【とある歴史書】前書き
アルスをアッセンの奇跡と合わせて紹介している書物が多いが、私はこれに異を唱えたい。
確かにアルスはアッセンの奇跡を現すことで華々しくキルグフィッツ中に名を轟かせた。
記録によれば合計で1000人ものオーグラド軍を瞬く間に皆殺しにしたのだという。(一説では2000人とも)
当時の人々は負けが続く戦争の中、唯一の圧倒的な勝利に酔ったのだ。
その圧倒的な力は確かにアルスの一面であるが、それだけがアルスの本質であると断ずるのは早計だ。
魔犬、黒狗、守護獣、聖獣、精霊の化身……この様々な呼び名が彼の多面性を示している。
例えばこんな話がある。
アルスはココ村に生まれ、穏やかに暮らしていた。
ココ村ではなんとネズミ捕りを日課にしており、それはそれは村人に有難がられていた。
そんな平和な暮らしの中、飼い主の少女と薪拾いをしている時、当時堕ちた獣と呼ばれていた存在と出会う。
そしてアルスはこれを倒した。
読者の皆さんは何の不思議も無いとお思いかもしれない。1000人の兵士を倒すアルスが獣1匹倒せて当然だと。
だが、私の入手した資料によると、アルスはここで瀕死の重傷を負っている。
アルスは最初から強かった訳ではなく、少女を守るために力を振り絞って戦ったのだ。
アルスの初陣は守るためのものであった。
実はアルスが人を助けたという逸話はいくつも残っている。
森の中で野犬に襲われていた子供を助けた。道に迷って行き倒れていたところを治癒し、導いた、などだ。
これらの逸話はアッセンを中心にケッセルフ地方の各地に伝えられている。
華々しい活躍に隠れがちだが、アルスの優しい一面は確かに存在するのだ。
ここまでで本書をアルスの爽快な活躍や武勇を求めて手に取った方には些か退屈な内容であったかもしれない。
だが、安心して欲しい。私はかつて無いほど大量のアルスの記録を発見した。伝えられていない武勲を明らかにし、派手な戦果はより詳細に、お伝えすることができるだろう。
なので是非とも本書をご購入頂きたい。




