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第十七話 3人でのダンジョン挑戦

 情報の確認を終えて、俺たちはダンジョンへと向かうことになった。

 モモカさんは「私のせいで旅立つのが遅れてすみません」なんて謝ってくれたけど、俺としては情報の確認ができてよかったと思っている。ユイの新しい能力まで聞けたし、それだけの時間をかけた甲斐はあった。


「人が……少ないですね……」


 ユイがダンジョンについて辺りを見回してそう話す。

 確かに。人はだいぶ少なくなっている。一昨日の半分以下、もしかすると2割ぐらいになっているかもしれない。


「勇者パーティーが敗北したという情報は既に広まっていますからね……。人が減ってしまうのは無理もありません。ギルドとしては、このまま初心者用のダンジョンが使えなくなってしまうと、運営に差し支えるので、骸骨将軍(スケルトンジェネラル)討伐に関しては達成報酬をかなり増額して対応するようです。私たちが失敗すると近くの街に応援要請をすることになるかもしれないと先輩が言ってました」


「達成報酬の増額ですか!嬉しいですねコウヘイさん!」


「あぁ。俺たちが一緒の部屋に住む必要がなくなるかもな……」


 俺は思わずそんなことをつぶやく。とりあえず早いところ2人部屋から卒業したいんだよ。俺は。


「うーん。私はそんなに困ってないですけどねー」


「いやいや。ユイは自分がうるさい側だからいいかもしれないけど、俺は迷惑なんだよ!」


 こいつは自分の騒々しさが分かってないのか……。


「えー、酷い!」


 そんな俺たちのやり取りにモモカさんが笑っている。


「あ、すみません。ダンジョンの前で緊張感がなくて」


「いえ。お二人は本当に仲がいいんだなと思いまして。お二人と一緒なら、冒険が楽しくなりそうです」


「最初はすぐパーティー解散だなんて言ってたんですけどね!私は冒険楽しいですよ!今日はモモカさんもいるから倍楽しいです!」


「ありがとうございます」


 モモカさんは顔を赤くしてそう言う。俺も、まぁ同じ気持ちだ。

 ユイと2人きりっていうのも悪くはないが、やっぱりパーティーっていうのは大人数じゃないとさ。特に、前のパーティーは5人だったから、本当にそう思う。


「さて、行こうか」


 俺たちは、楽しい話を切り上げてダンジョン内へと足を踏み入れることにした。



 俺たちはとりあえず6階層突破までは問題なく進むことができた。魔物の構成自体もほとんど変わらない。別に骸骨(スケルトン)が一昨日より増えているということもなさそうだ。昨日は8階層が骸骨(スケルトン)の巣になっていたという話だから、恐ろしいのは7階層辺りからだろう。元々魔物部屋《モンスタールーム》だったところもあるし、7階層に進むときには気合を入れ直す。


「とりあえず、7階層に進む前に実験してみませんか?」


 モモカさんがそんなことを言う。

 実験というのは俺の平均化がどこまで届くのかの確認だ。

 別フロアでも問題ないなら、戦略の幅が広がるってさっき話したやつ。


「あぁ、そうですね。使うなら8階層でってことになりそうですし。とりあえず、俺たちが下に降りたら『守護者(ガーディアン)』を使ってみてください」


 俺は下に降りる前にそう伝える。

 実際に戦う時を想定した配置だ。俺とユイが下で戦い、モモカさんの防御力を借りる形にする方法。基本的に『平均化』は俺がパーティーだと認識すれば使えるから、俺の想像力次第だとは思うんだよな。


 下に降りると、俺は『平均化』を使ってみる。俺とユイと違う階層にいるモモカさんをまとめてパーティーだと考えて……うーん……どうにもうまくいく感じがしない。一応使ってみるか……よし!


 使ってみたものの、特に防御力が変化している印象がない。俺とユイの防御力が『平均化』されただけのように思える。うーん……失敗かな。


「うーん失敗ですか?別に防御力増えてないですよね?」


 ユイも俺が考えていることと同じことを言う。


「そうだな……戻るか」


 俺たちはそのまま6階層へと戻っていく。


「あ……おかえりなさい。やっぱりうまくいきませんでしたか……?」


 モモカさんは、ずっとスキルを使用して待ってくれていたようだ。


「そうですね……うまくいきませんでしたね……別の階層にいるとさすがに効果の範囲外か……」


 そうなると、俺を含めて全員は必ず同じ階層にいなければいけないということになる。

 そうなると、モモカさんのスキルの効果の範囲外で戦うことになり、モモカさんの付近に敵が集まってしまうと……。


「まぁ、でも同じ階層であれば少し遠くても効果はあるみたいだから、使えないわけじゃないですよね!」


 それはそう。実際、ここに着くまでの間に同じ階層でモモカさんの防御力を借りる形の『平均化』は試してみた。俺たち同士の距離が離れる分にはさほど問題はない。

 まぁ、この辺も距離の限界はあるのかもしれないけれど、とりあえず同じ階層で戦う分には問題なさそうだ。


「失敗を気にしてもしょうがないですよ!別に戦えないわけじゃないんだし、みんなで進みましょう!」


 こういう時のユイのポジティブさは本当にありがたいよな。


「そうですね。どうしても実験が失敗すると悪い面ばかり考えてしまいますが……。ユイさん、ありがとうございます」


 モモカさんもどちらかというと俺と同じタイプみたいだ。

 冒険者として向いてるのはどちらかというとユイみたいなタイプなんだろうな。けど、パーティーとしてはうまくバランスが取れていていい気がする。


 そのまま、俺たちは7階層を進む。7階層では少しずつ骸骨(スケルトン)の数が増えてきている。ただ、やはり骸骨(スケルトン)止まり。上位種の気配はない。7階層は一昨日俺たちが突破したし、昨日はショウも突破している。魔物の魂の量はそれなりにあっただろうから、数は増やせたけど、上位種になるまでの時間はなかったっていうところだろう。


 ここまでも難なく突破。さて、ここからが本番、ショウたちが敗れた8階層だ。


「ここで負けたら、結局勇者パーティーと同じ結末ってことですよね……。せめてここだけは突破しないとなぁ」


 ユイは、本当にショウたちのことが嫌いらしい。そこまでの対抗意識をもって取り組む以来じゃないと思うんだけど、同じようなことを繰り返し言っている。

 8階層を突破出来たら、とりあえずユイのなかでは勝ちってことになるらしい。


「いや、だから、骸骨将軍(スケルトンジェネラル)の討伐ができなかったら、依頼は達成できていないんだよ。結果が同じだったら勝ちではないだろ」


「そうかもしれませんけど、こういうのは気分ですから!」


 ユイはいつもテンションが高い。


「知りませんか?そういうの五十歩百歩っていうんですよ!百歩逃げた人より五十歩しか逃げなかった人の方が偉いんです!」


 え……?そういう意味の言葉だっけ?


「ユイさん。違いますよ。五十歩百歩は、五十歩でも百歩でも逃げたことには変わりがないという意味です。五十歩しか逃げなかった人の方が偉いという意味では……」


 モモカさんが訂正している。

 そうだよな。そういう意味だよな。


「えー?そうなんでしたっけ?えーでも、五十歩しか逃げなかった人の方が偉いと私は思うんだけどなぁ。逃げたけど、途中で思い直したわけですよね。切り替えが早い方が偉いじゃないですか!」


 言葉に文句を言ってもしょうがないよな……。


「ま、まぁとりあえず目標は一つ一つクリアしていこうって話だよな。ユイの言いたいことは分かるような気がするよ。とりあえず、8階層の突破を目指して頑張っていこう!」


 話の方向性が完全にずれてきている気がしたから、俺は何とか軌道修正。ここで、ことわざの言い回しについて議論しててもしょうがないからね。

 まぁ、緊張感がないというか、リラックスできているというか。こういう感じでダンジョンに臨んでいていいのだろうか?と疑問には思うけれど、モモカさんも笑顔が多いし、楽しくできているならいいということにしておこう。

 ただ、ここは気合を入れ直した方がいいと思う。


「頭を切り替えるぞ。行こう」


 俺の言葉と共に、俺たちは8階層へと向かった。


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