ep.397 徳の階段と奈落の底
「にゃうにゃあ! 皆さん、最初の24時間マイニング・ダンス、お疲れ様なのです!
溜まった『徳($NkQ)』に応じて、皆さんの生活環境がスマートに更新されたのですー!!」
泥沼の上に設置された過酷なステージ。24時間不眠不休で踊り続けた新人たちの網膜に、非情な「居住レベル更新通知」がポップアップした。
■ $NkQ 居住レベル・ガイドライン(アリシア記)
Lv.0【野晒し】: 初期状態。地面のみ。雨風・泥・外気すべてをダイレクトに受ける。
Lv.1【境界】: 地面に「ブルーシート」が敷かれ、自分の領域が定義される。
Lv.2【遮蔽】: 段ボール程度の強度の「壁」が出現。プライバシーが15%ほど確保される。
Lv.3【雨除】: 待望の「屋根」が実装。ただし壁はまだ段ボール。
Lv.4【空調】: 木造の壁になり、エアコンが稼働。食事が「栄養ゼリー」から「温かいお粥」へ。
Lv.5【人権】: 映画村の一般住宅(離れ)に入居可能。ふかふかの布団が支給される。
■ 新人たちの悲喜交々
【光:期待の新星(Lv.5維持)】 「ハァ、ハァ……! 私、絶対にロイヤルまで登り詰めてみせる! 咲姫様、見ててください!」 一際熱心に、カメラ目線を絶やさず踊り続けた新人A。彼女の獲得した莫大な投げ銭により、彼女の周囲には瞬く間に「和風の美しい離れ」が召喚された。 「……さらっと。新人A様。Lv.5到達おめでとうございます。今夜は泥の上ではなく、檜の香るお部屋で休めます。お食事はネギの天ぷら御膳です」 アリシアの祝福に、Aは涙を流して喜ぶ。だが、その足元では「維持費($NkQ)」が毎秒マイニングされ続けていることに、彼女はまだ気づいていない。
【闇:油断した転落者(Lv.4 → Lv.1)】 「やったぁ、Lv.4! 屋根もあるし、もう大丈夫だよね……ちょっとだけ休憩……」 一度レベルが上がったことに安堵し、ステージの隅で1時間ほど仮眠をとった新人B。しかし、彼女が眠っている間に、アンチファンによる「逆投げ銭($NkQ売却)」が発生。 ガガガッ! という不快な機械音と共に、Bが寝ていた部屋の「壁」と「屋根」が、スマートコントラクトによって強制パージ(解体)された。 「ひっ!? 寒い! なんで!? 私の屋根は!?」 「……残念でしたね。貴女のエンゲージメント率が低下したため、資産価値が暴落しました。現在はLv.1。ブルーシートの上でお休みください」 夢から覚めた彼女を待っていたのは、冷たい雨と、ぬかるんだ地面だった。
【希望:地道な努力家(Lv.3)】 「とにかく、屋根だけは死守しなきゃ……」 派手さはないが、一歩一歩確実にステップを踏み続ける新人C。彼女の頭上には、小さな、しかし確かな「屋根」がキープされている。彼女にとって、この1メートル四方の雨除けこそが、この星系で唯一の救いだった。
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新人A(Lv.5): 天ぷらを食べながら、「明日も死ぬ気で踊らなきゃ」と、強迫観念に満ちた笑顔を見せる。
新人B(Lv.1): ブルーシートにくるまり、「次はもっと上手くやるから……捨てないで……」と画面の向こうのファンに命乞いをする。
既存メンバー(見守り中): 騎士たちは本宅の縁側で、「新人は元気があっていいな」と、お茶をすすりながら彼らを見守っている。
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「徳」の可視化、これこそが真の公平性ですね。 頑張った人には檜の部屋を、休んだ人にはブルーシートを。 スマートコントラクトは嘘をつきません。全ては自己責任、そしてファンの皆様の「愛」次第です。 新人Bさんの絶望した顔、最高に「清楚なアイドル」らしくて輝いていましたね! 次のマイニング・ダンスでは、誰が「人権」を失うのでしょうか……?
【裏話】
普通では面白くないの信念の元、咲姫っぽく壊すとこうなりました。
アイドルを目指す新人→天国に住むために地獄で徳を積む→待っているのは24時間ダンス→踊り切れば人権が得られる(足きり)→油断すると奈落に落ちる。




