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ヒロインズ・リンク 〜戦隊ヒロインプロジェクト〜  作者: スパイク


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広島支部長、出雲の巫女を強引スカウト!ヒロヒロに静寂はあるのか

戦隊ヒロインプロジェクト広島支部。

略して――ヒロヒロ。


そんな部署は正式には存在しない。


だが、広島県内でイベントをやりすぎた結果、いつの間にか全員がそう呼ぶようになった。

中心人物は二人。


一人は、自他ともに認める広島支部長・江波のどか。

役職は存在しない。

だが本人が名乗り、周囲もなんとなく認め、今や誰も疑わない。


もう一人は、総責任者っぽい顔で全体をかき回す男、野村吉彦――通称ノムさん。

地元広島の高校でのどかの先輩にあたり、芸能界では顔の広い敏腕プロダクション経営者。

一応、芹沢遥室長からは「ノムさんがちゃんと面倒みるなら」と公認をもらっている。

公認ではある。

だがこの二人、根が悪ノリである。


その結果、ヒロヒロはいつも暴走気味だった。


会議室には、因幡の太陽・山根梨乃がいる。

無駄に元気で、的外れ。

アイデアは多いが、だいたい使えない。


「しゃもじを無人島まで飛ばしたら話題になるだ!」


「ならん!」


のどかが即座に切る。


その横では、松山のレジェンド地下アイドル・みーちゃんが、今日も“みーちゃんライト”を一身に浴びている。

会議室なのに照明がまぶしい。

なぜ必要なのかは誰にも分からない。

だが、本人は満足そうだ。


「角度、もうちょい右かな〜」


誰も頼んでいないのに自分で微調整している。


さらに、たまに参加する讃岐のダッシュ娘・大西結月も健在だ。

会議中にじっとしていられず、なぜか廊下を一往復して戻ってくる。


「落ち着かんか!」


のどかが叫ぶ。


この時点で、企画会議はだいたい学級崩壊寸前である。


ノムさんは腕を組みながら言う。


「いいか、ヒロヒロには熱がある」


「熱しかないんじゃ!」


のどかが突っ込む。


だがその夜、のどかは珍しく真剣な顔で考え込んでいた。


――場を整える人材が要る。


ヒロヒロには勢いがある。

笑いもある。

地元愛もある。

だが、整える人がいない。


そこで思い出したのが、大学の同級生、神門結衣だった。


島根県出雲市出身。

実家は出雲大社の近く。

美人。

物静か。

どこかスピリチュアルな雰囲気。

賑やかな学食の隅で一人だけ空気が違うような、不思議な女。


正直、ヒロヒロには向いていない。

というより、向いていなさすぎる。

だが、だからこそ必要だとのどかは思った。


翌日、大学の中庭。


本を読んでいた結衣に、のどかは単刀直入に言った。


「結衣、手伝わん?」


結衣は顔を上げた。


「何を?」


「戦隊ヒロイン」


数秒の沈黙。


「……その言葉、そんな普通のトーンで出てくるんだ」


のどかは胸を張る。


「地域創生じゃ。健全な青少年育成じゃ。交通安全、治安維持、あと地元を盛り上げるんじゃ」


結衣は少し驚いたような顔をする。


「意外とちゃんとしてるんだね」


「ちゃんとはしとる。たまにおかしいだけじゃ」


その“たまに”が致命的なのだが、のどかはそこには触れない。


結衣は静かに考える。


華やかな世界への憧れは、正直少しあった。

出雲の静かな空気も嫌いじゃない。

でも、自分とは縁のない場所だと思っていた。


「……ちょっとだけなら、手伝ってもいいかも」


のどかの目が光る。


「決まりじゃ!」


「いや、まだ入るとは言ってない」


だがもう遅い。

のどかの頭の中ではすでに“出雲担当・神門結衣”のテロップが完成していた。


数日後。

結衣は初めてヒロヒロのイベント企画会議にやって来た。


会議室の扉を開ける。


そこには――


しゃもじの試作品を振りながら踊る梨乃。

「これ回したら空も飛べるだ!」


「飛ばん!」


叫ぶのどか。


隅でみーちゃんがライトの明るさを上げている。

「今日ちょっと影が濃いのよね〜」


なぜ会議で照明勝負をしているのか不明。


結月はなぜかその場で腿上げをしている。

「運動会企画なら今のうちに鍛えとかないと!」


ノムさんはホワイトボードに大きく

“深夜二時のしゃもじファッションショー案”

と書いている。


結衣、絶句。


「……思ったよりひどいね」


「じゃろ?」


なぜかのどかが少し誇らしげだ。


その時、梨乃が結衣に気づく。


「うわ、きれいな人来た!」


全力で駆け寄る。


大型犬みたいな勢いである。


「待て、走るな!」


のどかの制止もむなしく、梨乃は結衣の手を両手でがっちり握った。


「島根の人だ? 神さまの近くに住んどる人だ!」


「まあ、近いけど」


「すごい! なんかご利益ありそう!」


「ないよ」


「手伝ってくれるだ?」


「いや、私は――」


結衣は会議室を見回した。


しゃもじ。

ライト。

腿上げ。

ノムさん。

広島支部長。


そして悟る。


「……私には無理」


踵を返す。


だが、梨乃が追う。


「待って!」


頭の弱いラブラドールレトリバーみたいな笑顔で、全力で引き止める。


「帰ったらもったいない!」


「何が!?」


「なんか分からんけど、もったいない!」


意味不明。


だが、その言葉と笑顔に、結衣は少しだけ吹き出した。


のどかが腕を組む。


「お前がおったら、少しはマシになる」


ノムさんも満足そうにうなずく。


「出雲の静けさ、広島に必要だ」


結衣は長いため息をつく。


「……ほんと、変な縁だね」


梨乃は満面の笑み。


「ご縁だ!」


「たぶんその言い方、今だけは合ってる」


こうして、

広島支部長・のどか、

因幡の太陽・梨乃、

そして出雲の静かな神秘・神門結衣。


ヒロヒロに、ついに“場を整える人材”が加わることになった。

加わるのかどうか本人はまだ曖昧だが、ノムさんはすでに配信用サムネにこう入れていた。


「出雲の巫女、ヒロヒロ降臨」


「だから、まだ入ってないって言ってるよね」


結衣の静かなツッコミが、

今日も騒がしいヒロヒロに、ほんの少しだけ秩序をもたらそうとしていた。

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