第12話:門前の支配者、聖獣を従える者にひれ伏す日
街道を歩くドロルの足取りは、いつも通り静かで淡々としていた。
だが、その頭上には――常識を破壊する光景があった。
白い翼を広げ、
森の王者キラーベアを抱えたまま、
空中でドロルについてくる聖獣・窮奇。
その異様な組み合わせは、街へ近づくほどに人々の視線を集め、
やがて街の門前は、息を呑む者たちで埋め尽くされた。
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◆ 門前の静寂、そして恐怖
ドロルが門の前に到着すると、
窮奇もその後ろに静かに降り立った。
地面がわずかに震えた。
住民、冒険者、衛兵――
誰もが固唾を飲んで見守っていた。
「……あれが窮奇……?」
「キラーベアを抱えてるぞ……」
「街が滅ぶ……?」
誰も声を出せず、ただ見ていた。
その静寂を破ったのは、門番の衛兵だった。
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◆ 門番との口論、始まる
「お前は冒険者のドロルだよな。
後ろの窮奇はなんだ?」
ドロルは淡々と答えた。
「ああ、俺の従魔になった。
これから冒険者ギルドで従魔登録する。
それと、キラーベアを狩ったから買取してもらう予定だが、何か?」
門番は目をひんむいた。
「な、何かじゃないぞ!
聖獣を従魔にしたなんて聞いた事がない!」
もう一人の門番が怒鳴る。
「そうだ!
こんな騒ぎを起こしやがって!」
ドロルは肩をすくめた。
「俺が騒ぎを起こしたって?
心外だなぁ」
門番は苛立ちを隠さず言った。
「領主様に確認するから待ってろ!」
「領主!?
すぐに確認できるのか?
いつまで待たされるんだよ」
「領主様はお忙しいから、すぐには無理だろうな」
ドロルは大きくため息をついた。
「はあ!
キラーベアが腐っちまうよ」
門番とドロルの口論は続いた。
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◆ “鋼鉄の光”の四人、登場
冒険者達の中から、
四人の男が歩いてきた。
剣士アガルド、槍士バルド、弓士レミオ、斥候ジグ。
かつてドロルに痛みで懲らしめられ、
冒険者の基礎を叩き込んだ四人だ。
「ドロルさんの従魔だったのですか……」
アガルドは驚きながらも、どこか納得していた。
「何を揉めてるんです?」
バルドが門番を見る。
「これから登録する従魔の入場を止められているんだ」
ドロルが答える。
レミオが眉をひそめた。
「おかしいな。
そんな法律ないはずですけどね。
そんなことしたら誰も新たな従魔契約ができなくなる」
門番は怒鳴った。
「ばかな!
聖獣だぞ!
そこらの従魔と一緒にするな!」
ジグは走り出した。
「ちょっとギルマスを連れてきます!」
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◆ ギルドマスター・ダルト、登場
「おう!
聖獣を従魔にしたんだって?
この街のギルドの戦力が一気に上がるな!」
豪快な声が響いた。
ギルドマスター・ダルトが現れた。
「俺が冒険者ギルドのマスター、ダルトだ」
門番が慌てて止める。
「ダルトさん、ちょっと待ってくれ!」
「いや、冒険者のことは冒険者ギルドに任せろ。
従魔登録すれば何も問題ないはずだ」
門番は焦りながら言った。
「いや、衛兵隊長のトルア様から、
領主に確認を取るまで待たせろと言われて……」
ダルトは舌打ちした。
「はあ……ジグ!
受付嬢に言って今すぐ従魔の証を持って来い!」
「了解です!」
ジグは走り去った。
門番が怒鳴る。
「勝手なマネされたら困りまーー」
「煩い!」
ダルトが一喝した。
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◆ 衛兵隊長トルア、登場
「おいおい、街の門の前で騒がしいぞ。
暫く牢屋に入ってみるか?あん?」
衛兵隊長トルアが歩いてきた。
ドロルはアガルドに聞いた。
「誰?」
「衛兵隊長のトルアさんだ」
「ふ〜ん、コイツが元凶か」
トルアはドロルを見て鼻で笑った。
「で、どいつが聖獣様の主人だ?」
みんなドロルを見る。
トルアは目を細めた。
「はあ?
このヒョロヒョロ坊主が窮奇を従えてるのか?
本当に従えてるんだろうな。
お前のランクはなんだ?」
「Eランクですよ」
トルアは嘲笑した。
「馬鹿か!
Eランクで聖獣を従属できる訳がねえ!
詰所でじっくり聞こうか」
ダルトが止める。
「おい、トルア、それはやりすぎじゃないか?」
「この街の門は俺達が守っているんだ!
口を出すなダルト!」
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◆ 従魔の証、そして“ざまぁ”
ジグが戻ってきた。
「従魔の証を持ってきました!」
ダルトは緑の布のリボンをドロルに渡した。
「ドロル、これを窮奇に付ければ問題なしだ」
ドロルはアガルドに聞きながら、
窮奇の首にリボンを巻いた。
ダルトが言う。
「さあ、これで文句はないだろう、トルア」
トルアは怒鳴った。
「勝手なマネするなよダルト!
領主の許可が必要だ!」
ダルトは冷笑した。
「その許可はいつ頃出るんだ?
領主なら二〜三日待たせられるんじゃねえのか?」
「そうだな、それくらいはかかるだろうよ。
その間は牢屋で待ってろ」
トルアは弱そうなドロルを見て、
どうとでもなると思って威圧した。
ドロルは肩をすくめた。
「はあ?
何言ってんだ。
分かった、分かった。
もう街には入らねぇ」
そしてアガルドに言った。
「アガルド!
この熊を冒険者ギルドに買取させて、
代金を後で送れ」
「はい!承知しました!」
「ちょっと待て!!」
ダルトとトルアが同時に叫んだ。
「どこに行く?」
ダルトが聞く。
「ダンジョンがある街に行くよ」
ダルトは地図を渡した。
「ならギエラだな。
地図を持って行け」
トルアが怒鳴る。
「何勝手なマネをしてやがる!
領主様の確認まで待ってろ!」
トルアがドロルに迫ろうとした瞬間――
窮奇が割って入った。
「おい!
主人がもう入らないって言ってるんだ。
文句があるのか!」
トルアは震えた。
「えっ……聖獣が喋った……」
ドロルは窮奇の背に飛び乗った。
「じゃあな!」
そして捨て台詞。
「衛兵隊長のトルアさん。
明日から酷い頭痛に悩まされると思うよ」
窮奇が空へ舞い上がる。
剣士アガルド、槍士バルド、弓士レミオ、斥候ジグは、苦笑いを浮かべて見送った。




