第39話 復興祭準備委員会の発足
翌日 祢古町公民館 午後2時
古い木造の公民館は、久しぶりに活気に満ちていた。軋む床板の音、開け放たれた窓から入る春風、そして様々な種族の声が混じり合う。
復興祭準備委員会の初会合が開かれた。
長テーブルを囲んで座るのは、多様な顔ぶれだった。
表の住民代表5名——商店会長の佐藤、主婦会代表の山田、青年団長の鈴木、小学校PTA会長の高橋、そして寺の住職の田中。
地下の猫人間代表5名——ミユキ、トモ、ハナ、ケン、そしてサクラ。彼らは普段、地下で隠れて暮らしている半人半猫の姿をした住民たち。
そして古代王国からの使者3名——文官のシラユキ、武官のクロタ、そして芸術家のミケランジェロ(本当にその名前らしい)。
「まず、祭りのテーマを決めましょう」
美久が司会を務める。緊張で少し声が震えているが、笑顔を保っている。
「『三界の調和』なんてどうでしょう」
佐藤会長が提案した。60代の恰幅の良い男性で、商店街の顔役だ。
「いや、もっとシンプルに『みんなの祭り』でいいんじゃないか」
地下の猫人間、ミユキが意見を述べる。彼女は猫の耳と尻尾を持つ、20代の女性の姿をしている。
「『未来への架け橋』というのは?」
シラユキが上品に提案する。
議論は和やかに進んだ。誰も対立せず、お互いの意見を尊重し合う。笑い声さえ起きている。
しかし、ユイの翻訳能力は、微かな違和感を感じ取っていた。
(みんなの心の声が...なんだか薄い?)
普通なら、もっと複雑な感情が渦巻くはずなのに、今日の参加者たちの心は妙に静かだった。まるで、感情に薄い膜がかかっているような...。
佐藤会長の心『祭りは成功させたい...でも何か忘れてる気が...』
ミユキの心『みんなと仲良くしたい...でもなぜか記憶が曖昧...』
「ユイちゃん、どうかした?」
美久が心配そうに尋ねる。
「いえ、なんでもないです」
ユイは笑顔を作ったが、心の中で小さな不安が芽生えていた。
(これは...まさか...)




