遠州の勇者、美音よ…餃子の煙に消える人気よ』 ──ズレた恋とズレた企画は東海の風に乗って──
東海地方随一のおしゃれスポット、名古屋・オアシス21。
中部の夜景を背に、遥広報官と隼人司令補佐官は、昼ドラの続きみたいな甘いムードでデート中だった。
が。
隼人司令補佐官がふと立ち止まり、空を見上げ、
「遥さん……思いつきました」
と、あの“ズレたひらめき”の目になった。
遥広報官はピンときた。
「また……?」
「はい。美音さんが浜松餃子を100人前焼ききるチャレンジ。
これで美音さんの武勇伝がひとつ増えるはずです」
どこにそんな必然性があるのかは誰にもわからないが、
遥広報官は妙に乗り気になる。
「いいねそれ!浜松出身だし!浜松餃子だし!美音ちゃん器用だし!」
(※なお、美音は料理が得意とは言っていない)
こうして、次の週。
会場は岐阜県各務原市のショッピングモール。
ステージ中央に鉄板が用意され、美音がエプロン姿で登場すると――
場内から歓声があがった。
「美音ちゃんが焼く餃子!?」「絶対うまいやつ!」
美音は凛と宣言した。
「皆さん、遠州の勇者として……100人前、焼ききります!」
焼いた。
焼いた。
焼いた。
とにかく焼いた。
ハーモニカも吹かず、敵も倒さず、ただひたすら餃子を焼いた。
その姿は、勇者というより、ただの“戦場の職人”だった。
結果、餃子は飛ぶように売れ、大盛況。
しかし問題はここからだった。
イベント終了後のサイン会。
美月、美音、綾乃、彩香、あかりの5名並んで座る。
他の4人には長蛇の列、しかし――
美音の列だけ、
スカスカ。
前を通った子どもが母親に聞いた。
「ママ、あの人なんで餃子焼いてたの?」
「知らないわねぇ……」
かわりに売れたのは、
美音の横に積まれた**冷凍浜松餃子(20個入り700円)**ばかり。
美月
「……美音より餃子のほうが人気やん」
彩香
「おい美音、次は“焼き鳥100本”にしたらええんちゃう?」
綾乃
「人気と餃子は別腹どすなぁ……」
あかり
「餃子、おいしーーー!!」
(※試食を無限にして怒られた)
遥広報官は頭を抱えた。
(なんで…?あんなにがんばってたのに…?)
隼人司令補佐官は静かに結論をつぶやいた。
「……美音さんは完璧すぎるので、
餃子のほうが親しみやすいのかもしれませんね」
こうして、
「美音の餃子イベント大成功!
美音本人の人気は現状維持!」
といういつもの結果に落ち着いたのであった。
次のデートで、またズレた企画が生まれることを、
ヒロイン達はまだ知らない。




