キャラクター対談
――本日はお集まりいただきありがとうございます。まずは自己紹介からお願いします。
相沢「総務部の相沢です。よろしくお願いします」
澪「同じく総務部の澪です。よろしくお願いします」
三浦「総務部の三浦です! よろしくお願いします!」
――ありがとうございます。最終話まで終えて、まずは今の気持ちを聞かせてください。
相沢「終わった、というより、ようやく落ち着いた感じです」
澪「相沢さんらしいです」
三浦「わかります。なんか“感動の最終回でした!”っていうより、“ちゃんと全部片づいたかな……”って顔してます」
相沢「どういう顔?」
澪「かなり正確です」
相沢「澪まで乗るんだ」
三浦「でも、そういうとこが相沢さんですよね」
――三浦さんはどうですか?
三浦「私は、最後までちゃんと総務部の一員でいられた感じがしてうれしいです。最初のころ、ほんとに何もわかってなかったので」
相沢「今もたまに危ういけどね」
三浦「“たまに”なら成長してるってことですよね?」
澪「前向きです」
三浦「褒められました?」
澪「半分くらい」
――ではまず、相沢さんにお聞きします。最初と最後で、自分がいちばん変わったと思うところはどこですか?
相沢「一人で抱え込まなくなったところ、ですかね」
――やはりそこですか。
相沢「最初は、見えてしまう以上、自分が先に気づいて、自分が備えて、自分が何とかしないといけないと思ってたんです。説明もできないし、外したくもないし。だから余計に、一人で持つしかなかった」
澪「カバンも重かったです」
相沢「急に具体的だな」
澪「かなり具体的な問題でした」
三浦「私も途中から思ってました。“相沢さんのカバン、何でも出てくるな……”って」
相沢「そんなふうに見られてたんだ」
澪「見られていました」
三浦「見てました」
――澪さんは、最初に相沢さんのカバンを見たとき、どう思ったんですか?
澪「こんなカバンの中身はおかしい、と思いました」
三浦「やっぱり!」
相沢「やっぱりって何」
三浦「いや、言いそうだなって」
相沢「ひどいなあ」
澪「事実です」
相沢「便利だなあ」
澪「役立っているので」
――でも最終的には、そのカバンもかなり軽くなりました。
相沢「そうですね。前は“何かあるかもしれない”で詰めてたんですけど、最後はもう、そこまで持たなくてよくなったので」
澪「みんなで備えるようになったので」
相沢「うん。それは大きかった」
三浦「いい話だ……」
――ただ、絆創膏だけは残った。
三浦「そこ、すごく好きです」
相沢「読者代表みたいな顔しないで」
三浦「だって好きじゃないですか。“澪が転んで擦りむいたとき用に”ですよ?」
澪「入っています」
相沢「確認しなくていいよ、ここで」
三浦「えっ、今も入ってるんですか?」
相沢「入ってるよ」
三浦「いいなあ……」
相沢「何が」
三浦「そういうのです」
澪「三浦さんが転んでも使いません」
三浦「なんでですか!」
澪「自分で持っていそうなので」
三浦「たしかにポーチに入ってますけど!」
相沢「自己完結してるなあ」
――澪さんにお聞きします。相沢さんの変化は、いつ頃から感じていましたか?
澪「少しずつです。急にではありません」
――具体的には?
澪「助けを断らなくなったこと。確認を任せるようになったこと。あと、呼び方です」
三浦「あー!」
相沢「何その“あー!”」
三浦「いや、わかります。途中から“澪”って呼ぶときの空気、ちょっと変わりましたよね」
相沢「そんなに見てるの?」
三浦「見ますよ。席近いので」
澪「観察熱心です」
三浦「澪さんに言われるとちょっと照れますね」
――相沢さん、そこは自覚ありましたか?
相沢「……途中からは、少し」
三浦「少しなんだ」
相沢「いや、呼び慣れてないと意識するでしょ」
澪「最初は少し止まっていました」
相沢「細かいなあ」
澪「必要なので」
――相沢さんから見た澪さんは、最初どんな印象でしたか?
相沢「静かで、よく見てて、何考えてるかわからない人、でした」
三浦「わかる」
澪「そうですか」
相沢「今も静かだし、よく見てるし、何考えてるかわからないときはあるんですけど」
澪「ありますか」
相沢「あります。でも、前よりずっとわかるようになった」
――どのあたりが?
相沢「ちゃんと優しいところとか。言葉少ないのに、止めるときは止めるし、必要なときはちゃんと言うし」
三浦「あと、たまに強いですよね」
相沢「たまにじゃないかも」
澪「必要なので」
三浦「その“必要なので”、万能すぎません?」
澪「便利です」
相沢「認めるんだ」
――作中では、高橋さんの存在も独特でしたよね。特に、相沢さんの“見えていること”に対して、少し疑っているような場面もありました。
相沢「あれは、やりにくかったですね」
三浦「やっぱりそうなんですね!」
澪「かなり探っていました」
相沢「そう。真正面から聞くわけじゃないのに、妙に近いところを突いてくるんだよね」
――たとえば、どんなふうに?
相沢「“なんでそこまで先に気づくの?”とか、“前にも似たことあった?”とか。言い方は軽いんですけど、たぶん普通の雑談じゃない」
三浦「うわ、嫌だ……鋭い……」
澪「しかも本人は、そこまで詰めている自覚が薄そうでした」
相沢「それがいちばん困るんだよ」
――高橋さんは、どこまで気づいていたと思いますか?
相沢「どうだろう。確信まではなかったと思う。でも、“何かある”とは思ってたんじゃないかな」
澪「はい。疑っていたと思います」
三浦「澪さん、断言しますね」
澪「観察結果です」
相沢「便利だなあ」
三浦「私、あのとき普通に“高橋さん、今日ちょっと絡むなあ”くらいにしか思ってなかったです」
相沢「まあ、そう見えるよね」
三浦「えっ、じゃああれ全部、ちょっと探ってたんですか?」
澪「たぶん」
三浦「高橋さん、こわ……」
相沢「いや、怖いというか、勘がいいんだと思う」
澪「面倒ですが」
相沢「言い切るなあ」
三浦「でもちょっとわかります。高橋さんって、“気のせいかもしれないけど”って前置きして、全然気のせいじゃないこと言いますよね」
相沢「ある」
澪「あります」
――もし今、高橋さんにあらためて聞かれたらどうしますか?
相沢「今なら……前ほど困らないかもしれないです」
三浦「言うんですか?」
相沢「いや、全部は言わないけど」
澪「言わなくていいと思います」
相沢「即答だな」
澪「必要ありません」
三浦「強い」
――高橋さんの件も含めて、澪さんはかなり冷静に見ていた印象があります。
澪「冷静というより、相沢さんが困るなら止めるだけです」
相沢「……そういうとこなんだよなあ」
三浦「何ですか今の“そういうとこ”」
相沢「いや、別に」
澪「説明できますか」
相沢「しなくていいでしょ、そこは」
――三浦さんから見て、お二人はどんな関係ですか?
三浦「えっ、私が言っていいんですか?」
――ぜひ。
三浦「なんていうか……ちゃんと噛み合ってるのに、たまに会話が雑なんですよね」
相沢「雑」
澪「否定はしません」
三浦「でも、その雑さ込みで落ち着いてるというか。見てて安心する二人です」
相沢「それはちょっと嬉しいかも」
澪「はい」
三浦「あと、二人ともお互いのことになると、ちょっとだけ反応が変わるんですよ」
相沢「そんなにわかる?」
三浦「わかりますよ。総務部、狭いので」
澪「観察熱心です」
三浦「今日それ二回目ですよ」
――三浦さん自身も、最終盤でかなり成長していましたね。
三浦「ありがとうございます! でも、まだ全然です」
相沢「その自覚があるなら大丈夫」
澪「前より、先に気づけることが増えました」
三浦「うれしい……」
――自分で成長したと思うところはありますか?
三浦「前は“何か起きたらどうしよう”って感じだったんですけど、今は“起きにくくするにはどうしよう”って少し考えられるようになった気がします」
相沢「いいね」
澪「総務です」
三浦「やった、今のはかなり褒められましたよね?」
相沢「かなりだね」
三浦「うれしい……」
――では最後に、それぞれ読者の方へひとことお願いします。
相沢「読んでくださってありがとうございました。大きな出来事より、日々の中で少しずつ変わっていくものを見てもらう話だったと思います。最後まで付き合ってもらえてうれしいです」
澪「ありがとうございました。相沢さんはこれからもたぶん少し無理をします」
相沢「またそれ言う」
澪「なので、これからも周りで備えます」
三浦「私も備えます!」
相沢「心強いなあ」
三浦「あの、じゃあ最後にひとつだけいいですか?」
――どうぞ。
三浦「私、ずっと思ってたんですけど」
相沢「うん」
三浦「お二人って、結局どういう関係なんですか?」
一瞬、沈黙が落ちる。
相沢「最後にそれ聞く?」
三浦「聞きますよ! だって気になるじゃないですか!」
澪「気になっていたんですね」
三浦「なりますよ。毎日見てたらなおさら」
相沢「毎日見られてたんだ……」
三浦「見えますよ、席近いので」
――たしかに気になるところです。お二人、いかがですか?
相沢「……どういう関係、ねえ」
澪「難しいですか」
相沢「難しいというか、言葉にすると急に違う気がする」
三浦「うわ、いちばん気になる言い方」
澪「でも、わかります」
相沢「わかる?」
澪「はい」
少しだけ間があく。
澪「一緒に備える人です」
三浦「……ああ」
相沢は少しだけ目を丸くして、それから困ったように笑う。
「それ、ずるいな」
澪「そうですか」
相沢「ちゃんと合ってるから」
三浦「え、ちょっと待ってください、すごくいいです」
相沢「三浦さんが感想を挟まないで」
――相沢さんとしては?
相沢は少しだけ考えてから、澪を見る。
澪は静かに相沢を見返している。
相沢「……大事な人、かな」
三浦「うわ」
相沢「“うわ”って何」
三浦「いや、すみません、でも“うわ”です」
澪はほんの少しだけ目を細めた。
「はい」
相沢「そこで“はい”なんだ」
澪「事実なので」
相沢「便利だなあ」
澪「役立っているので」
三浦「なるほど……」
――納得しましたか?
三浦「はい。すごく」
相沢「それならよかった」
三浦「じゃあ、結婚とかに備える関係ってことで理解しました」
相沢「何でそうなるの!?」
一瞬、空気が止まる。
三浦「えっ、違うんですか!?」
相沢「違うとか違わないとか、そういう話じゃなくて」
三浦「でも“一緒に備える人”で“大事な人”なんですよね?」
相沢「言い方をまとめないで」
三浦「まとめたくなりますよ!」
澪「三浦さん」
三浦「はい」
澪「少し早いです」
三浦「早いんだ……」
相沢「そこは否定してほしかったな」
澪「否定はしていません」
相沢「そうなんだよなあ!」
――澪さん、その返しはかなり強いですね。
澪「事実ではないことは言っていません」
三浦「強い……」
相沢「助けてほしい」
三浦「いやでも、今のでだいぶわかりました」
相沢「何が」
三浦「ちゃんと先があるやつなんだなって」
相沢は何か言い返そうとして、結局言葉を飲み込む。
その横で、澪がほんの少しだけやわらかく笑った。
――最後の最後に、いいものを見せていただきました。本日はありがとうございました。
相沢「ありがとうございました」
澪「ありがとうございました」
三浦「ありがとうございました!」




