ep.660 黄金の披露宴、あるいは「無限回廊を抜けた先の公開処刑」
「にゃうにゃあ!これなのです!パズルを前に絶望し、仲間同士で責任をなすりつけ合う……これこそが友情崩壊のプロセスの醍醐味なのですー!!」
天井のダクトに仕掛けられたスピーカーから、咲姫の歓喜に満ちた声が響き渡ります。目の前に立ちはだかるのは、サヨの執念がジグソーパズル化した『家族の肖像画パズル(全100万ピース)』
しかも、ピースの一つ一つが騎士の「実印」の形をしており、はめるたびにカチリと「連帯保証人・承認」の電子音が鳴り響く仕様です。
「……ふふ。……騎士、このパズルを解かなければ、我々に未来はない。だが、解けば私は社会的に死ぬ……。究極の選択だ……」
騎士が死んだ魚のような目でパズルを睨みつける中、背中の猫二が絶叫しました。
「何をもたもたしてるニャ!後ろから『真心ハーブティー』のオーガニックな香りが迫ってきてるニャー!あんな清らかなものを浴びたら、僕の魂が洗浄されて消滅しちゃうニャ!!」
その時、一行の後ろから、ひょっこりとうさちぁんが顔を出しました。その手には、いつもの酒樽。
「あはは!みんな難しく考えすぎだよぉ~♪パズルなんて、混ざっちゃえばみんな同じでしょぉ?」
うさちぁんが酒樽を魔法陣に叩きつけると、ドス黒いピンク色のアルコール蒸気が噴き出しました。物理法則を無視したその波動は、100万ピースのパズルを瞬時にドロドロの液体へと溶かし、無理やり「道」を作り出しました。
「さあ、今のうちに登っちゃえ~♪」
「助かったニャ!……って、なんだこの階段はニャ!?」
パズルが溶けた先に現れたのは、一段登るごとに「前向きな名言」がフルボリュームで流れる『自己啓発の無限階段』
猫二は「耳が腐るニャー!」と悶絶しながら、騎士の背中で暴れます。さらにその上には、極新人の設計した『時給22NkQの垂直梯子』が。登れば登るほど「成長の余地(物理的な重圧)」が増していき、騎士の黄金の筋肉が悲鳴を上げます。
「……ぐ、おおお!住宅ローンの重みに比べれば……この程度の重力、愛の囁きにも等しい……!」
騎士は執念で最後の一段を登り切り、天井のハッチを力任せに押し開けました。
「脱出ニャ!泥沼の、汚い下水のある世界へ帰還するニャーーー!!」
猫二が先陣を切ってハッチから飛び出しました。しかし、そこに待っていたのは、心地よい下水の匂いではなく――。
「「「おめでとうございまーす!!」」」
眩いばかりのスポットライト。降り注ぐレモンイエローの紙吹雪。そこは、城の最上階に位置する『巨大披露宴会場』のメインテーブルの真上でした。
「にゃうにゃああ!来たのです!最高のタイミングなのです!逃亡者が自ら断頭台……もとい、新郎新婦の席にダイブしてくるなんて、全銀河が泣くサプライズ演出なのですー!!」
目の前には、いつの間にかエプロンをウェディングドレスに着替えたサヨが、巨大な「連帯保証人・芳名録」を広げて微笑んでいます。その横では、アリスがケーキカット用の巨大なチェーンソーを構えて待っていました。
「騎士様……遅かったじゃない。さあ、まずはこの『永久家族契約書』に入刀しましょうか……?」
「騎士パパ!アリス、パパがダクトから降ってくるのをずっと計算してたんだよ♪」
着地した猫二は、豪華なウェディングケーキ(中身は極新人特製の高純度レモン堆肥)の中に顔面から突っ込み、再び「銀河一不幸な肥料」へと転落しました。
「……ふふ。……詰んだ。……これが、私の……終着駅か……」
騎士の瞳から光が消えた瞬間、咲姫のカメラが至近距離まで迫ります。
「さあ!ここで『実は私はレモンアレルギーだったんだ!』という衝撃の告白で、会場をさらなる修羅場に変えるのですー!!」
全ては咲姫の掌の上でした。




