シャンタルメリュー最強の漢じゃけえ!
「おい、ギュスターブがおらんぞ」
埃まみれになったバスコがきょろきょろしている。
「さっきまでいたのにい」
マリちゃんは爆発を顔面から受け止めても平然としている。
「なるほど、腐ってもシャンタルメリュー嫡男というわけですか…」
フランシスはにやりと笑う。
お前は関係ないだろ。
「城に戻られたらまずいことになる。手分けして探すぞ!バスコとフランシス、フェリシテは城への道を、俺とマリちゃんは離宮の中を探す!」
バスコがフランシスを抱え、フェリシテと外を駆けていく。
バスコの肩に抱えられたフランシスが暖かい顔をしていたのは見ない。
マリちゃんは、すーっと深呼吸をするとフィダルゴブラッキーを床に突き立てた。
そして、そのままぺったんと床に顔をつける。
「タクミさん!ギュスターブは馬屋です!今ならまだ間に合います!」
「よし来た!」
俺は袖でマリちゃんの顔についた埃をぬぐうと手を引いて走り出す。
馬屋は離宮の裏口近くにある。
「こっちの窓から飛べばっと!」
土霊駁撃で窓、壁ごと吹き飛ばし。
マリちゃんと外に飛び出る。
穴の丁度外には馬屋があり、ギュスターブが馬を引き出したところだった。
「マリちゃん!」
「はいっ! 空気創造!」
空気が膨張して弾ける爆音がした。
その音でギュスターブが引いてきた馬は、パニックを起こし立ち上がる。
「くぅらあああああ!」
馬を放した、ギュスターブは腰の刀を抜いて俺に切りかかる。
マリちゃんがギュスターブの前に立ちふさがった。
フィダルゴブラッキーとギュスターブの刀がぶつかり火花が散る。
ギュスターブの剣閃は鋭く速いが、マリちゃんは余裕で受け流す。
シャベルと刀のリーチの差を生かし、時には遠くから岩石を飛ばし、時には近づいて膝蹴りをくらわす。
ギュスターブが刀で受け損ねた礫が、頬や肩に当たる。
「マリちゃんってこんなに強かったっけ?」
「オラニエ家当主代行。マリア・デ・フェ・オラニエの力。とくと見なさいっ!」
え。マリちゃん、オラニエ家を継ぐのはお兄さんのパトリシオじゃないの?
当主代行かあ。
道理で、強くなったわけだ。
「あはははは、今日はフィダルゴブラッキーにシャンタルメリューの血を味わっていただくとするかああ!!」
「オラニエの狂女めえ!」
ちょっとお薬飲んでるのかな・・・
「バカメッ!火山に住んでる貧乏貴族なんて目じゃないいっ!」
マリちゃんのシャベルがギュスターブの右の肩を強く突いた。
出血こそわずかだったものの、関節の継ぎ目が砕けたのだろう、ギュスターブは刀を取り落とした。
「おとなしく降伏なさいっ!」
マリちゃんがギュスターブの喉元にフィダルゴブラッキーを突き付ける。
「…か」
「なんて!?きこえません!」
マリちゃんはしつこくシャベルの先でギュスターブをつつく。
「降伏などするものかあああ!シャンタルメリューの血をなめるなあああ!」
俺の背筋がぞっとした。
この感じ、ディモンズドラゴンにあったときのような。
血の気が引くような、力の匂い。
「マリちゃんやばい引けっっ!」」
俺がマリちゃんのほうへ駆け出したその瞬間。
すさまじい熱気がギュスターブからあふれ出した。
「火蜥蜴への回帰!!」
ギュスターブの皮膚は燃え、焦げた皮膚が落ちると、赤く光る鱗が現れた。
真っ赤に燃えるギュスターブの周辺の大地が嫌な音を立ててへこんでいく。
全身が燃え、赤く光る炎の四大精霊、火蜥蜴が俺たちの目の前に立ちふさがった。




