46 洋梨子と琉生の決意
琉生は懸命にクラウドファンディングで寄付を募っていたが、難航していた。洋梨子は地下シェルターの子供たちのことが心配だった。
「もうすぐ子供たちの食糧が尽きてしまう。ミサイルで亡くなった多くの地底人たちや、8人のサバイバーたちのためにもこのまま見過ごすわけにはいかないわ。かといって私たち3人では何もできないわ」
琉生は
「政府の決定に反することでもあるから、クラファンでもなかなか賛同が得られなくて、まいったな」
すると玄関で呼び鈴の音がした。
「NPOの須永春代と申しますが。地底人の子供たちの件で、お話したいことがあるのですが」
須永はまだ20代と思われる、髪の長い美女だった。
「ネットのクラファンで見て、私たちのNPOでは、政府や世間が何と言おうと地底人の子供たちを助け出し、育てていくべきだと考えています。
とりあえず大至急やらなければならないのは、子供たちにある程度の量の食事と医薬品を届けることですよね。それを用意することはできるのですが、あいにく地底ということになると届ける手段がありません」
そこで佐川が
「我々にはキャロットマシンという、地底も進むことができる特殊なコンピュータ制御の乗り物があり、こちらの洋梨子さんが既にそれを使って地底世界に行っています。それに食料などを積んだ貨物ユニットを接続させて運べると思います」
「では早速取り組みましょう。もう時間がありませんから」
洋梨子たちは須永春代のNPO団体の協力を得て何度かに分けて食料を運んだところ、中には長期にわたるシェルター生活で病気になっていたり、精神的に病んだり不安定になっている子供たちがいることが判明した。
そこで洋梨子たちはキャロットマシンには子供を5人、貨物ユニットには酸素など生存に必要なものを積み込んで地下と地上を数往復して何とか全員を救出することができた。
とりあえずNPO団体が所有しているという小さな島の大きな洞窟に退避させ、そこに船などで食料品や生活必需品を運び、須永が懇意にしている医師にボランティアで時々島に来てもらい、診察をしてもらった。
これからちゃんとした住まいも確保しなければならないし、食料費の調達、子供たちが生活し、ゆくゆくは学校に通えるようにしてあげるための法的手続きなど、数々の難題が待ち受けている。
琉生も洋梨子もクラウドファンディングだけでは資金がおぼつかないので、それぞれの研究所は売却し、彼らのための資金に充てていた。
洋梨子は
「私はこの子供たちがしっかり独立できるまではどんなに困難があっても負けないわ」
琉生も
「同感だ。私もずっと君のことを支えるからね」




