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クラフトアルケミストの異世界素材録 〜スローライフから始まる概念破壊の銀河群像劇〜  作者: モカルドルラテ(ねこちぁん)
第一部:孝平の章

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ep.60 最後の灯

島の奥、崖の下に、

ぽつんと埋もれた祠があった。


「……ここだけ、風が止まってる」


瑛里華が、髪を押さえながら言った。


「火も、息をひそめてるみたい」


咲姫が、祠の前にしゃがみこむ。



祠の中には、小さな灯壺があった。

蓋は閉じられたまま、灰に埋もれている。


「これが、“最後の灯”?」


果林が、そっと灰を払う。


「火の輪の灯壺と、形が似てる。けど……」


「封じられてる」


イサリが、壺の縁をなぞる。


「誰かが、意図的に火を閉じたんだ」



ぽぷらんが、しっぽで◎を描く。

けれど、壺は沈黙したまま。


「……開けていいのかな」


孝平が、手を伸ばしかけて止まる。


「火は、ただ灯せばいいってもんじゃない」


イサリの声が、低く響く。


「これは、“忘れるための火”かもしれない」


「でも、誰かが残したってことは――

 いつか、誰かに見つけてほしかったってことじゃない?」


咲姫が、壺に手を添える。


「だったら、今がその“いつか”かもしれない」



ぽぷらんが、もう一度◎を描いた。

今度は、火の輪の火を添えて。


壺が、かすかに揺れた。

そして、蓋が静かに開いた。


中には、ひとつの火種と、短い言葉が刻まれていた。


『この火は、誰かを守るために閉じた。

 でも、もう大丈夫。――灯していい。』


孝平が、そっと火種に手をかざす。


「……灯そう」


ホムラノワ号の灯が、もうひとつ増えた。

“最後の灯”は、消された火じゃなかった。

守るために、そっと閉じられていた火。


それを見つけて、開いて、灯す。

それが今回の役目だった。


火の輪の火は、ただ広がるだけじゃない。

ときには、誰かの記憶をそっと包み、

ときには、忘れられた場所に寄り添う。


ホムラノワ号は、そういう火も運ぶ舟。


次回は、灯を取り戻したウンヌツギヘが、

“迎える場所”として再び目を覚ます回。


それでは、また火のそばで。

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