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73.久し振りの飲み会

日本最終日の夜には悠斗との約束どおり、俺が経営する料亭『#縁__えにし__#』に集まって悠斗と翔の3人で酒を飲んだ。


「「「乾杯!」」」


「3人で飲むのも久しぶりやね。前は誠司の壮行会のときやから1年半振りかな。そういえば、お土産のルガー、悠斗からもろたよ!見て見て!」


翔が上着の内側のガンホルダーに入れた金のルガーを見せてくれた。


「それ持ち歩いているのか。気に入ってもらえて良かったわ」


「あっ、それなら俺も持ってるよ」


今度は悠斗も上着を捲ってガンホルダーに入れた金のルガーを見せてくれた。


「おぉ、おまえらそんなにルガー好きだったっけ?」


「前はそんなに好きじゃなかったけど、グリップに菊花紋付けたら金のルガーに品が出て、かなりカッコよくなったよ」


悠斗がガンホルダーからルガーを取り出してグリップを見せてきた。


「おお!かっこええ!俺もそれにしたい!」


翔が悠斗のルガーを取り上げて、こっそり自分のルガーと交換しようとしている。


「おいおい、そこってプロイセン王国の国章が入ってなかったか?」


「入ってたけど、天皇が持つんだからそこはやっぱり菊花紋かと思って」


そう言いながら悠斗は翔から自分のルガーを取り返した。


「まぁ、マンシュタイン元帥に見られることはないから良いけどさ。そういえば、皇太子様は大きくなったか?」


「うん、この前1歳になったばかりだよ。あっ、誕生日プレゼントわざわざポーランドから送ってくれて、ありがとうね」


「あぁ、イタリア製の珍しいオルゴール見つけたから、子供なら喜ぶかと思ったけど、1歳ならまだ早かったかな」


「さすがに、自分では巻けないけど、音出してあげたら喜んで聴いてるよ」


「それは良かった。何か面白いの見つけたらまた送るよ」


「ありがとう。翔のとこは出産予定日いつだっけ?」


「うちは来月だよ。初めての子供だから緊張する」


「そっかぁ、おまえら二人ともお父さんか~。あ、そうだ。能力って子供には遺伝しないのかな?悠斗のとこはどう?」


「まだまともに言葉も話せないから分からないな~。でも、この能力使えるなら使い方を間違えないようにしっかりと教育しないと大変なことになりそうだ。まぁ、根拠はないけど、おそらく遺伝するようなものではないと思うから、しばらくは様子見かな」

    

もし遺伝するとしたら、世の中大変なことになるだろう。俺たちの子孫が代々能力を受継いで世界を支配して、子孫の誰かが能力を悪用するようになり、能力者同士が戦争をするというような未来が想像できる。ん?よく考えたらそれって今と変わらないか。何れにしても、俺たちの子孫には能力がなくても良いから、平穏に過ごしてもらいたいな。


「ところで、誠司、今回は楓ちゃんも連れて行くんだって?」


俺がこれから話そうと思ってたのに悠斗は既に知っていたみたいだ。


「うん、これ以上楓を放置すると強硬手段を取られそうだから、前よりは安全になったし今回は連れて行くことになったよ。それにしても情報が早いな」


今回楓を連れて行く件は俺からは陸軍の少数にしかまだ話していなかった。


「あぁ、うちの嫁と楓ちゃん友達だから、しばらく会えなくなるって挨拶に来てたよって嫁から聞いたんだよね」


皇后と友人になったって楓から聞いたときは、楓のコミュ力の高さに驚いたのを思い出した。


「なるほど、皇后様はお元気なのか?」


「うん、早く二人目が欲しいって毎日言ってるよ。様とか付けなくても大丈夫だよ。俺の嫁だし」

    

「いやいや、悠斗は元々一般人だけど、皇后様は本物の皇族だから敬意を持たないとな。でも、嫁の実家からも子供のことは色々言われてるんだろ?天皇も大変だな」


天皇は代々直系じゃなくてはいけないので、万が一のために男の子が数人いると保険になるので、できるだけ子を作るように宮内庁からも言われているらしい。


「まぁね。まさかこんなことで苦労するとは俺も思わなかったよ。楓ちゃんの実家からは何も言って来ないの?」


「うちは楓の親とは職場が一緒だから、逆に普段しょっちゅう顔を合わせてるから家の話はあまりしないな。母方の実家からは楓が色々言われるみたいだけど、あの性格だから聞き流してるみたいだよ。翔は嫁の実家とうまく言ってるのか?」


「今のところはね。けど、嫁が一人娘だから実家を継ぐのに男の子を産めって父親から言われてて、男の子じゃなかったらどうしようって少しノイローゼ気味かな。うちは、こっちに両親いないから子供に嫁の実家を継がせるのは、結婚する条件だったから良いんだけど、もし女の子が産まれてきたら、がっかりされそうで、嫁も産まれてきた子も可愛そうかなって思うよ」


「もし女の子だったら、その分も翔が愛情を注いであげれば問題ないだろ。翔の嫁も美人だから娘だったらきっと可愛くなると思うぞ」


「そうだな。そう言われてみると女の子が生まれてくるのも楽しみだな」

    

「嫁の実家って江戸時代から続く大阪の豪商の家系でしょ?男だったら嫁の親に子供取られて商売の英才教育されそうだな。うちは義兄がいるからその辺は心配なくて助かったよ。あ、そうそう、突然なんだけど、今度ヨーロッパから戻ってきたら俺は陸軍大臣辞めようと思うんだけど、次の大臣は木村元帥でいいかな?」


「え?何で辞めるん?むしろ帰ってきたらまた総理大臣交代して欲しいんやけど」


翔が立ち上がって抗議してきた。交代で総理やるって約束していたのを今頃思い出した。


「いや、楓が仕事辞めて欲しいって言うんだけど、さすがにニートはまずいだろ?だから、大臣は辞めるけど陸軍だけは続けるってことで折り合いをつけたんだよね」


「えーっ!勘弁してよー!俺もあんまり働きたくないんだから総理大臣交代してよー」


「いやいや、陸軍大臣だって大変なのに、また総理大臣なんてやったら楓に監禁されちゃうよ」


これだけは譲れないので、翔に断固として拒否の姿勢を示しておかなければいけない。


「二人ともそういうなら、そろそろ普通の選挙で選んだ総理大臣立てたら良いんじゃない?」


俺と翔の不毛な争いに発展する前に悠斗が折衝案を出してきた。


「あっ、それ良いじゃん。そしたら俺は総理大臣を辞めて海軍大臣だけにしようかな」


「たしかに誰が総理大臣になっても、俺らにとって害になりそうなら、能力で抑えれば良いだけだし、それで良いかもな」


「じゃあ、誠司がドイツ行っとる間に翔と俺で準備しておくから、気兼ねなくドイツに行ってきてよ」

    

「うん、頼むわ。我が家の家庭円満のために!じゃあ、今回のヨーロッパが陸軍大臣最後の仕事になるから、しっかり勤めを果たしてくるかな!」


そのあと俺たちは仕事やプライベートで、この1年半にあったことをお互いに報告して、夜の12時頃に解散した。

悠斗達と飲むのは久し振りだったから、物足りない感じもあったが、警備の問題もあるからそのまま料亭に泊まることはできなかった。


翌日の朝は軽く二日酔いだったが、眠たい目をなんとかこじ開けて、飛行場に向かい、楓と椿と一緒にドイツに戻った。

前回ヨーロッパに行くときは楓にたくさん泣かれて、後ろ髪を引かれる思いでの出発になったが、今回は楓も一緒なので、若干旅行みたい気分になりヨーロッパに行くのが少し楽しみでもあった。


楓の会社の社員も何人かドイツ支社での勤務になるらしいが、軍用機に搭乗させることはできないので、飛行機に同乗せずに、後日シベリア鉄道を使って陸路でドイツまで来るとのことだった。

この時代に海外勤務をするのは極めて限られたエリートだけだったので、ドイツ支社に転勤したい社員を募ったところ、予定の10倍も集まったので梢が書類選考と面接で絞り込んで決定したらしい。

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