ep.673 咆哮の採集、石長族の説教
「ひぎィィィ!ど、ドローンだけじゃなくて、生身の人間まで僕の絶叫を撮りに来てるニャ!?労働基準法はどうなってるんだニャー!!」
惑星「はい・よー」のジャングル深く。猫二は、背後にぴったりと張り付く撮影スタッフたちの巨大なレンズに追い詰められながら、涙目で叫んでいました。横で丸太のような腕を振るうのは、怪獣チームの面々。彼らは咲姫から「最高のかまど材を拾ってくるまで戻るべからず」という厳命を受け、殺気立ったやる気に満ち溢れています。
一方、数キロ離れた開拓拠点(広場)では、穏やかな時間が流れていました。
「あはは、見てよ咲姫。猫二、鼻水まで垂らして逃げ回ってるよぉ。……あ、果林、おかわり」
うさちぁんは、メイド隊が用意した柔らかなソファに腰掛け、のんびりとモニターを眺めていました。その隣では、専属の果林が手際よく新しい酒を注ぎ、周辺で採集されたばかりの果実を小皿に並べています。
「はい、うさちぁん様。あまり飲みすぎると、後で咲姫様の『情熱的な会議』に寝坊してしまいますよ」
「うさちぁん、それは『演出』なのです!彼の必死な形相こそが、視聴者の心に『生きる力』を刻むのですー!!」
咲姫はサヤから受け取った紅茶を一口飲み、モニターに映し出される猫二の「受難」を法悦の表情で凝視していました。その情熱はすでに狂気の域に達しています。
その時、現場のモニター越しに異変が起こります。
「……やかましい。昼寝の邪魔をするな、小僧」
「ひぎィ!?岩が喋ったニャー!!」
猫二が「手頃な石」だと思って蹴飛ばそうとした苔むした岩が、突如として巨大な目を開けました。それは地質と一体化した知性体「石長族」。
「採集だと?担ぐだと?貴様ら新参者の分際で、この私の『美しき沈黙』を時給いくらで買うつもりだ?ええ?」
「時給……!?いや、その、僕はただ咲姫様の指示で……」
「問答無用!働くとは、石のように重く、動かぬ覚悟を持つことだ!貴様のようなチャラついた猫に、この私を使いこなせるものか!そもそもその『NkQ』とかいう通貨、価値の裏付けは何だ!言ってみろ!」
「ひ、ひぎィィィ!岩に経済学の説教をされてるニャー!!撮るな!撮影スタッフ、僕の情けない顔を接写するんじゃないニャー!!」
スタッフたちは、猫二のパニック顔と岩の説教というシュールな絵面を逃すまいと、泥にまみれながらローアングルで追い縋ります。それを見守る怪獣チームは、「担ぎ甲斐がありそうな頑丈な岩だ……」と、説教の内容など無視して筋肉を膨らませていました。
「ふふ、あの岩、結構いいこと言うね。果林、あの岩を拠点まで運ばせたら、いい酒の肴になりそうじゃない?」
うさちぁんがグラスを傾けて笑うと、果林は淡々とタブレットを操作し、現場へ指示を飛ばします。
「そうですね、話の種にはなりそうです。……現場の撮影スタッフに追加指示。岩の『説教シーン』の尺を3分延長。猫二様のNkQ残高を、さらに『石材コンサルタント料』として差し引いておきますね」
「素晴らしいのですー!!」
拠点の穏やかな笑い声と咲姫の叫びが、絶叫の響くジャングルへと無線通信で非情に届けられていきました。
【現在の状況まとめ】
猫二班(現場):猫二・怪獣チーム・撮影スタッフ。喋る岩(石長族)に説教され中。
拠点(司令部):咲姫・うさちぁん・メイド隊(サヤ等)・騎士・餡子熊王・残りのスタッフ。優雅にモニター観賞。
探索班(別行動):ネギ新人・信者チーム。さらに奥地をマッピング中。
【後書き】
現地知生体に初遭遇です。




