捜査本部(2)
捜査会議室では、既に到着していた大島班が椅子に座っていた。
そこに、大林班と桐谷班の捜査員も駆けつけて椅子に座っていた。
そして、最後に来たのは松野班だった。
「ようし、揃ったな。それでは、捜査会議を始める」
本部長である警部がそう叫んだ。そして、
「それじゃ…… 大島班から、調べて来た事を発表して貰おうか」
そう指示が飛ぶと、大島警部補が立ち上がった。そして、事件を調べた結果を報告し始めたのである。
それを聞きながら、ホワイトボードに情報を書き込む書記の役目の警部の姿があった。
そして、最後に桐谷班の情報が終わった時、三人の被害者の写真の下には、各々からの矢印が引かれていた。そして、そこに一枚の写真が貼られたのである。そして、
「松野警部補からの報告を……」
本部長がそう言うと、目の前に居た松野が立ち上がった。
「我々が調べたのは、三件の事件現場から採取された指紋。それを過去の事件から前科がある者ではないかを調べました。すると、やはり睨んだ通り、容疑者には前科がありました。
それは、二年前の事件で、容疑は強盗です。刃物を持ってコンビニエンスストアに強盗に入ったのですが、その時、店員に取り押さえられ逮捕に至っています。
容疑者の名前は『小松清』。年齢は三十二歳で会社員。今は、行方を暗ましています。それも三週間ほど前からで、桐谷警部補が調べているホステス殺人事件の数日前だと思われます。
小松は、某商社の営業をやっていまして、大林警部補が調べていた主婦殺人の被害者である琴野幸恵さん。その旦那と同じ職場でした。そこで幸恵さんと出会い、大林警部補の調べた通り不倫へと発展したのです。ただし、その前には、殺されたホステスの西野麗華とも交際していました。言わば二股…… いや、その時、もう一人の女性とも交際していたのです。それが、今回の事件である公園での被害者である中村聡子さんです。
でも、この三人の被害者には共通点がありました。それは、三人とも複数の男性と交際をしていると言う事です。琴野幸恵さんは、旦那と容疑者の二人ですが、他の被害者は容疑者以外にも交際していた男性が居ました。
それともう一つ…… 容疑者は、気の弱い性格で被害者の三人にお金を貢いでいます。琴野幸恵さんにはお金を貸すと言った事になっていますが、他の二人には、贈り物や現金と言った形で、貢いでいました。それまでは、ここにいる各班の調べで分かっていますが、これからは初めて発表される事です」
松野は、これまでの繋がりを纏めて話をした。そして、松野自身の本題に入ったのである。
「この容疑者である小松には、別に付き合っていた女性が居ました。
その女性とは、今まで話した三人の存在が露わになった事で、既に別れています。
我々が調べたのは、その別れた腹癒せに…… 小松は犯行に及んだのではないかと推測されます」
そう言い放った松野だった。しかし、その言葉に、
「ちょっといいかな……」
と言葉を掛けた竹下だった。そして疑問点を話し始めたのである。
「まあ、小松の犯行理由としては、そうかもしれないな。
しかしだ…… これだけ現場に証拠を残さずに、目撃者も出ない様な場所を選んでの犯行。そんな容疑者が…… 指紋と言った最も簡単な証拠を、それも三か所共に残すかね。それに、小松と言う男の話を聞くと、どれもが気の弱いと言う声が多い。そんな男に、この様な三つの殺人が出来るとは思わんのだが……」
首を傾げながらそう言う竹下だった。そこへ本部長が叫んだ。
「竹下警部の話は解りました。とにかく、その小松清の身柄を確保しない事には、事件の解明に繋がらないと思う。そこで」
そう言った後、管理官が立ち上がった。
「これからの捜査を言い渡す。大島班は、被害者の周りから小松の事を調べる事。そして、大林と桐谷の班は、小松の勤めていた職場の者に、小松の行きそうな所を聞き出してくれ。そして、松野班は小松の元付き合っていた女性を調べてくれ。それでは、これで捜査会議を終了する」
そう言い放つと、そこにいた刑事達が一斉に返事をした。
警察の捜査というのは、難解な事件になればなるほど、こういった会議が重要となる。ここで証拠を表に出して、それを検証していく。複数の捜査情報があれば、繋がる所も見え易くなるものである。
今回の事件も、四つの班によって、容疑者も絞られてきたのである。ここまで来れば、事件の解決も時間の問題だと誰もが思っていた。だが……。




