表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ4/20発売】悪役令嬢よ。お前はコソコソ、何をしておる?  作者: 六花きい


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/43

【第一巻発売記念SS】ギルのお誕生日プレゼント(前)

「肌寒いですね。さっきまで、汗ばむ陽気だったのに……」

「そうだな。まぁ地下だから仕方ない」


 半ば諦め混じりに溜息を吐いたレナードの隣で、パメラが小さく身を震わせる。

 抜けるような青空の下。

 学園の門を出るなり馬車を横付けされ、抵抗する間もなく中へと引き込まれたのは、わずか半刻前のこと。


 パメラとレナード、二人まとめて輸送され、着いた先はまさかのフランシス公爵邸だった。


 説明もないまま地下へと続く螺旋階段を降り、――そして今。

 壁の果てすら見えないフランシス公爵家の武器庫を前に、二人は声もなく立ち尽くしていた。


「あの、イザベラ様。先程からずっと気になっていたのですが」

「なぁに、パメラ?」

「なぜ武器庫に、我々が呼ばれたのでしょうか?」


 周囲に控える騎士達の視線が、やや痛い。

 それもそのはず、ここにいるのは公爵家に身分が遠く及ばない子爵家のレナードと、ただの平民パメラである。


 そんな二人が国内最高峰の公爵家、それも国宝級の品々がずらりと並ぶ武器庫へと足を踏み入れるなど、本来なら許されていいはずがない。


「ギル様のお誕生日に、贈り物をしたいのよ!」


 よくぞ聞いてくれましたとばかりにイザベラの頬が朱く染まり、胸の前で祈るように両手を組む。


 ギルの誕生日プレゼント選びを手伝ってほしい。

 そんな願いを口にされるが、相手は王国中の流行り廃りを日々その目で追っているイザベラである。


 有益なアドバイスなど、とてもじゃないがパメラにできるとは思えない。

 当然ながらレナードも同じ思いでいるらしく、ぎしりと身を固くした。


「ほら、わたくしたちその……こ、婚約者になったでしょう? それで先日、ギル様愛用の剣が刃こぼれしたと伺って……」


 ギルとの婚約から早一ヶ月。

 嬉しさのあまりイザベラは毎晩、自分への愛の言葉がつづられた『ギル様本(発言記録)』を読み込み、想いは膨らむばかりである。


 そんな折、『婚約者の誕生日』という胸躍る大義名分を得て、イザベラは何やら盛大なお祝い計画を進めているようだった。


「馴染みの工房で新しい剣をお造りしたいと提案したら、ギル様に『勿体ないから中古の剣で十分です』と断られてしまって」

「フランシス公爵家、馴染みの工房で……」


 パメラは思わず口元で繰り返した。

『名だたる貴族の注文しか受けない』と噂の工房で作られた剣は、一振りで郊外に民家が買えるほどである。


 イザベラは『近所のパン屋』に行くくらいの気軽さで話しているが、当然学生が稽古で使うような代物ではなく、王室御用達。


 そりゃギル様も、断るに決まってますよね……。

 しゅんと項垂れるイザベラに同情の余地はなく、パメラとレナードの視線が交差する。


「物を大切にする方だから、それなら公爵家で使っていない剣をお渡ししようと思って。剣を贈るのが一番、喜んでいただけると思うの!」


 ――これはおじいさまが若い頃、戦場で振るった剣。

 ――奥にある剣は、十年前に王家から下賜された儀礼用なのだけれど、まだまだ使えそうね。


 まつわる逸話の多さにパメラ達は言葉を失うが、気軽にあげてよいものではなさそうだ。


「イザベラ様、あの、『おじいさま』と仰いますと?」

「ええ、母方の祖父よ」

「国王陛下の妹君であらせられるお母様の……?」


 つまりは先代の国王が愛用した剣ということ――。


 駄目だ。このままでは中古と称して、国宝級の剣を渡してしまいそうだ。

 それは絶対に阻止したく、ならばこの薄汚れた剣で代替させてもらおう。


 ちょうど良さそうな剣を見つけ、すかさずパメラが手に取った。


「い、イザベラ様、こちらはどうでしょう?」

「ああ、建国記にも出てくる神殿への奉納剣ね。五十年前の大火で神殿が燃えた時、うちに避難してそのままになっているわ」

「……え?」


 煤けて一番粗末な剣を選んだつもりが、まさかの建国記……?


「そうね、幸せな結婚をされた初代国王のお話もあることだし、これにするわ!」


 小汚い剣なら大丈夫かと思ったのに……。

 撃沈したパメラ。それではと満を持して、レナードが一歩前に出た。


「イザベラ様、あの、公爵家などは分かりませんが、市井や伯爵家、子爵家レベルではその……婚約者に剣を贈るというのは、なかなかに大仰な話でして」 

「あら、そうなの?」

「ギルは学生ですし、まずは普段使いの手袋とか、ハンカチなどはいかがでしょう」

「手袋なら、もう十組ほど差し上げたわ」

「じゅ、十組……」

「ハンカチは、素材によって春夏秋冬を感じさせるものを五枚ずつよ」


 嬉々としてプレゼント予定の剣を抱きしめるイザベラ。

 慄くレナードの目の端で、ついにパメラが首を横に振った。


「レナード様、こうなったら仕方ありません。ギル様に謝りましょう」

「……ああ」


 これはもう、止められる気がしなかった。

 



いつもお読みいただき、ありがとうございます。

皆様のおかげで、本日4/20(月)本作品のコミカライズ第1巻が発売されます。

本当にありがとうございました。

発売を記念して、前後編でSSを書かせていただきました。


また連載コミカライズに合わせて、以下のとおりタイトルを変更していますのでご注意ください。


*************

『こじらせ令嬢の幸せな黒歴史 ~鈍感騎士に溺愛されるための秘密のアプローチ~』第1巻

レーベル:ぶんか社BKコミックスf様

マンガ:木箱キユ先生

https://www.amazon.co.jp/dp/4821111721


活動報告にも詳しく書かせていただきました。

お楽しみいただけますと幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ