名は体を表わすけえ
「おや今頃お帰りでしたか」
アドナイアスはナイトキャップをかぶって俺を待っていた。
「そう言うなよ」
俺は風呂に入れられふかふかのバスローブを着させられた。このイケメンルックスだから許される所業だよな。
「おや、門前で迎えを待たせておりましたのに。それを無視しておかえりになったのはどなたでしたか?」
「いや、つい」
「3時間も門前で待ちぼうけをくらった護衛がさっき帰ってきましたよ」
「すいません」
そう、帝都上空でうろうろしていた俺は、ペガサスに乗って探しにきたジルバンテに保護され、ようやく侯爵邸に戻ることができた。
「だって、格好良く飛び立っておいて戻るわけにもいけないだろ?」
「まあ、いいでしょう。明日早朝に式について打ち合わせしましょう。今日はもうお休みください」
去り際にアドナイアスは俺に聞こえるように舌打ちをした。
「ちっ、余計な手間を増やしやがって」
たぶん、明日になった式の事を言ってるんだろうな。
「おおミヒャエル様。お戻りになりましたか」
ガルバリアスはハチミツを入れた暖かいミルクを持ってきてくれた。
「ああ、心配かけたな」
「いやいや、ペガサスも久しぶりに飛べて嬉しそうでした」
いいやつだなあいつ、2時間も文字通りあちこち飛び回らせたのに。
「そういえば俺が乗ってきたペガサスって名前あんの?」
「いや、あの馬ですか。それはミヒャエル様が幼少より乗っておりましたからミヒャエル様が名づけた名前はありますが……」
「なんていうの?」
「ご…き…まる」
「何?」
「ごうりき…ゴニョ…まるです」
「はい?」
「…剛力ち〇ぽ丸です」
「はあっ!?」
「いや、発情中のペガサスを見て8歳のミヒャエル様が真名の契約を施されたのです」
「真名の契約?」
「名剣や城、馬などに名前をつけ、限定的ではありますが専用の加護を付与する魔法です。かなりの魔力と体力を消耗するためそうそう使えません」
「で、あのペガサスに変態的な名前をつけたと」
「…はあ」
「変えれないの?」
「もう一度真名の契約を行えば可能ですな」
「じゃあ明日やるよ」
「ジルバンテも喜ぶでしょう。しかし…」
「何?」
「ミヒャエル様が行った真名の契約は200程度ございますゆえ…」
「ぜんぶ、剛力ち〇ぽ丸とかそんな名前?」
「1月前にジルバンテの槍に凶槍ビーチク丸と名づけられていました」
「…あいつアホだろ」
てか、ジルバンテよくオッケーしたな。いや、拒否権なんてなかったのか?
「まあ、変革には時間がかかるものです、焦らずやりましょう。それよりも……」
ガルバリウスと俺は寝室の隠し扉を開け、侯爵邸に隠された地下の1室へと向かった。
「こやつの処断はいかがされますか」
大きな机の上にはガルバリウスの手によって完璧に治療された親玉こと三つ編みイケメンが縛られていた。
「こいつにはいろいろ聞きたいことがあるんだ」