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Scene13 夢の青年

 大きな木の下で二人はしばらく無言だった。なんとなく、気まずい。シルヴァが、彼が買ってくれたジュースをちびちびと飲んでいると、彼はやっと口を開いた。


「あのさ、名前、なんていうんだ?」


「シルヴァ。シルヴァって言います……」


 筋肉質な彼に少しビクビクしながら、シルヴァはそう言った。見た目からして魔法使いではなさそう。腰に二本の剣を下げているし。


「そっか……。なら、違うか」

「? なにがですか?」

「いや、こっちの話。そうだった。俺はニースヒール。んで、さっき一緒にいたやつが娘のメリッサさ」



「ニー……」

 思わずシルヴァは呟いた。夢の中の、白い男の子がそう呼んでいたのを思い出す。



 シルヴァがそう言ったことで、彼の目は大きく開いた。



「な、なんでその呼び方を知ってるんだ?」

「えっ、いや……。そ、その……」

「その呼び方をするのはアイツだけだったのに」

「い、いや、ホントごめんなさい。名前の最初を言っただけで……」


 シルヴァは慌てて言うものの、彼の耳には届いていそうもない。


「……お前もアイツのことを知っているのか? ……いや、そんなわけないよな……」

 独り言をブツブツ呟く彼に、シルヴァは違う話を出した。


「あ、あの。娘さん、いるんですね」


 本当はもっと話の広がることが良かったのだろうけれど、焦るシルヴァには何も思いつかなかった。


「あ、ああ。メリッサな」

「あなたと同じで、綺麗な黄緑の髪」

「うーん、俺はあんまり気に入ってないんだけどな。奥さんの髪色を継いで欲しかったぐらい」

「どうして?とても綺麗と思うけど……。優しい色だし」


 シルヴァは彼の髪を見た。綺麗で優しい髪色は太陽に照らされて輝いていた。


「ぼくの黒髪だと地味だけど、ニースヒールさんの髪色は地味でも派手でもない、ちょうどいい色だと思うよ?」

「そうか? うーん、そう言われると、あんまり悪い気はしねーなぁ。そう言ってくれてありがてーわ」

「えへへ」


 シルヴァが嬉しそうに笑うと、彼もつられてにっこり笑った。とても優しくて、暖かくて、懐かしい笑顔。


「今度暇があればメリッサと遊んでくれよ。アイツ、男勝りで友だちもあんまりいねーからよ」

「うん、いいよ! ぼくもあんまり友だちいないから、遊びたいなぁ」



 そんな話をしていると、メリッサが彼をめがけて飛びついてきた。

「パパ! 買ってきたよ! これ」


 そう言ってメリッサはポケットから小さな髪飾りを取り出した。金色に塗られたヘアゴムには、星の飾りがついていて、ユラユラ揺れては太陽の光をわずかに反射していた。


「よしよし、上手く買えたな。なら、帰るか。ナタリアも待っているだろうしな」


「うん! ママに自慢しなきゃ!」


 彼は優しくメリッサを抱っこして、立ち上がった。


「じゃあな、シルヴァくん。また会ったら声かけてくれよな」

「うん!じゃあね」



 シルヴァが大きく手を振ると、メリッサを抱えて手を振ることのできないニースヒールの代わりに、メリッサが大きく手を振った。



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