第二十四話 歓迎会
その日の夜、新しく仲間になったリョウコはなぜかモモカさんの部屋で泊まることになった。
なぜかって、リョウコにどっちがいいかを聞いたらモモカさんの部屋を選んだってことなんだけどさ。
ただ、まぁ一旦4人で作戦会議は必要だってことで、情報の整理とリョウコのスキルの確認なんかも兼ねて俺とユイの部屋に集まっていた。
料理の担当はいつものようにユイ。
リョウコが故郷の村から野菜を持ってきていたみたいで、それも使って調理するんだってさ。
「いい食材が揃うとテンション上がりますね!」
とか言ってご機嫌で料理をしている。
よく分からんが、レユニ村の野菜は結構いい物だったらしい。それを聞いたときのリョウコはなんか誇らしげだった。
実家で作ってるっていう野菜も混ざってるからだろう。
村から追い出されたとは言っても、本人にとっては大切な家族なんだろうな。
しかし、こんな子どものうちに追い出されるなんて、かわいそう……いや、考えてみたら俺も冒険者になったのはリョウコと同じぐらいの歳だったから一緒か。
「それでは、まずはリョウコちゃんのスキルの話からですかね?」
まぁ、とりあえずはそこについて整理しないと仕方がない気がするよな。
リョウコも、自分が本当にここにいていいのか?って感じでずっとキョロキョロしてるし。
「あ、あの。ボクは本当に仲間にしてもらっていいの。ですか?」
明らかに緊張しているのがわかる。
「いいんだよ。俺たちに足りないことをカバーしてもらうためなんだから。俺たちの方がお願いしたいぐらいだよ」
「でも、ボクのスキル、危ないです」
やっぱりその辺のことを気にしてるんだよな。はっきり言って、危ないっていう意味で言うと……
「大丈夫だよ。リョウコちゃん!危ないっていう話で言ったら、私のスキルの方がよっぽど危ないもん」
そうなんだよなぁ。
よっぽどかどうかは置いておいて、危なさで言うとユイのスキルだってそれほど変わらない。いや、恐ろしさっていう点で言ったら自分に向かって攻撃してくる仲間っていう方がよっぽど恐ろしい。
魔法の範囲攻撃で、仲間に被害が出る可能性があるっていうのはある意味では常識みたいなもんで、そのレベルが常識外れ……常識なのか常識外れなのかよく分かんなくなるけど、まぁそういうことなら俺たちにとっては許容範囲内だ。
「ボクのスキルよりも危ないスキル……」
「あ……怖がらないでよ!コウヘイさんがいれば全然危なくないスキルになるんだから!」
なんで、お前が誇らしそうなんだ。ユイ。
まぁ、実際は危なくないスキルになるかどうかは試してみないと分からないんだけど、安心させるのが大事そうだから、そういうことにしておこう。
「そうそう。だから、心配しないで仲間になっていいんだよ」
リョウコはまだ納得してないみたいだけど、まぁ、明日実際に戦ってみて試してみればいいだろう。
「で……、実際、リョウコのスキルはどんなものなんだ?」
「どんなもの……。ボクはそのとき頭に浮かんだ魔法を唱えるだけです。そうすれば勝手に出てきます」
「無意識で浮かぶ魔法が最大出力で出てくるスキルって感じですかね……。私たちみたいに常に同じ効果が発動するわけではなく、状況によって効果が変わりそうな気がします」
モモカさんが適切に分析してくれる。
「うーん……それは、攻撃魔法だけなのかな?」
敵を攻撃する魔法だと、確かに危険だけど、これがサポート魔法とかになれば相当使えるスキルになると思うんだけどな……。
「……ボクは、敵を攻撃するときにしか使ったことないです……」
「まだ未知数って感じなのかなぁ……」
この辺は、金が貯まったらちゃんと鑑定士に見てもらった方がいいかもしれないな。使い道が色々あるなら、俺が調整しなくても使える面があるかも知れない。
「攻撃っていうのは、どのぐらいのものなの?」
「ボクは、使ったらすぐに倒れるから……」
あー。そうだよな。自分で使った状況がどうなっているかは分からないから、自分のスキルがどういったものなのかは全く分からないってことか……。
というか、完全に魔力を使い切るスキルなんだとしたら、俺はリョウコが魔法を使う前に『平均化』して、魔法が使われた直後に戻す感じかな?
その辺のタイミングは実戦で確かめていくしかないよな……。実験するにしても危なすぎるし……。
「ボクのスキル、やっぱり危ないですか?」
「いやー、そんなことないよ。こっちがその辺は考えるから、実戦になったら、リョウコは自分の好きなように使っても構わないよ」
「ただ、使うときには必ず私たちに言うように。こっちと一緒に使うタイミングを確認してから。そうすれば、安全に使えるようになるはずです」
うん。モモカさんの言う通りだな。
こっちは、使うタイミングさえ分かっていればなんとかなる。というか、なんとかするのが俺のこのパーティーでの役目だからな。
「そろそろ食事にしますよー!」
ユイの声が部屋の中を響き渡る。
まぁ、じゃあこの後は食事をしながらだな!
今日の料理は、肉野菜炒めだってさ。
「リョウコちゃんの故郷を襲ったのが、スチューピッドベアだって聞いたので、市場で探してきたんですよ!奮発しました!」
ユイが、リョウコの村を襲った魔物と村で取れた野菜で作った肉野菜炒めらしい。
それは、リョウコは嬉しいのか……?
「襲った魔物を、守った野菜と一緒に炒めてやりました!美味しく食べましょう!」
味付けはシンプルに塩こしょうだけらしい。
肉の味や野菜の味がしっかりとあるからそれだけでもうまい。
「スチューピッドベアは火の通し方が少し難しかったんですよー!」
ユイの料理アピールだ。
「大丈夫。美味いよ」
「はい。さすがユイさんです。美味しいですよ」
俺とモモカさんは正直な感想を伝える。
マジで普通に美味い。
「リョウコちゃん、どうですか?」
「……おいしい」
その言葉にユイは満面の笑顔になる。
ユイは本当に料理褒められると嬉しそうにするよな。
「で……。実際、明日はどうやってあいつと戦うかだよな。問題は……」
あいつ。カイルのことだ。
実際、今日は戦おうという気がなかったからあんな感じだったけれど、戦おうとなったら絶対にあんな調子ではいかない。
向こうも全力で抵抗するだろう。
あいつは防備をしておくと言っていた。あいつの頭なら、実際、自分の提案が拒否される可能性も十分に考えていることだろう。
「実際、どう思う?あいつはどうしてあそこまで俺たちの状況が分かってたんだろうな?」
俺が気になってるのはそこだった。
あいつはまるで自分が見たかのように俺たちの戦い方を知っていた。あれは、どういうことだ……?
「おそらく、スキルではないかと……。実際、骸骨司令官は骸骨将軍以上に確認されている数が少なく、しかも賢いためになかなか鑑定されないことから、情報が明らかになっていないんですよね……」
モモカさんも知らないとなると、どうにも調べようがないな……。
「じゃあ、そのほかの骸骨と感覚を繋げるようなスキル……仮に『司令官』としようか。それがあるとして、どういう戦い方のパターンが考えられるかな……?」
「そうですね……。全ての骸骨のうち、我々にとって不利なタイプの魔法を全て一気にぶつけるとか、そういうことは考えられると思いますね……。それと、私だったら、私を狙うと思います」
「モモカさんを?」
「ええ。私は防御の要です。私がいなくなれば一気に私たちのパーティーは耐久力が減ります。そうなると、力押しで簡単にやられてしまいますので……」
「それは、確かにそうですね……」
となると、やっぱりどのぐらいの距離が俺の『平均化』の限界値なのかは試しておいた方がいいな。モモカさんを敵のいるところから出来るだけ離して、更に俺が守る体制にして、リョウコとユイで攻撃を仕掛けるとか、そんな感じか……?
「どちらにしても、それぞれのスキルを使用する実験は必要だと思います。きっと、また明日も8回層は骸骨の軍勢で満たされているでしょうから、それで実験してみましょう」
「そうですね。あれだけの数がいれば色々と実験もしやすいですから、それでいきましょう!」
何はともあれ、明日次第って感じだな。
というか、今日も行き当たりばったりでなんとかなったし、明日も大丈夫だろう!きっと……。
「2人とも、話は終わりました?まだまだ、食事はたくさん残ってるんですから、ここからはそれを楽しみましょう!」
それもそうだな。
リョウコの歓迎会だ!
「リョウコちゃんも気にせず食べてね!」
「うん!」
おっ。ユイへの反応が少し打ち解けた感じになってる気がする。
これから、少しは慣れていくかな?
「そうそう。俺たちはもう仲間なんだから、気にせずにな!」
「は、はい……」
え?俺にはまだ?
男女差別だ!




