209.1話 その想いは世界をほんの少し揺るがして!
「ふざけんじゃねええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッッ!!!!!!!」
どうして俺ばっかりがこんな思いをしなきゃいけない!
どうして俺ばっかりが、苦渋を飲まされなきゃいけない!!!
どうして俺ばっかりが!!!俺ばっかりが!!!!
悔しさと怒りで握りしめた拳から血が溢れる。
もう嫌だ、逃げれるなら逃げてしまいたい。
(死にたくない)
俺の家族だって、きっと今の俺の気持ちを許してくれるはずだ。
(死にたくない)
怖い、痛い、苦しい、辛い、切ない、ひもじい、会いたい、許して.........。
(死ねない理由が残ってる)
許して.......。
その意識が暗闇に包まれていく。
許してくれ、テルテル。
..........................................................................。
フラッシュバックした。 楽しかった思い出が。
一度切り捨てておいて、みっともねぇな.....。
「...........................最後になんかあるなら、聞いたげる」
【2】のメイドがこっちにリボルバーの銃口を向ける。
(この世界が嫌いだ。 勝手に召喚しておいて、挙句に俺に、俺だけに苦難を強いる.............嫌いだ、嫌いに決まってる、好きになれるわけが無い......)
「...........................何も無いなんて.....潔だけはいい」
メイドがトドメを刺す前に、言うだけ言わせてやるって顔でこっちを見てた気がした。
それでもまだ俺にはこのクソみたいな現実から逃げれない理由がある。
まだやるべきことをやっていない。
「少しは報いろ世界ッッ!! 俺はまだ諦めねぇェェェッッ!!!!」
天井を見上げ、夜空は叫ぶ。
血を流し過ぎてハイになっていたような気がする。
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*天賦進化条件成立*
達成:世界を肯定・否定するほどの想いを世界へ証明すること
天賦 【アビリティースティール】 のレベルを一段階上昇させます。
※ Lv1⇒Lv2 ※ (最大3レベル)
*恩恵* スキルの保有上限数上昇 ※ 4⇒6 ※
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................は?
目の前に突然出てきた、自分にしか見えないプレートの表示に驚く。
天賦の.....進化?
そういうものがあったと、疾風から聞いてはいたけど.......。
初期値は0....だよな? 始めはスキル2つしか入手できなかったし。
それが4になってレベル1
次は6........最後は3レべで8枠って事か?
「しょっぱい恩恵だな........」
今、この状況を覆せる無敵の力とか......そりゃそんなご都合起きる訳ねぇわ。
知ってたけど使えねぇ天賦だな。 .......何が恩恵だよ、貧乏くじの間違いだろ。
「......................恩恵? ま、そろそろ.........おわり、さっさと死んで」
メイドがモーニングスターを振り回して加速を付けている。
「あぁ、時間をくれてありがとう。 おかげで目が覚めた」
神は平然とシカトした。 神頼みはやっぱクソだな。
諦めたら絶対死ぬけど、諦めなきゃワンチャン生き残れるあるかも知れない。
そうだ俺は、何処までも生き汚く!!
痛みに気合で耐えながら夜空は立ち上がる。 息を大きく吸い、そして吐いて痛みを本気で誤魔化し続ける。 背中から流れる嫌な汗も、今は考えないようにした。
「死ぬ気が失せた! 張り倒してやるよッ!!」
「..........震えてる。 もう.......限界なの.........分かる.....」
再びモーニングスターが飛んでくる。 夜空はソレを痛む足腰で、本当にギリギリで地面を転がりながら回避する。 メイドは人の心がまるでないのか、淡々と作業のようにモーニングスターを引いては飛ばし、引いては飛ばしを繰り返し。 夜空と一定の距離を保ちながら攻撃を続行する。
「クソっ、血も涙もねぇ......うわっ、危ねぇ!!!」
夜空は必死に遮蔽物を駆使しながら、ジグザクに.....たまにストレートに......不規則に避けながら廊下を頑張って走る。
「...................あなた......ごきぶり」
「ふざけんなお前ッ!!」
言い合ってても勝てない、何か策を.....。
廊下の先......中央には大きな一本の柱。 石造りの極太の柱はそんじょそこらの重火器でも破壊できない程の耐久力がありそうだった。
.......あれだ、あれに絡ませることが出来たなら。
「うわああああああああっ!!! もう投げないでくれええええええっ!!」
夜空はマヌケっぽく声を出しながら、さも何も考えてないように逃げ続ける。
「........射程圏内。 .........これで、おわり」
演技に騙されたメイドが何も考えずモーニングスターを投擲する。 柱の右側を通り過ぎ、モーニングスターが自分を追ってきていることを横目で確認したら......。
すかさず柱の左側に向かって高速Uターン!!!
広い廊下でこんな動きをすれば、繋がっている鎖で薙ぎ払われて終わりだが、ここにはデカい柱がある。 モーニングスターによる広範囲の薙ぎ払いは出来ない。
夜空の思い込み通り、モーニングスターがぶっとい柱に良い感じに絡まり使い物にならなくなってしまった。 戦闘経験豊富ではない【2】のメイドは一瞬困惑するが......。
「.................甘い」
直ぐにホルスターに手を伸ばす。
「遅ぇよ!!!」
夜空はメイドがリボルバーを取り出す前に『進化型、ハイパーウェーブ』を使用した反発高速移動法で何度も.....それはもう何度も使用して一瞬の間にメイドの直ぐそばまで詰め寄った。
「!!!!」
「くたばれクソ女ッ!!!!」
夜空の渾身の一撃が顔面に入り、手で掴みかけていたリボルバーを落とした。 すぐさま夜空はそのリボルバーを拾い上げ、銃のハンマーを持ち上げて発射できる状態を作って構える。
「これで俺の勝ちだ」
「.................................っっ」
メイドも銃口を突きつけられては何も出来ないのか、動きが固まった。 夜空は様々な場所から血を流しているが、それでもその目は確実にメイドを睨みつけていた。
例え殺されようとも、お前は道連れにするからな。
そんな気概を感じるほどに。
「...............................私の負け。 降参」
「随分素直に引き下がるんだな」
「................死ぬまで頑張っても................使い捨てられるだけ」
コイツ、自分の立場を主観的によく理解してる。 ここまでの話を聞くに、デザイア家のオレアとかいう貴族は平民の命をなんとも思ってねぇゴミ野郎だ。 このメイド部隊の連中が貴族か平民かどっちかまでは分からないが、たとえ貴族だったとしても没落あるいは平民に近い身分のはずだ。
死ぬぐらいなら逃げるって事か。
「リボルバーは貰って行くからな」
「.........裏切った以上、すぐに国を出るから........わたし.......ウーヌスほど単純ないし」
.............こういうヤツが一番敵に回すと面倒なんだよな。
夜空はため息をつくと、銃口を向けるのを止めた。 その行動にメイドが若干驚いた表情を見せる、信じてもらえると思ってなかった的な。
「.................念の為に殺さないの?」
「誰が好き好んで殺人なんかするかよ、お前だって同じだろ」
「...................変な人」
メイドは立ち上がると、その場からスタタと駆けてどっかに行ってしまった。 夜空に疑われないようにするためか、屋敷のドアから出るまで『隠密』やそれに関連するスキルは使っていないように感じた。 ドアを出る直前『......見逃してくれてありがと......あの猫の子......4階にいるよ』と小さく呟いていた気がした。
(奇襲のリスクが無いとは言わないけど...........)
じゃあ殺せるかって聞かれた時に、やっぱり俺は躊躇うだろう。
ごめん長。 やっぱり俺は臆病だよ、でも.......慣れたくない、殺人をいつもの手段にはしたくないんだ。 まだ俺には顔向けしなきゃいけない奴らが多いから。
今にして思えば、最初に『ごめん』って言ってたの本心だったのかもな。
「痛ぇ.....回復しよ」
夜空はそう言って、銃をリボルバーに取り換えながら回復作業を始めたのだった。
==☆次回予告☆==
209.1話の閲覧お疲れさまでした。
更新がだいぶ開いてしまいました、すいません。 パソコンすら開く時間が無いなんて....辛ぇ、辛ぇよぉ.....。 なんて嘆いてても仕方ないので、たまにはこんな時もあるよな精神で乗り越えていきたいと思います。
本編ではようやく4人全てのメイドが現れ、ある程度の決着と相成りました。 しかしまだ肝心のオレアが残っています。 果たして屋敷の上層階で夜空が出す答えとは??
ティピヨン編、まもなくクライマックスです!!
次回、210話......行け少年 歩みを届かせて!
是非次回も閲覧下さい!
ではでは~




