USasf.36:『森の静寂のひび割れ』~ゆったり散歩と、気づけば取り囲む“異常な気配”なのだ!~
USasf.36:森の静けさが増殖する朝
森の静けさがじわじわ増殖してくる朝
ゆったり散歩と、気づけば世界のルールがズレていくのだ
森の朝は、いつも通りのんびりしていた。
木漏れ日がふわりと揺れて、薪ストーブの残り香がほわっと漂う。
「今日もお散歩するのです♪何に出会えるのかわくわくなのです♪」
咲姫がメイド服の袖をひらりと揺らしながら、今日ものんびり散歩を宣言する。
「ふにっ酒樽ぅ~いつでも一緒だよぉ~」
うさちぁんはニンジンをポリポリかじりつつ、なぜか酒樽を抱えている。
「すぅ~」
アリスは森の空気を深く吸い込み、静けさを味わう。
「……こういう日でいいんだ。毎度騒がしい事はなくていい」
猫二は執事服の袖を整えながら、平和な朝にほっと息をつく。
ふむむ。
しかし、森の静けさは静かすぎた。
鳥の声がしない。
風の音がしない。
葉の揺れる音すら、どこか遠い。
森が息を潜めている。
昨日よりも深く、重く。
ふにっ?と首をかしげるうさちぁん。
咲姫も不安げに耳を澄ます。
アリスは眉をひそめ、森の奥をじっと見つめる。
猫二は静けさの重さに背筋をぞわりとさせる。
森の奥に、昨日はなかった木が一本立っていた。
太くて、妙に背が高くて、幹の模様が人の目みたいに見える。
咲姫が近づくと、木の根がわずかに動いた。
ズズ、と土を押しのけるように。
まるで呼吸しているみたいに。
ふにっ!?と跳ねるうさちぁん。
猫二は即ツッコミを叩き込む。
いやいやいや!!
木が呼吸してんじゃねぇか!!
森の生態系どうなってんだバカ野郎!!
森の奥には、もっと増えていた。
木が密集し、昨日はなかったはずの影が地面に増えている。
影は木漏れ日の角度と合っていない。
影の形が、人の手みたいに見える。
ふむむ!?と咲姫が震える。
アリスは森の気配を読もうとするが、森の声が多すぎて判別できない。
森の奥から、音が増え始めた。
コト、コト。
コト、コト、コト。
音は方向を持たず、森全体から響いてくる。
まるで森の内部で何かが動いているような、規則的な脈動。
ふにっ!?と耳をぴくりと動かすうさちぁん。
咲姫の鈴の音が、一拍遅れて森に返ってくる。
猫二はツッコミを入れようと口を開くが、森の影が彼の声に重なった。
自分の声が二重に聞こえる。
まるで誰かが同じタイミングで同じ言葉を発しているように。
そこへカヤがヌッと現れ、影をじっと見つめる。
影の中に薬草の気配が混ざっている。
森の奥で生成される薬草の力が、影に形を与えている。
いやいやいや!!
影が薬草吸って増殖してんじゃねぇよ!!
影の概念どうなってんだバカ野郎!!
猫二が絶叫する。
わんわんが携帯メカを操作し、影の成分を分析する。
影は木の根の動きと連動している。
木の増殖、影の増殖、音の増殖。
森全体が、何かひとつの意思で動いている。
森は静かだ。
ゆったりしている。
穏やかだ。
しかし、その静けさは増殖している。
影も増殖している。
木も増殖している。
音も増殖している。
世界のルールが、少しずつズレている。
森の奥から、誰かの声がした。
誰もいないはずの場所から。
誰も知らないはずの声が。
うさちぁんが耳をぴくりと動かす。
咲姫が鈴を握りしめる。
アリスが弓を構える。
猫二が息を呑む。
わんわんがメカを構える。
カヤが影を見つめる。
森の静けさは、もう静けさではなかった。
森の朝は、ゆったりと狂気に満ちていくのだった。
森の静けさを会話文少な目に表現してみました。




