にありながらも、どこか静かで、

 新たな嵐の前触れのような空気が漂っていた。

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