第二十二話 ボクは村から追い出された
「リョウコ。お前の力は、我々にとっては危険なんだ。本当にすまないとは思うが、村から出て行ってくれないか?」
ボクが、そうお父さんから言われたのは、1週間前のことだった。
そう、ボクは突然村から追い出されてしまったんだ。
ボクの力は村にとって危険なんだって。
ボクは、出てきた魔物を倒そうと思って頑張っただけなのに。それなのに怒られちゃった。
こんな危ない子は村に置いておくわけにはいかないんだって。
ボクがいると、父さんも母さんも村にいづらくなる。だから、ボクは村から出ていくしかなかったんだ。
「リョウコ。お前の力ならきっと強い冒険者になれるはずだ。必ず、いい仲間を見つけて、新聞に載るような活躍をして、俺たちが間違ってなかったんだって思わせてくれ。な」
父さんにそんなことを言われたけど、ボクは冒険者になる意味っていうのがイマイチよく分かんない。
別に知らない人のためにこの力を使う必要もないと思うしね……。
ボクは、ユニークスキルを持ってる。村では初めてのユニークスキル持ちだって言うんで、小ちゃい頃は大事に育てられたらしい。
らしいっていうのは、もうそんな頃の記憶なんてボクには残ってないから。
ボクが物心ついたときにはもうスキルを使わないようにって父さんから厳しく言われてた。
だから、ボクはあの日、あんなすごい魔物が村を攻めて来なかったらその能力を使うこともなかったと思う。
その魔物が攻めてきたのは村を追い出される3日前のことだった。
突然現れた魔物。その魔物は、ボクたちの村が大切に育てていた農作物を荒らして、全部食べていった。
ボクは許せなかったんだ。あんな魔物がいることを許せなかった。それに、その魔物と戦う力があるはずなのに、それを使わない自分自身が……。
魔物が現れてから、村では住民が一歩も外には出ないように言われてた。
そんなに頭がよくない魔物らしくって、目の前に人間が現れなかったら襲うこともないんだって。
だけど、ボクは許せなかったんだ。父さんと母さんが一生懸命に育ててきた食べ物をアイツが食ってることを。
あれは、ボクたちが食べるために。それを街で売るために大事に大事に育てたものだったのに……。
ボクの家の畑の前にあの魔物が現れた瞬間、ボクはお父さんとお母さんが止めるのも聞かずに家を飛び出した。
でも、遅かったんだ。ボクが着いた頃には、もう全部。全部食べられてしまった。それで、ボクの中で何かがキレた。
「ふざけるな!全てを焼き尽くせ!『ボルケーノボム』!」
ボクがその魔法を使った瞬間、ボクの魔法によって生み出された火のせいで辺りは火の海になった。魔物は一瞬でその火の中で溶けていった。
けど、溶けたのは魔物だけじゃなかった。周りにある他の人の畑も巻き添えになってしまったんだ。
しかも、ボクは魔法を使った瞬間にその場に倒れてしまった。
倒れてるボクをお父さんが助けてくれて、村の人が総出で火を消して、落ち着くまでに丸一日かかったんだって。
それで、村の人が相談をしてボクには村を出ていってもらうって話になった。
ボクは村にとって魔物から救った救世主じゃなくて、辺りを火の海に変えたバケモノだったんだ。
お父さんとお母さんは、ボクが村から出て行かなくていいように必死に抵抗してくれた。
けど、みんなの意見は変えられなかった。
でも、ボクも分かったんだ。ボクは危ないって。だから、お父さんとお母さんの言った通りボクは村を出ていくことにした。
それから、1週間。自分では全然そうなるつもりはなかったけど、お父さんに言われたから、冒険者になるために街に来ていた。
一応、お父さんが数日生きるために必要な食べ物とかお金はできる限り持たせてくれたからなんとか生き延びられた。だけど、このままってわけにもいかない。
働かないと食べられない。食べられないと死ぬしかない。だけど、ボクが死んだことがお父さんとお母さんに知られたら、傷つけてしまう。だから、ボクは働くんだ。冒険者になるんだ。
冒険者になるためには何はともあれギルドに行かなきゃいけないというのは知っていた。だから、ボクはギルドへと向かった。
ボクのスキルを聞いても仲間になってくれる人はいるんだろうか。いや、そもそもボクは冒険者になれるんだろうか。
そんな不安を抱えながら、ギルドの中に入る。
うわっ。沢山の人だ。
こんなにたくさんの人、村では見たことがない……。
しかも、中に入ってみたはいいものの、何をしたらいいか分からない……。
どうしよう……そう思ってぼーっとしていると、女の人が声をかけてきた。
「どうしたの?何かお困りごと?」
ギルドの人かな?ん?でも、他の人が着ているような制服は着てないみたいだけど……。
「あ……ボク、冒険者になりたくて……あの……」
「そうなの……ちょっと私は今は手続き出来ないんだけど……ちょっと待っててね。ヒカリ先輩!ちょっといいですか?」
女の人がヒカリ先輩と呼んでいる人がこちらに近づいてくる。その人は制服を着ているから、ここの人なんだろう。
「どうしたの?モモカちゃん。あれ?骸骨将軍は倒してきたの?」
「あ……そのことはあとでご相談を……その前に、この子が冒険者登録をしたいみたいで……」
そう言って、モモカと呼ばれた女の人はボクを紹介してくれる。
「あら。可愛いお客さんね。冒険者ギルドへようこそ。私は受付をしています。ヒカリと言います。よろしく。あなたの名前は?」
「ボ、ボクはリョウコって言います。あ、あの……冒険者登録をしたいんですけど……出来ますか?」
「ええ。ここ、エーカルでは年齢や性別は関係なく冒険者登録が可能ですよ。とりあえず、こちらの書類に記入を……文字は書ける?」
ボクは静かにうなずく。文字に関しては読み書きできた方がいいとお父さんにもお母さんにも言われていて頑張って勉強したから大丈夫だ。
「そう。それなら、こちらにとりあえず記入してもらえる?名前と年齢と性別と出身地とあとスキルの記入欄があるから」
「は、はい……」
ボクは、紙をもらって、そこに必要な情報を書いていく。
リョウコ 13歳 女性 レユニ村 魔導開拓士
「はい。ありがとう。レユニ村……。ここからだいぶ離れた場所ね。確か、10日前ぐらいにスチューピッドベアが出だけれど天変地異が起きて死んだと噂の……」
スチューピッドベア。アイツのことだ。ボクが倒した魔物。天変地異っていうのは、きっとボクの魔法のことだろう。
「そう。因みに、他の街での冒険者登録はある?」
「ない、です」
村から出て初めて来た街だ。冒険者登録なんて今までしたことはない。
「そう……。初心者冒険者には、みんなダンジョンに挑戦してもらうことになってるんだけど、今、そのダンジョンで問題が発生しててね……。冒険者として仕事が出来るようになるには少し時間がかかるかもしれないんだけど……」
え……?すぐにお金がもらえるようになるんじゃないの……?それは困る……。
「ボ、ボク村に帰るわけにはいかなくて……。ボクのスキルが……」
「この、魔導開拓士ってやつね?もしかしてユニークスキル?」
ボクは黙ってうなずく。やっぱり、ユニークスキルを持ってる冒険者は珍しいのかな?
「そう……。なるほどね……。天変地異っていうのはもしかして、あなたのスキルが原因だったりしない?」
え……?いきなり言い当てられた。やっぱり、ギルドの人っていうのはそういうことはすぐにわかるのかな?
ボクは驚いて、また黙ってうなずくことしかできない。
「そう……。やっぱりそうなのね……。うーん……。村に帰るわけにはいかないからすぐに働けるようになりたいのね?」
「は、はい。ボク、なんでもするので、お金を稼ぎたいんです」
「そう。それなら別に冒険者じゃなくてもいいと思うんだけど、どうして冒険者なの?」
「お、お父さんとお母さんが、私のスキルは冒険者に向いてるだろうって。それで有名になれるだろうってそう言うから……」
ボクの言葉に女の人……ヒカリさんだっけ?は複雑そうな顔になる。
「そうなのね……。ただ、あなたのスキル、扱いが少し大変そうね。あなたの年齢ではうまく使いこなせないかも……」
すごい。なんで、この人はそんなことまでボクと少し話しただけでわかるんだろう。ギルドの人ってすごいなぁ。
「うーん……。リョウコちゃん。あなた、パーティーを組んでみるつもりはない?」
パーティー……?それって、仲間を作って誰かと一緒に冒険するってことだよね。
けど、ボクのスキルは周りの人に迷惑をかけるから……。
「ボク、ボクのスキルは……」
「分かってるって。だから、きっとあなたのスキルが役に立つようなパーティーの人たちを紹介しようと思って。そのパーティーに入れば、例のダンジョンにもすぐにでも挑めるから、すぐに冒険者として活動できるようになるの。どう?」
突然、そんなことを言われても分からない……。そりゃ、すぐに冒険者として活動はしたいけど……。
「うーん。知らない人だと怖いかな?」
そう言うと、ヒカリさんは首をかしげる。
ヒカリさんはボクのことを見つめてる。だけど、しばらくするとため息をついた。
「うーん。先に紹介した方がいいかな?モモカちゃん!ちょっと来てもらってもいい?」
モモカちゃんってさっきの女の人?
え?紹介したいパーティーってさっきの女の人のことなの……?




