男という生き物
大海原に出れば男という生物が女の数だけ存在するそうだ。そして男と性行為をしなければ子どもは生まれない。十五歳の時に学舎でそれを聴いた時には背筋が冷えるのを感じた。先生は真顔でハッキリと教えた。私も友人達も嘘ではないと悟った。
むしろ女しかいない私達の国は例外だそうだ。大きな霧島という島とその周辺に数十もの島々から私達の国は成り立っている。疫病と災害と政治腐敗で何度も栄枯盛衰を繰り返し、今に至る。現在は花国。
花国は十年に一回、民衆が選挙で投票して元首を決める。大統領だ。国を六十に分割する州の長官も毎年六州ずつその州の人達が選挙で選ぶ。全国にある四千村と七百町の代表者も村民や町民がそれぞれが決めた方法と期間で選ぶ。しかしこれも花国以外の四ヶ国では不思議だとされている。海の向こうに有る外国では王と貴族が血筋によって国や地域を統治している。王も貴族も子どもを生まない男達だ。
私達は女から女へと血筋が受け継がれると考えるが、血縁関係と同じくらいに地縁関係を重視する。何故なら親一人で生計を建てながら子どもを育てられるわけがないし家事も大変だからだ。しかし海の向こうでは男は女と性行為してその女が孕んで子どもを生むとその子を自分の血縁者として扱う。子どもが男ならば財産も地位も相続させる。子どもが女ならば別の男と一緒にさせて更に子どもを生ませる。これを結婚もしくは嫁ぐと言うそうだ。
つまり男は女から生まれるのだ。女は一対一の確率で男や女を生む。私には不思議に思えた。女だけではなく男も人間である。けれども体格も身体の作りも容姿も違いがあるそうだ。
逆に外国からしてみると女しかいない花国は歪に見えるようだ。花国の霧島からは太古の昔から見えない毒霧が地面から溢れ続けており、男が霧島に立ち入ると苦しみながら三日以内に絶命する。女が霧島に三ヶ月以上滞在すると身体が丈夫になり、三年も住むと男を生めなくなる。
だから霧島とその周辺で育った私達が男を生むこともなければ花国に入国しようとする男もいない。毒霧は何故か人間以外の雄には無害なので虫も動物も植物も交配して子孫を残している。一方、私達人間は十八歳になる年に海に出なければならない。そうしなければ子どもを生めないし老人しかいない状態になれば花国が滅びるからだ。
十八歳で同じ歳の仲間達と海に出る義務は有るが、好きになれる男が見つからない、見つかっても男やその仲間達が同意しなければ諦めるしかない。また、その時に失敗しても希望すれば軍が外国に連れて行ってくれる。初産ならば三十五歳まで、そうでなければ四十歳まで男と関係を持って子どもを生める。軍が護衛して身体や身分を保証する。
私の母は七人も生んだ。私は最後に生まれた。私自身は母から可愛がられているが、姉達は祖母に育てられていた。母は私が生まれるまで七回も外国に行って妊娠して生んで子どもが首や腰が据わるまで現地に滞在してから帰還した。すぐに幼い子どもを祖母に預けてまた外国に行って子どもをもうけてを繰り返していたのだ。
姉達は寂しがったし祖母は呆れた。上の姉三人は祖母を慕ってはいるが、母とは疎遠だ。下の姉三人も時折母に甘えるが祖母に懐いている。しかし誰かが沢山子どもを産まないと老人の世話が出来ないし国は滅びる。母親は開き直っている。叔母・伯母は祖母と姉達の様子をうかがっては家事や仕事を手伝っていた。叔母には子どもはいないが伯母には三人子どもがいる。私達のいとこだ。姉達は伯母の連れて来たいとこ達とよく遊んだり談笑したりしていた。私は姉達からもいとこからも伯母・叔母からも祖母からも可愛がられている。
人生とは何だろう。私はもうじき外国に行かなければならない。いろいろ思い悩むが結論は出ない。




