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84.エピローグ(後半)

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目を覚ますと、昔見た覚えがあるテントの中に横たわっていた。

ん?あのまま死んだと思っていたけど、まだ生きてるのか。でも、最後にログアウトってアナウンスが流れてたから死んだと思ったんだけどな…。

あっ、起き上がれる。体が軽くなってる!

俺は野戦ベッドから降りて数か月振りに自分の足で立ち上がった。

ベッドの横に置いてあった鏡に写る自分の姿を見ると、20歳くらいの姿に戻っている。どういうことだ?とりあえず状況が分からないので誰か人を探そうと声を上げた。


「誰かいますかー?」


「あっ、ようやく誠司が起きた!」


「そうみたいですね、行ってみましょう!」


俺が声を上げると懐かしい声が返ってきた。

最初に聞こえた可愛らしい声は忘れもしない、楓の声だ。

そして次に聞こえた澄んだ美しい声は椿の声だな。椿の声も出会った頃の若い声に戻っている。

楓と椿がいるってことは、やっぱり死んだのか。すると、ここが天国か!しかし、天国に軍用のテントって味気ないないな。

考え込んでいる間にテントの入り口から楓と椿が入ってきた。

楓は一番最初に会った頃と同じ10代後半位の年齢で、大日本帝国陸軍の軍服を着ていた。

椿も最初に会った歳くらいまで若返っている。椿と会うのは3年振りくらいだけど、楓に最後に会ったのは50年近く前だ。

あまりの懐かしさで泣きながら、二人を同時に抱きしめた。


「ちょっと!楓は良いけど椿はダメでしょ!」


「そうですよ、誠司、いくら久し振りでもダメです」


「あ、ごめん」


慌てて二人から離れようとしたが、二人からがっちりホールドされて動けない。


「なんて、嘘だよ。楓が死んでからなら椿と結婚しても良かったのに、最後まで楓のこと裏切らなかったね。偉いよ誠司。だけど、椿のことも考えてあげて欲しかったな」


「いやいや、だって椿は男には興味ないからそもそも結婚とか無理だろ」


「あ~、あれ本気にしてたんだ?それは、誠司が椿に変な気を起こさないための嘘だよ。ねっ、椿?」


「はい。実は私は同性愛者ではありません」


まじか、80年近く一緒にいたのにずっと男には興味がないものだと思ってた。それなら、どうして誰とも結婚しなかったのだろうか。


「椿も本当は誠司のことが好きだったんだけど、誠司は楓のものだからずっと我慢してたんだよ。だから、椿には楓より長生きできたら誠司をあげるって言ってたのに、ずっと楓に気を使って言い出さなかったんだよ」


「えっ、そうだったのか…」

    

「二人とも楓のこと裏切らなかったから、今度は椿もお嫁さんにしてもいいよ。もちろん、楓のことを蔑ろにしたら殺すけどね。椿もそれで良い?」


「ありがとうございます。社長がそれで良いなら是非そうしたいです」


「誠司もいいよね?」


「うん…。って、今度ってなに?今どういう状況なの?俺たち死んだんだよね?ここは天国なのか?」


「あっ、そうだね。誠司今こっち来たばっかりだったもんね。説明するから、とりあえずテントから出ようか」


テントから出ると第二次世界大戦中のアメリカ軍の陸軍基地の景色が広がっていた。俺たち以外にも大勢の兵士達がこの基地にはいるようだ。


「ここの景色見覚えない?」


見覚え…、第二次世界大戦中はアメリカ軍の基地には一度も行ったことなんて無いし、終戦後の合同演習や合同訓練の時には行ったけど、こんなに装備は古くなかった。それに、ここはイギリス?ノルマンディー上陸作戦前のイギリスで待機していた米軍の基地だな。あっ、分かったかも。


「もしかして、B.O.E.Lのマルチモードのロビーか?」


「正解!ここはあのゲームのロビーを再現した場所みたいで、歩いてる米兵は全員NPCみたい。そして、楓達はここから出られないようになってるの」

    

「私がこちらに来てから3年間で色々試してみましたが、ここから出ることはできませんでした。ちなみに3年と言っても時間を飛ばすことができるみたいで、体感ではここに来てから数日しか経っておりません。唯一できることと言えば、誠司の視点を覗くことだけでした。FPSで自分が離脱した後に同じチームのメンバーのプレイ視点を見れるのは覚えてますか?あれと同じように誠司の視点が見れました」


「えっ、ということは、俺が見てたものを皆で見れたってこと?それって、楓との生活とかも他の人から見られてたの!?」


「あっ、楓もこっちに来たときにそれ考えて焦ったけど、そういうのは見れないようになってたよ。ゲームの倫理規定と同じくらいのレベルだと思う」


「良かった…」


焦った、トイレとか風呂とかも皆に見られていると思ったら恥ずかしくて死ねる。


「だから楓はこっちに来てから、50年くらいずっと椿の視点で誠司のこと見てたんだけど、椿はいつも誠司のこと見てて、椿が誠司のことが大好きなのはバレバレだったよ。ちなみに誠司が映ってない時間は飛ばしてたから、体感だとこっちに来てから20年くらいかな」


「社長、恥ずかしいのでやめてください。私が20年くらい誠司を見つめてたことになるじゃないですか」


そうだったのか…。というか20年も椿と楓はから見られていたのか。そう考えると、さすがに俺も恥ずかしくなってきた。


「中心の広場に行った他のメンバーもいると思うから行ってみようよ」


「みんないるのか?」


「うん、80年前に世界を移動した人達はみんないるよ。悠斗さんや翔さんも喜ぶと思う」


広場に移動すると、ここも薄っすらとしか覚えてないが、B.O.E.Lで見覚えがある景色だった。そして、そこには悠斗や翔、藤井先輩、小川先輩、アイザック、ハーケンクロイツのメンバーも全員いた。


「誠司おそいよー。ゆっくりおいでって手紙に書いたけどさ、さすがに103歳まで生きると思わなかったよ!僕はチームから外されてたから誠司の視点も見れなかったんだから、超暇だったよ!」


アイザックだ、懐かしい。アイザックも若返っており、ナチスの総統服を着ている。


「アイザックか…、あのさ…。助けられなくて悪かった…。俺、ずっと後悔してて…」


「それさ、おあいこだって手紙にも書いたけど、僕も誠司のこと殺してたかもしれないんだから、チャラにしようよ。本当に全く怒ってないし、こうしてまた会えたんだから、これからは仲良くして欲しいな」


「ありがとう…。うん、よろしく」


「もういいか?俺も誠司と話したいんだけど」


「ああ、悠斗。ごめんごめん。皆誠司のこと待ってたもんね。僕はもういいよ」


アイザックと交代で悠斗と翔が俺の目の前まで来てくれた。二人とも久し振りに会うけど、最後に会った時はおっさんだったので違和感がある。


「最後に会ったときはおっさんだったのに、再開したら若くなってて違和感しかないな」


「俺らだって同じやで!俺なんてさっきまで103歳の誠司の姿見てたから、それこそ違和感しかないわ」

    

そうか、翔も同じチームだったから俺の視点で見てたんだよな。


「俺らの子供の様子も見れたから、結構楽しく観戦させてもらってたよ。自分の葬式を見るのはちょっと微妙な気持ちだったけど」


「あぁ、悠斗が崩御したときは最初から最後まで参列してたから、よく見れただろ?」


「うん、誰が悲しんでて誰が喜んでいるかもよく分かったよ」


そういえば、悠斗が崩御したあとは、皇族の中で色々揉めたもんな。


「悠斗、翔、俺たちにもそろそろ代わってくれよ」


「あ、すみません。どうぞ」


悠斗と翔が後ろに下がると藤井先輩と小川先輩が前に出てきた。


「藤井先輩に小川先輩、久し振りですね。元気そうで良かったです」


「死んでるのに元気ってのもおかしいけどな。それにしても、世界政府の創設見てたぞ。やったな!」


「えぇ、藤井先輩が死ぬ直前まで協力してくれたおかげですよ。ありがとうございました」


「俺なんてアイザックに序盤で殺されたから、今まですげー暇だったんだけど」


小川先輩がアイザックの方をチラッと見ると。アイザックは慌てて頭を下げていた。


「アイザックのことは許したんですか?」

    

「まぁ、こうしてここにいるわけだし、もうアイザックのことは恨んではいないけど…。誠司、おまえ遥に酷いことしてくれたな」


「あ、見てたんですね。申し訳ございませんでした!」


俺はその場で小川先輩に土下座した。


「次は許さないからな。今回だけは許してやる」


おぉ、奥さんにあんなに酷いことしたのに許してくれた。さすが小川先輩は相変わらず優しいな。


『ピコーン!セッションが終了しました。』


あっ!忘れもしない!この声!運営だ!またピコーンってことろ自分で言ってる。この時をずっと待ってたんだ、逃がさないぞ。


「運営さん!質問してもいいですか!?」


『えっ!あっ、はい。なんですか?』


やっぱり、あのドジっ子っぽい運営の女の子の声だ。


「今の俺たちの状況ってどういう状況なんですか?」


『えっと、園田さんがログアウトされたので、さっきまで皆さんが入っていたセッションはユーザーがいなくなったので終了したという状況ですね』


「セッションって、ここはゲームの中になるんですか?」


『あ、違いますよ。ゲームっぽい方が分かりやすいかと思って、こういうインターフェースにしているだけで、ゲームではないです』


「俺たちはこのあとどうなるんですか?」


『そうそう、その説明をしようと思ってたんですよ。一応ですね、皆さんのアカウントを削除しない限りは、何度セッションに参加してもこのロビーに戻るようになっているんですよ。それで、他の世界でも同じだったんですけど、何度かセッションに参加しているうちに、皆やる気がなくなって、何もしなくなってしまうんですよね。だから、ロビーに戻る度にアカウントを削除するか、次のセッションに参加するか選べるようにしましたぁ!』


何故か向こう側でドヤ顔をしている運営の人を想像してしまったが、そもそも顔があるのかも不明だな。


『あれ?ここは拍手するとか感嘆の声を上げるところですよっ!』


こいつ面倒な性格してるな…。


パチパチ パチ パチパチ


かなり控えめな拍手が少しだけ起こったがすぐに消えた。


『では、次のセッションに参加するかどうかの選択ウィンドウを表示するので、みなさんご協力ください。選ばない場合はアカウントは削除されます』


「あの、次のセッションってなんですか?あと、アカウントを削除された場合はどうなりますか?」


『次のセッションについては最初に皆さんがいた世界の1990年からスタートします。配置される国は前回のセッションで最後にいた国で、チームも皆さんが最後に所属していたチームでスタートになります。アカウントが削除された場合はこのまま消滅するだけです』


まじか。自分でアカウントの削除を希望しない限り、無限にセッションに挑み続けなければいけないのか。皆どうするのかな?


「誠司と椿は次のセッション強制参加ね。今度はスタートから3人で行動しようねっ!」

    

楓はやる気満々のようだ。もう103年も生きたからどうするか少し悩んでいたのだが強制参加が決まってしまった。


「俺は止めとくわ。いつまでも繰り返すこともできないし、人生1回で十分」


「俺ももういいかな。ここで降りとく」


「私も消滅希望です。今更新しい人生なんて始められないです」


「私ももういいかな…。やめときます」


「私も降りる。目標は達成した」


藤井先輩と小川先輩、遥、梓、梢は参加しないのか、俺も楓と椿がいなければ降りてたかもしれない。しかし、意外と皆参加しないんだな。


「誠司がやるなら、俺も参加しようかな」


「二人が参加するなら、俺も参加せぇへんっちゅう選択肢はないな」


悠斗と翔が一緒に参加してくれるのは心強い。これでかなり気が楽になった。


「僕たちも参加するよ。次は優香と二人で幸せな家庭を作ってみたい」


「みんな次もよろしくお願いね。そして、次は楓と椿とも仲良くしたいわ」


アイザックと優香にとっては前回のセッションは序盤で終わったので、願ってもないチャンスだろう。


『はい。皆さんの意思確認ができました。ありがとうございます。それではまず、消滅する皆さんお疲れ様でした』


目の前から不参加を表明した5人が突然消えた。

    

『次のセッションに参加する皆さん。ご協力ありがとうございます。それでは今から転送しまーす。楽しんで来てくださいね~』


楓と椿が同時に俺の手を取り、3人で手を繋いだ。


前回と同じように急に視界が真っ暗になり意識が遠のいていった…。



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