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第38話 紫苑の震え ― 守りの誓いと、優雅なる白百合

白百合女学院の校庭ベンチで、紫苑は琥珀色の瞳を輝かせて紡を見つめていた。


「紡ちゃん……お願いがあるの。

もしよかったら、白百合 桜良さくらさんに会わせてもらえないかしら?

全国に名高い白百合の花を、直接この目で見てみたいの」


紡は少し驚いた顔をしたが、すぐに柔らかく微笑んだ。


「ええ、いいわよ、しおんさん。

今、生徒会室にいるはずだから……連れて行くね」


あかりが

「私も一緒に行く!」

と元気に立ち上がり、三人で本館校舎へと向かった。

生徒会室の扉を紡が軽くノックすると、中から穏やかな声が返ってきた。

「どうぞ」

しかし部屋に入った瞬間、紫苑の息が止まった。

桜良の姿はなかった。

代わりに、長身で優雅なスレンダー美女が窓辺に立っていた。淡い藤色のセミロング髪、深い紫の瞳――紫藤 かえでだった。

そして、もう一人の少女がソファに腰掛け、すさまじい量の黄金の光粒子をまき散らしていた。明るい白髪に黄金の瞳、活発で健康的なスレンダー美女――橘 玲奈れな

楓の紫藤適性と、玲奈の橘適性(学園でも最強クラスと呼ばれる)が同時に発動しているらしく、部屋全体が濃厚な花のエネルギーで満ちていた。

紫苑の紫苑適性は、その圧倒的な力の波に直撃され、体が小刻みに震え始めた。


挿絵(By みてみん)



(なんと、日本中の乙女の憧れの2人じゃないか!?

しかし……すごい花の力……段違い……! この粒子……気を失いそう……)


紫苑の膝がガクッと崩れかけた。

激しい震えとともに、悦びにも似た熱い波が胸の奥から込み上げてくる。

乙女好きの心が、こんなにも強大な花の力を持つ二人に、思わず魅入られてしまった。


「し、しおんさん……大丈夫?」


紡が慌てて紫苑の腕を支え、あかりも心配そうに肩を抱いた。

紫苑は深呼吸をして、なんとか体勢を整え、丁寧に頭を下げた。


「はじめまして、藤ノ宮 紫苑と申します。1年生で今日転入してきました。

突然お邪魔して申し訳ありません。

紫藤 楓さん、橘 玲奈さん……お二人の花の力が、想像以上に凄まじくて……つい、震えてしまいました」


楓は静かに微笑み、玲奈は豪快に笑った。


「ふふ、元気な子ね。よろしく、紫苑ちゃん」

玲奈が立ち上がり、黄金の粒子を少し抑えながら近づいてきた。


「生徒会室は今、桜良がちょっと用事で離れてるの。温室の方に行ってるはずよ。連れて行ってあげる」


こうして四人は温室へと移動した。

学園の温室は、白百合の花が最も美しく咲き誇る特別な場所だった。

ガラス越しに差し込む午後の光の中で、一人の少女が静かに花の手入れをしていた。

黒髪ロング、紫銀の瞳。清楚で気品ある優等生美少女――白百合 桜良さくら

紫苑はその姿を見た瞬間、息を呑んだ。


(……美しい……)


優雅で、まるで完璧に磨かれた白百合の花そのもののような容姿。紫銀の瞳が静かにこちらを向いただけで、紫苑の心臓が激しく高鳴った。圧倒されるほどの美しさに、足が一瞬動かなくなった。

紡が優しく声をかけた。



挿絵(By みてみん)


「桜良さん、しおんさんを連れてきました。今日転入してきた藤ノ宮 紫苑さんです」


桜良は穏やかな優等生口調で、丁寧に微笑んだ。

「はじめまして、白百合 桜良です。よろしくお願いしますね、紫苑さん」

紫苑は慌てて深く頭を下げ、声が少し上ずりながら言った。


「は、はじめまして……! 藤ノ宮 紫苑です。

桜良さんのことは、全国の花の乙女たちの間で本当に有名で……こうして直接お会いして、圧倒されてしまいました。

あの……突然で申し訳ありませんが……」


紫苑は紫苑の蔓を自ら抑えながら、真剣な眼差しで続けた。


「私は将来、中守り人として……大守り人となる桜良さんと紡ちゃんをお守りしたいと思います。

私の紫苑の蔓で、どんな棘や乱れからも、二人を守る壁になります。

どうか……忠誠を誓わせてください」


突然の宣言に、桜良と紡は目を丸くした。

桜良が慌てて手を振る。


「え、えっと……紫苑さん、そんなに気を使わなくても……私たちはまだ、ただの生徒同士ですし……」


紡も頰を赤らめながら、


「しおんさん、ありがとう……でも、そんなに大げさに……」


二人が揃って気を使い、戸惑う様子があまりにも可愛らしく、あかりが堪えきれずにくすくすと笑い声を漏らした。


「あはっ……桜良さん、紡、二人とも真っ赤になってる!

紫苑ったら、転入初日から大守り人を守るって宣言しちゃうなんて……勢いすごいね!」


あかりの明るい笑い声が温室に響き、桜良と紡はさらに顔を赤くして俯いた。

紫苑も自分の勢いに気づいて、少し恥ずかしそうにポニーテールをいじりながら、


「も、もうっ……私、つい熱くなってしまって……」


温室に、温かな笑い声が広がった。

紫苑の蔓が、優しく三人を包み込むように淡い紫の光を放ちながら、

新しい守りの絆が、静かに芽吹き始めていた。




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