ep.61 分けられた火
朝、ウンヌツギヘの空に、風が戻ってきた。
昨日まで止まっていた風が、島の奥へと流れ込んでいく。
「……火が、呼んでる」
咲姫が、灯壺を抱えて立ち上がる。
「この火、分けられるよ」
ぽぷらんが、しっぽで◎を描いた。
その中心に、灯壺の火がふわりと重なる。
*
島の中央、内向きに燃えていた火の輪。
その火が、ゆっくりと外へ広がりはじめた。
「火の向きが……変わってる」
瑛里華が、風の流れを読む。
「迎える火になったんだ」
孝平が、ホムラノワ号を見やる。
「この島も、火の輪になったんだよ」
*
果林が、灯壺の火を小さな皿に分ける。
それを、島のあちこちに置いていく。
「分けるって、ちょっと怖いね」
「でも、分けるからこそ、広がるんだよ」
イサリが、静かに言った。
「火は、ひとつじゃなくていい。
それぞれの場所で、それぞれの灯になればいい」
*
夕暮れ、島のあちこちに、小さな火が灯った。
それは、火の輪の火と、ウンヌツギヘの火が混ざったもの。
「……きれい」
咲姫が、灯りの間を歩く。
「誰かが来たとき、ここが“迎える場所”になるように」
孝平が、最後の皿に火を移す。
「ホムラノワ号は、火を運ぶ舟。
でも、火を“分ける”舟でもあるんだな」
ぽぷらんが、しっぽで◎を描いた。
その輪の中で、火がまたひとつ、灯った。
今回は、火を“分ける”回。
ウンヌツギヘという忘れられた場所が、
再び“迎える場所”として目を覚ます瞬間。
火の輪の火は、ただ燃え続けるだけじゃない。
誰かに分けることで、広がっていく。
そして、分けた先でもまた、誰かを迎える火になる。
ホムラノワ号は、そういう火を運ぶ舟。
そして、分ける舟でもある。
次回は、ウンヌツギヘに最初の“訪問者”が現れる回。
火に導かれてやってくる誰か――
それは、かつて火の輪を離れた者かもしれません。
それでは、また火のそばで。




