ep.677 哲学する石と、黄金の雫
「ひ、ひぎィィィ!もう許してほしいニャ……。僕はただ、かまどの石が欲しかっただけなんだニャ……」
猫二は、数時間に及ぶ「石長族」の経済哲学講義により、耳が裏返るほど衰弱していました。しかし、その背後には獲物を狙う獣のような目をした怪獣チームが、咲姫の「撮れ高を確保せよ」という厳命を胸に、いつでも岩を担ぎ上げる準備を整えています。
「……ふむ。貴様のその、追い詰められた末の『空虚な瞳』。……嫌いではないぞ、小僧。真理というものは、常に無一文の絶望の中に宿るものだ」
「もう真理とかいいから、拠点に連れて行かせてほしいニャ……。あ、撮影スタッフさん!僕の魂が抜けた瞬間をスローで撮るんじゃないニャ!!」
石長族の岩が、ようやく重い腰(というか地層)を上げたその時、岩の底から見たこともない琥珀色の液体が染み出しているのを猫二が見つけました。
「……?なんだニャこれ。すごく、深い香りがするニャ……」
「ほう、目が高いな。それは私の『熟成された沈黙』、すなわち数千年の地圧が生んだ【銀河の古式出汁】だ。石の隙間に溜まった大気の精髄が、私の体温で煮詰まったものよ。これを使えば、どんな腐った肉でも神の供物へと変わるだろう」
「出汁!?これ、咲姫様が言ってたスープに最高じゃないかニャ!怪獣共!岩を担ぐついでに、この出汁も一滴残らず回収するんだニャ!!」
猫二の「総務部長」としての嗅覚が、これが生存(と減給回避)の鍵だと告げていました。怪獣たちが唸り声を上げ、巨岩と出汁の瓶を強引に担ぎ上げます。
「おい、揺らすな!私の哲学が濁るだろうが!……おい小僧、運んでいる間、次は『無形資産の減価償却』について語ってやろう」
「ひぎィィィ!拠点に着くまでに僕の脳細胞が死滅するニャーー!!」
撮影スタッフたちは、説教を垂れる巨大な岩を担いでジャングルを爆走する怪獣たちと、その横で耳を塞いで泣き叫ぶ猫二という「銀河級のシュール映像」を、歓喜と共に記録し続けました。
一方、拠点ではうさちぁんがグラスを回しながら、モニターを指差します。
「あはは、あの岩、いいお出汁持ってるじゃない。果林、あのお出汁が届いたら、真っ先に私のおつまみ用にとっておいてね」
「かしこまりました。猫二様のNkQから『出汁採取手数料』を引いておけば、実質タダで手に入りますね」
「果林も最高なのですー!!」
狂気のかまどを前に、咲姫が勝ち誇ったように叫びました。
【現在の状況】
猫二班:喋る岩(出汁付き)を担いで拠点へ向かって猛ダッシュ中。説教は継続中。
探索班:ネギ新人たちが香味植物の群れ(と追っ手のもやし)を引き連れて、逆方向から拠点へ接近中。
拠点:「火」と「お湯」は準備完了。あとは具材(ネギ新人)と出汁(猫二)を鍋に放り込むだけ。
【後書き】
猫二が出汁を採ってきたよ!




