ハマの勘違いプリンセス南部沙羅 〜横浜ブランドは今日も空回る〜
横浜市──といっても新興住宅地の端っこ。
畑とマムシ注意の看板に囲まれた静かな街から、ひとりの少女が戦隊ヒロインプロジェクトに送り込まれた。
その名は 南部沙羅。
自称 ハマの勘違いプリンセス。
公称 ハマのPrincess Mirage。
ただし実力は──凡庸。
◆沙羅の自己紹介、毎回こんな感じ
「わたし?ハマの○○よ!
横浜生まれのエリートガールだから!」
──横浜生まれじゃない。
正しくは「東北生まれ・6歳で横浜越境組」。
しかも家があるのは横浜駅から私鉄で30分、バスで20分、
コンビニまで自転車10分。
“ハマ感ゼロ”の田園地帯。
それでも沙羅は自信満々。
薄い根拠ほど強く握るのが勘違いプリンセスの真骨頂である。
◆沙羅の“ハマの○○”コレクション(全て大したことない)
・ハマの知性派 → TOEIC650点
・ハマの武術の達人 → 掛け声だけ強い
・ハマのファッションリーダー → 私鉄系スーパーで購入
・ハマの勝ち組 → 実家が最寄り19:30閉店のスーパー圏内
小春、みのり、麗奈は陰でこっそり相談する。
「……沙羅ちゃん、どうフォローすればいいの?」
「横浜って言っても、あの場所は横浜の“匂い”薄いよね……」
「ていうか、あれ新興住宅地って言うより村じゃない?」
◆イベントでも迷走
華やかなステージに立つ沙羅。
観客は期待する。
「お、ハマの勘違いプリンセス来たぞ」
「なんかやらかすぞ」
沙羅は高らかに宣言する。
「横浜代表として、このわたしがトークを披露するわ!」
だが中身は──
「横浜といえば海よね!
わたし、海ほとんど行かないんだけど!」
……会場の空気が スッ と冷える。
小春が慌ててフォローする。
「さ、沙羅ちゃん、他に特技とかある?」
「え?英語なら得意よ!
Yesterday once more〜♪」
歌い出したが、発音は普通。
というか曲選びも普通。
観客は拍手しづらい。
みのりは袖でつぶやく。
「……雅楽の方が向いてるんじゃないかな。
横浜関係ないけど」
◆戦闘でも迷走
ジェネラスリンクとの戦闘。
みのりが鋭い蹴りで敵を薙ぎ倒し、麗奈が華やかにフォロー、
小春が機転で敵の動きを封じる。
そこに沙羅が颯爽と登場──
したつもりだが、実際には
「えっと…ここ危ないから、わたし後ろで状況見るわ!」
後方10メートルで突っ立っているだけ。
澪ですらサックスブルーの制服で黙々と指示に従うのに、
沙羅は“見守るだけ”。
敵の怪人も思わずつぶやく。
「……あの横浜の子、ずっと立ってるけど。何する子?」
◆後援会も組織されない
澪でさえ市役所の暴走で“後援会”が作られたというのに、
沙羅には誰も組織してくれない。
本人は言う。
「後援会なんていらないわ。
わたし、横浜生まれの勝ち組だから」
──横浜生まれじゃない。
麗奈は心配して声をかける。
「沙羅ちゃん…なんか、困ってることない?」
「え?別に?
みんながわたしの魅力に気づいてないだけでしょ?」
みのりは静かにうつむいた。
「……これは長期戦になりそうだね」
◆迷走するプリンセス、しかし…
こんな沙羅でも、
なぜか愛されている。
トークは凡庸、戦闘は控えめ。
それでも、どこか憎めない。
むしろ見ている側は
「今日こそやらかすぞ…!」
という期待でワクワクするのだ。
戦隊ヒロインの世界には
圧倒的な才女も、
天才肌のプロフェッショナルもいる。
だが、
迷走し続けるプリンセス
この枠は、南部沙羅にしか埋められない。
そして今日も麗奈と小春とみのりは背中を押す。
「沙羅ちゃん、ゆっくりでいいから成長してね」
「うん、まあ横浜だし」 ←澪も便乗
プリンセスの勘違いは続く。
でも、その勘違いが
チームに少しだけ明るさをくれるのだった。




