濃尾の跳躍姫〈カンガルー真白〉極秘デビュー! —戦隊ヒロインプロジェクト“裏口入隊”録—
岐阜での大盛況イベントが終わり、
余韻に浸りつつ帰路につこうとしていた美月の背中を、
遥広報官がコソッと引っ張った。
遥広報官(駿河弁でひそひそ)
「美月ちゃん…ちょっと来てくれる?
ほいで、ぜったい内緒だよ? 極秘任務だで」
美月
「なんや内緒って。うち隠しごとはようないタイプやで?」
遥広報官
「頼むでぇ、ここは大人になって。
他の子にはまだ言えん事情があるだもんで」
美月が「はぁ?」と眉を上げた瞬間、
薄暗い控室のドアが静かに開いた。
その奥に立っていたのは――
まるで昭和文学から抜け出してきたような、
色白で華奢な美少女。
視線は伏せられ、
黒髪は肩でかすかに揺れ、
声は風鈴より小さく、
真白
「……い、伊吹真白…です……」
息遣いすらか細い。
ふらっと消えそう。
美月
「な、なんや?
アンタ……だ、大丈夫なんか?
ヒロイン任務、キツいで?」
遥広報官
「大丈夫。見かけと違うでこの子」
真白はおずおずと、美月を見上げた。
その瞬間、美月は“寒風”を感じた気がした。
遥広報官
「大垣の子でね、あの伊吹おろしで鍛えられとる。
足腰バッキバキだで」
美月
「えっ、こんな病弱そうやのに?」
遥広報官
「跳んでみて?」
真白
「……はい……」
次の瞬間――
ビョン!!!!!!
控室の天井に頭がぶつかりかけた。
美月
「跳びすぎィィィィィ!!!!」
遥広報官
「だから言ったっけ。
カンガルー真白って呼ばれとるもんで」
美月
「跳躍力エグい……!」
真白は照れたように指をつんと合わせる。
真白
「……でも……任務……
できるかどうか……自信がなくて……」
美月は即座に肩を叩いた。
その声は驚くほど明るかった。
美月
「なんや、そんなん心配いらん!
うちらみんな最初はビビりまくりや!
ほな、一緒に頑張ろな、真白!」
真白
「……が、がんばります……」
遥広報官がにっこり笑う。
遥広報官
「それと真白ちゃんには“潜入”系をお願いするつもり。
細いし柔らかいし、小さい隙間スルッと入れるでね」
美月
「忍者やん!」
遥広報官
「さらに――」
少し声を潜める。
遥広報官
「お父さんが大手運輸会社“濃尾運輸”の役員さんでね、
うちのプロジェクトのサポート企業になってくれたもんで。
真白ちゃんにはいずれ トラック輸送任務もお願いするよ」
美月
「病弱そうな見た目でデカイ荷物運ぶんか!?
ギャップ強すぎるやろ!」
真白は小さく頷いた。
真白
「……がんばります……」
美月は笑いながら肩を組む。
美月
「そんだけ言えたら十分や。
ほな、うちと一緒にヒロイン道、突っ走るで!」
薄幸の美少女は――
その時初めて、ほんの少しだけ微笑んだ。




