PufNsh07.定義の再構築、なのです
ホワイトホールの激流に押し出され、二人は見慣れた天井の下へと転がり落ちた。
そこは、"PufNsh01"で二人が姿を消した、咲姫の部屋だった。
「……帰ってきた、のです?」
咲姫が自分の手を見つめる。
B宇宙でぷりんのように揺らいでいた輪郭が、A宇宙の安定した物理法則に触れて、カチリと音を立てるように固定されていく。
光は直進し、闇はただの影として足元に留まっている。
「ふえぇ……目が回るよぉ。咲姫ちゃん、あたしの耳、ちゃんと二本ある? 概念になってない?」
「大丈夫なのです。ちゃんと、うさちぁんなのです」
咲姫が安心させるように微笑むが、ふと部屋の隅を見て息を呑んだ。
そこには、うさちぁんがB宇宙から「無茶」で持ち込んでしまった、逆定義の残滓が漂っていたのだ。
咲姫の部屋に置かれたティーカップの中で、紅茶が凍りつきながら熱い湯気を上げている。
A宇宙の定義と、B宇宙の逆定義が混ざり合い、局所的な「バグ」が発生していた。
「うさちぁん、これ……大変なのです。私たちのせいで、世界の輪郭が少しだけ『逆さま』になっているのです」
「えぇー! でも、あたしの手元にはちゃんと『にんじんっ』があるよぉ!」
うさちぁんが誇らしげに掲げたのは、B宇宙の「逆因果」で実った、食べても食べても減らない不思議なにんじんっだった。
彼女の強烈な欲望は、宇宙の壁さえ越えて、その「創造の理由」を現実のものにしてしまったのだ。
「……なのです。このままじゃ、世界がうさちぁんの食欲に飲み込まれてしまうのです」
咲姫は再び指先を動かす。
今度は世界を壊すためではなく、持ち帰ってしまった「余白の揺れ」を、正しく物語の中に閉じ込めるために。
"不思議の世界のうさちぁん"
みたいな名前が脳裏に浮かびました。
それに加えて、月末まであと1週間ない!→この章が生まれました。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
この次は、Interlude.となり、本日の更新はそこまでとなります。
明日からは、本編の方に戻っていきます。
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