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【痛みの帝王】 〜65歳で全ての激痛を経験した男、異世界で“痛みを操る”チートを得て成り上がる〜  作者: ボルトコボルト


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第24話 森の静寂──聖獣の裁きと極秘の荷物

 縄で縛られた六人の冒険者たちは、地面に転がったまま呻き声を漏らしていた。


 熱中症の症状で意識が朦朧とし、アンドレは半身が痺れたまま動けない。


 その惨めな姿を見ながら、ドロルは深く息を吐いた。


「……ふぅ」


 シルクとサリーも肩で息をしながら、縛られた男たちを睨みつけている。


 商人は呆然と立ち尽くし、御者の男は震えながら焚き火に手を伸ばしていた。


「ドロルさん……助かったわ……」

 シルクが胸に手を当て、震える声で言う。


 サリーも涙目で頷いた。

「ほんと……死ぬかと思った……」


 ドロルは首を振った。

「窮奇が戻る前で良かった。あいつら、窮奇がいたらもっと酷いことになってた」


 その時──

 夜空から、巨大な影が降りてきた。


「主殿」


 窮奇が戻ってきたのだ。

 翼を畳み、静かに着地したかと思えば──


 次の瞬間、窮奇は縛られた冒険者の一人の上へ飛び降りた。


「──ッ!」


 鈍い音が響き、男の頭が地面に押し潰された。

 血が飛び散り、周囲が凍りつく。


 シルクが息を呑んだ。

「窮奇……!」


 サリーは震えながら口元を押さえた。

「な、なんで……」


 窮奇は冷たい目で死体を見下ろし、低く言った。


「主殿のスキルを見た者は、生かしておけば周りに広まる。

 儂は主殿の力を守るために動く」


 ドロルは眉を寄せた。

「……殺す必要はなかった」


「必要だ」

 窮奇は断言した。


「主殿の力は、強すぎる。

 悪意ある者に知られれば、狙われる。

 儂は主殿を守るためなら、迷いはせぬ」


 その言葉に、シルクとサリーは息を呑んだ。

 窮奇の忠誠は絶対であり、同時に恐ろしくもあった。


 窮奇は死体の腰に差してある剣を引き抜いた。

 血が滴り落ちる。


「この剣が一番質が良い。主殿、使え」


 ドロルは剣を受け取り、重さを確かめた。

 今までの粗悪なショートソードとは比べ物にならない。


「……ありがとう。助かる」


 窮奇は満足そうに鼻を鳴らした。


「主殿、ここは既に囲まれている。

 森の外周に、五十人ほどの気配がある」


 シルクが青ざめた。

「五十……!? 盗賊にしては多すぎるわ!」


 サリーも震えながら言う。

「なんでこんな人数が……」


 窮奇は森の奥を睨んだ。

「奴らは盗賊ではない。組織された集団だ」


 ドロルは商人に視線を向けた。


「……商人さん。

 あなたが運んでいる物は何ですか?

 三日後に必ず街に届けなければいけない物って……何?」


 シルクも鋭い目で商人を見た。

「ここまでの人数で襲われる理由を説明して」


 商人は震えながら口を開いた。


「……街には、領主の息子様がいます。

 急な病で倒れ、瀕死の状態で……移動もできないほどです」


 シルクとサリーは息を呑んだ。


 商人は続けた。


「昨日、迷宮から冒険者が“治療薬の材料”を持ち帰りました。

 領主様は急ぎ薬を作り……私に託したのです。

 この薬を届ければ……息子様は助かる」


 御者の男も震える声で言った。


「この話は極秘です。

 知られれば、領主の息子様を狙われる……

 だから、信頼できる商人である私に託されたのです」


 ドロルは静かに頷いた。


「……なるほど。

 だから狙われたんですね」


 シルクは拳を握りしめた。

「でも……五十人って……多すぎるわ!」


 サリーも叫ぶ。

「領主の息子を殺して、政治を動かそうとしてるの!?

 そんなの……許せない!」


 窮奇は低く唸った。


「主殿。奴らは動く気配を見せていない。

 恐らく、夜明けを待っている。

 このままでは、包囲されたまま朝を迎える」


 ドロルは剣を握りしめた。

 新しい剣の重さが、状況の重さと重なった。


「……どうするか、考えないと」


 シルクとサリーは不安げにドロルを見る。

 商人は震えながら荷物を抱きしめている。


 五十人の包囲。

 極秘の治療薬。

 裏切り者のアンドレ。

 そして、窮奇の冷徹な判断。


 森の静寂は、嵐の前の静けさだった。

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