ep.680 漂流の専門家と、余白の予兆
銀河スープの最後の一滴が、満足感とともに喉を通ったその時でした。拠点の外縁をパトロールしていた信者チームが、何やら巨大な「網」をずりずりと引きずりながら戻ってきました。
「咲姫様!遺跡の湿地帯で、キノコと一体化して動かなくなっていた『何か』を捕獲しました!」
「にゃうにゃあ?拾い物なら、かまど材以外は……おや、これはいい『撮れ高』の匂いがするのですー!!」
咲姫がレンズを向けると、網の中には紫色の胞子を撒き散らし、全身が苔に覆われた男が丸まっていました。彼はこの星に数年前、勝手に「菌類の理想郷」を作ろうとして遭難していた狂気の菌類デザイナー、ナットクリスタでした。
「……ふむ。少々湿気が足りないが、このスープの香りは……私の菌糸を踊らせるに相応しい『土壌』だ。……採用してやろう、この私を」
「素晴らしいのです!自給自足の野生専門家!これぞ現地採用の醍醐味なのですー!!」
さらに、その背後のブッシュを凄まじい「張り手」でなぎ倒し、巨大な廻しを締めた巨躯が現れました。元力士にして、この星の別のエリアで最強の土俵(建築物)を模索していた雷電です。その横には、泥まみれのジャージで時間を計測するハヤテの姿もありました。
「がははは!咲姫の監督、久しぶりじゃないか。この星の地盤、なかなか『押し甲斐』がありそうで作庭(建築)の血が騒ぐぜ」
「雷電さん!あなたの張り手があれば、この拠点は銀河一の要塞になるのです!!」
新たな(野生の)ピースが揃う中、咲姫の視線は一人、震えながら器を持つネギ新人に注がれました。
「さて、ネギ新人君。今のあなたは時給15NkQの『余白(伸びしろ)』でも、この野生の専門家たちの技術に触れることで、そのスカスカな魂に銀河の真理が書き込まれていくのです!」
「僕の……余白……。なんだか、雷電さんの張り手の音を聞くたびに、頭の中の数字が『22』になりたがって暴れている気がします……」
ネギ新人の掌に浮かぶ「15」という数字が、雷電の踏む四股の振動に共鳴し、一瞬だけノイズのように天文学的な桁数へ跳ね上がりました。
「ひ、ひぎィィィ!今、あいつの余白から『破産』の匂いがしたニャ!咲姫様、あんなインフレ予備軍を雷電さんたちと組ませたら、僕の胃と予算が爆発するニャー!!」
猫二の絶叫が響く中、咲姫は確信しました。火、出汁(石長族)、香味(遺跡)、そして「建築(雷電)」と「熟成」。役者は揃った。銀河版エトスフェリア、真の開拓がここから幕を開けるのです。
【今回のまとめ】
現地採用:ナットクリスタ(菌類)・雷電(建築横綱)・ハヤテ(隠密移動)が合流。
ネギ新人の状態:時給15NkQ。雷電の「振動」によって、魂の「余白」が刺激され始めている。
猫二:新規雇用の給与計算(と将来のインフレへの恐怖)でパニック。
腕が疲れてきたので、これ以降の更新が不定期になります。




