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二度目の人生は勇者パーティに入りません 〜裏切られた最強魔導士、今度はSランク冒険者と魔王を先に倒します〜  作者: 月代
第二章「ソロの冒険者」

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第八話 ソロのやり方

 追放から一か月。


 セラはEランク依頼を堅実に積み重ね、ルドナで

 ”仕事がきれいな新人”として認識され始めていた。


 派手さはない。

 でも報告が正確で、失敗が少ない。

 採取物の状態も良い。


 こういう評価は地味だが、後で効く。


     ◇


 この日、セラは北の森で採取を終えたあと、

 倒木の陰で短く休憩していた。


 水を飲み、魔力循環を整え、周囲の気配を

 確認する。

 ソロで生きるなら、休憩中こそ気を抜かない。


 その時、森の奥から悲鳴が聞こえた。


「っ、誰か……!」


 若い男の声。


 関わらない選択肢もある。

 ソロなら他人の失敗に毎回付き合っては

 いられない。


 ――なのに、セラの足はもう動いていた。


 声の方へ走る。


 木々の間を抜けると、見習いらしい少年が

 角兎の群れに囲まれていた。

 数は七。


「伏せて!」


 セラは返事を待たず、風刃を放つ。

 二体の進路を切り、土の突起で三体目を弾く。

 少年が反射的にしゃがむ。


 その頭上を火球が飛び、後方の個体を牽制した。


「立てる?」


「た、立てます……!」


「私の後ろ。動かないで」


 セラは半歩前へ出て、薄い障壁を展開する。

 角兎程度なら厚くする必要はない。

 薄く、広く、弾く。


 飛びかかった個体の軌道を風で逸らし、

 地面に落ちたところへ短剣。

 別の個体は土で足を取って、

 まとめて火球の爆圧で転がす。


 最後の一体を仕留め、セラは振り返る。


「怪我は」


「だ、大丈夫です……ありがとうございます!」


「採取範囲、越えてた」


「す、すみません……奥の方が多いかなって……」


 セラはため息をこらえ、短く言う。


「次からは地図の線を越えないで」


「は、はい!」


 それだけ言って立ち去ろうとすると、

 少年が慌てて呼び止めた。


「あの! お名前、聞いても……」


「セラ」


 短く答えて背を向ける。


 これ以上関わるつもりはない。

 でも胸の奥に、少しだけ不思議な感覚が残った。


 前世では、助ける余裕すらなかった。

 今はある。


 それは、悪くない変化だと思う。


     ◇


 夕方、ギルドで報告を終えると、リナが言った。


「今日、北の森で新人助けたでしょ」


 セラの手が止まる。


「……なんで知ってるんですか」


「本人が泣きそうな顔で報告に来たから」

「『灰髪の魔導士さんに助けてもらいました!』って」


 リナは楽しそうに笑う。


「セラちゃん、ちゃんと先輩してるんだね」


「……違います」


「違わないよ。助けてもらった子、

 次は気をつけると思う。そういうの大事」


 セラは返事をしない。


 でも完全には否定できなかった。


     ◇


 ソロで生きるなら、強さだけでは足りない。

 時間の使い方、金の残し方、怪我の減らし方。

 そういう地味な部分まで含めて”やり方”になる。


 前世では、強さは火力だと思っていた。

 同じ場面で同じように動けること。

 調子が悪くても崩れきらないこと。

 一回の勝ちより、十回生き残ること。


 そういう強さは地味だ。

 でも、最後まで立っているのはたいてい

 地味な方だ。


 急がない。

 でも止まらない。


 それが、この一か月でセラが作り始めた、

 自分だけの型だった。

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