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加護持ち領主の和平活動  作者: アイゼン・ジム・トンプソン
第一部 帝都動乱編
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腹八分目がええ塩梅じゃけえ

先日、初めてルビの振り方を知りました。これでようやく“漆黒の覇王剣”(ダークネスバセラード)とか“滅亡ノ光”(メギド)とかができます。アイゼンより☆

むむっ、スピーチですと。考えていけなければならないなんて、聞いてないですぞ。


「去年はルシュキ男爵が自作の詩を朗読されましたけど、素晴らしかったですわ」

フレドリカ様が目を輝かせながら、うっとりとした顔をしている。

「考えてみれば、ガルシア家は侯爵家選詩集を出版されたほどですものね。ミヒャエル様も詩を読まれますの?」

「いえ、詩は不得手で…」

「またまた、ミヒャエル様がガルシア家の城壁に書かれた詩を拝見しましたけど、まだ見ぬ恋への素直な気持ちが感じられる良い詩でしたわ」

あいつなにしてんの?過去最悪の黒歴史じゃん。


「まあっ、我ら四家が遅れたら、ほかの家の者に示しがつきませんものね」

と勝手にしゃべって、勝手に行ってしまった。

「…どないしよう」

スピーチとか。初めに言っておけよなアドナイアス。どうせ、みんな部下に作らせたカンペ読んでるんだろ。


皇帝一族が座ると思しき机が豪華な絵画の下にあり、手前に二列の長く大きな机が並んでいる。ぱっと見たところ北方と南方の貴族で分かれているらしい。

「ガルシア侯爵様、お席にご案内いたします」

渋い執事さんが俺を南方貴族の席に案内してくれた。もちろん一番前で…


「今夜、帝国に新たな貴族が加わった。ガルシア家を支え、帝国をさらに発展させる人間だと思っておる…」

シモン様が俺を褒めちぎるスピーチをしている間、俺は自分のスピーチを考えていた。


ええと、はじめましてガルシア・デ・トールバルド・ミヒャエルです☆好きなものはシカの冷製、嫌いなものは生の玉ねぎですっ。恋人は…ええと募集中です。けど、モグラ娘と火炎娘は勘弁かな?かな?


…無理。よろしくだぴょんって言っておこう。ミヒャエルの性格なら大丈夫だろう。


「では、ガルシア侯爵」

拍手、俺は起立し周りを見渡す。火炎娘と目が合う。気まずい。


「ご紹介いただきました、ガルシア・デ・トールバルド・ミヒャエルです…」


その時、俺の口が勝手に動いた。感情を抑えきれなかったとかではない。俺の意識など無関係に、俺の口が言葉を発したのだ。


「まず言っておきますが、家柄や己の分をわきまえない貴族が多すぎます、秩序を乱す者がのさばっている」


俺の体が勝手に動き、広間を見渡した。グロリアーナ、フェリシテさんが怯えた顔で俯いている。いや、フェリシテさんは別にいいんだけど。グロリアーナ、お前はもっと反省しろ。


「本日より私は帝国に蔓延する不正義や悪意を決して許しません。異議のある方はガルシア家がお相手いたしましょう。決闘でも暗殺でも勝手にされるがよろしい」


ざわ、ざわ…


貴族たちは俺を見て恐怖の表情を浮かべている。中には、震えながら乾杯前のグラスを飲み干した貴族もいる。


「…以上です」


俺は自由になった口を体をさすりながら席に着く。サンダリオがにやにやしながらこちらを見ている。



なんだ今のは?俺の中に潜む第二の人格か?それとも、操られているのか?でも、宮殿でガルシア侯爵の加護を持つ俺がそうそう操られることなんてあるのか?



「おほん。では、乾杯」


しばらく呆然としていた陛下の合図で乾杯と談笑(俺の話が9割)が始まった。


「いやあ、さすがはミヒャエル殿」


俺の隣にいたバスコさんが声をかけてくれた。


「気を使わないでください、俺だって言い終わってからやりすぎたと思ったんですから」


「ふむ、貴族の多くを敵に回したのは間違いないだろうが…。それでも、代々武門の加護を持つ我らやカリンブルッシェン男爵のような頑固一徹な男はあなたを認めたようだな」


バスコさんの目線を追っていくと、牛を手刀で叩き殺せそうな中年男性が前菜をすっ飛ばして肉だけをむさぼり食っていた。体が大きく、手に持っているナイフとフォークが子供の玩具にしか見えない。なんか、アメフトしてるお父さんが3歳の娘シェリー(仮)とおままごとしてるみたいな感じ…


「うわっ」


恐ろしい眼力と目が合いあわててバスコさんの方に向き直る。


「あれで認められたんでしょうか」


「ええ、あの人は機嫌が良いとひたすらに肉ばかり食べるのですよ。それに、ご覧なさい、お酒が全然減っていないでしょう?機嫌が悪いときはそれこそ浴びるように飲みますからね」


「へえ…」



俺の隣にいた貴族が声をかけてきた。


「それはそうと、ミヒャエル様は健啖家でいらっしゃいますな」


「へっ?」


「前菜からそんなに召し上がると、デザートが入りませんよ?」


俺は出てきた皿の上を全部食べていた。1皿、1皿の量は少ないので、やっぱり貴族なんだなと思ったのだ。


「さっきの、魚ってメインディッシュじゃないんですか?」


「まさか、貴族には肉類が食べられないものもおりますからな、晩餐会には30皿程度は用意されます。食べたいものだけ食べて、後は残すというのが通常です」


もったいない。俺はできうる限りすべての皿に手をつけることに決めた。


「…うぷ」


俺は4皿目のメインディッシュを見て、胃からこみあがってきたものを飲み下した。


「肉ってこんなに脂が多いんだな」


見た目はサシのない赤身なのに噛めば噛むほど胃を刺激する脂が染み出してくる。


「ガルシア殿無理はなさらない方が…」


さっきの貴族が俺の方を心配そうに見ている。


「いやいや、まだ八分目ですから」


「腹八分目とも言いますぞ?」


さっきから、貴族たちは食事などしないで会話に夢中になっている。しかし、俺に話しかけてくるのは目の前のバスコさんとこの貴族だけだ。


「ところで、ガルシア殿は先日錬金術師が発見したという新金属についてどう思われますかな?私としては北方貴族に先駆けて、量産に持ち込むべきだと思いますがね」


俺は肉を飲み下すと。わんこそばのように次の白身のフライが置かれた。


「なんですか?」


「おや、ご存じありませんでしたか。実はその製法を我が家が秘密裏に開発いたしましね。ガルシア様に是非先んじてお教えしたいと思いまして」


「ガルシア家に鍛冶向けの加護はありませんよ」


「いや、これからは加護に頼らない領地運営を始めなければなりませんよ。加護で量産した安い商品を遠くから運んでくるよりも、少々値段が張っても近くの商品の方が結局は安くついたりしますからな」


「はあ…」



一旦この貴族を聞き流すことにして俺は深呼吸すると周りを見渡した。みんな皿にはほとんど手をつけていない。もったいない。貴族だからって食べ物を粗末にすると罰が当たるぞ。


「ん。あれ?」


南方貴族の一番隅の席で黒いドレスを着た女性が座っている。黒い髪ととび色の瞳、唇には黒い唇を塗っている。しかし、俺が注目したのは彼女の目の前に置かれた皿についてだった。


「あの、あの人の皿の上に載っているのはなんですか?」


俺が未だに、新金属の話を続けている貴族が面倒くさそうに話した。


「ああ、サンスーシ子爵の水食みずじきですな。まあ、あの人に関わらない方がよろしい」


「どうして?水食ってなんですか?」


貴族はあからさまにいやそうな顔をした。


「食事中にする話ではありませんよ」


それ以来、貴族はしゃべるのをやめてしまった。



「…食べたのに、食べた気がしなかった」


晩餐会が終わり、迎えに来た馬車に乗り込んだ。




「あれだけ召し上がっておいて、それはないでしょう」


馬車の中にはアドナイアスが腕組みをして俺を睨んでいた。


「…あれっ、馬車を間違えちゃったかなー」


出ようとする俺の腕をつかんで、引きずり込む。


「間違えてはいませんよ。お坐りなさい」


アドナイアスは手に持った杖をバチバチ言わせながら、俺の肩を叩いた。


「アドナイアスさん?」


バチバチ鳴る杖を顔の前に近づけた。


「戻れ!ベルドゥダム」


「へ?」



俺の袖から双頭の黄金蛇が滑りでて、アドナイアスの掌に巻きついた。あの犬がどうなったのかは聞かないことにした。


「あなたを一人で放ったらかしにするはずないでしょう?」


「…ですよね。」


きっと、あいつは護衛目的というよりも盗聴目的でベルドゥダムを仕込んだんだろうな。


「じゃあ、話を聞いてたよね」


「ええ、まあ、シャンタルメリュー伯爵やらなんやら話が急すぎて驚きましたけどね」


「そうなんだ、それで…」


アドナイアスは手で俺の話を遮った。


「あれは法術です」


「やっぱりか…、でもそんなに簡単に出来るもんなの?その、加護的な意味で」


アドナイアスは苦い顔をする。


「…おかげで王子の居場所に検討がつきました。ムンディー子爵の所にいる可能性があります」


ムンディー?誰だっけ?


「王子が帝都に?」


「ええ、間違いありません。私もガルシア家の加護について熟知しているわけではありませんが、当主には精神攻撃、精神魔法無効の加護がついているはずです。ミヒャエル様の体を操った術も同様の加護で防げたはずなのです」


あの、モグラ娘を撃退したときのか?


「あれは誘惑術の初歩です。これは私の考えですが、王子は魂魄交換を行う前に自らの体に操作術をかけたのでしょう。もともと、魂魄交感と同じく体を乗っ取る術は相当の力量差が必要になる術です。しかし、自らにかけることは難しいことはありません」


「ふうん、じゃああの場所にいたってことか?」


「それはなんとも。これも私の考えですが、シドリアス・ムンディー子爵があなたに差し出した飲み物に魔術を発動する媒体が入っていたのでしょう」


あれか、あのおいしいやつ。


「それが、ムンディー子爵の所にいるって根拠か」


「ええ、それにガルシア侯爵領の隣にはムンディー子爵領があります。あの男と予め密約でも交わしていたのでしょう」


「密約?」


「王子が城を逃げ出したとき、魂魄交換に必要な魔法具やお気に入りの剣、少なくない宝石を持ち出していました。でも、どうでしょうその日、あなたに出会わなかったとしたら?」



ムンディー子爵の屋敷についた。御者が門番となにやらモメている。


「王子はもともと魂魄交換を行うつもりだったのか?」


「恐らく、そして、その相手もムンディー子爵が用意していたのでしょうね」


「でもでもでも、相手って加護がないか、同じ加護を持っていなくちゃいけないんだろ?王子と同じ加護を持った人間なんているのか?」


ムンディー子爵の屋敷の門が空いた。


「帝国にはいません」


「?」


「恐らく、ムンディー子爵は何らかの方法でタクミ殿と同じく異世界の人間を保護していたのでしょう」



「なんですと!?」

なんか20時更新ってガキだよね。センスない。と友達に言われたので明日より。朝の8時に更新します。もし、タイミングが悪いとかの意見があれば戻します。

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